HOME > レビュー > 技適も通過、いよいよ国内販売開始した最新ラズパイ「3 Model B+」がいろんな意味で熱い!

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(47)

技適も通過、いよいよ国内販売開始した最新ラズパイ「3 Model B+」がいろんな意味で熱い!

公開日 2018/07/04 10:25 海上 忍
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

「3 Model B+」で音は変わる

ラズパイ3B+の音質評価は、BurrBrown PCM5122を搭載したGPIO/I2S接続のDACボード「AVIOT DAC 01」、VERITA AK4497搭載のデュアルモノラル構成USB DAC「TEAC NT-505」の2種類で行った。どちらの場合もラズパイ3B+をアルミ削り出しケース「AVIOT CASE 01」に格納し、特長である銅プレートを装着している。

TEAC NT-505

AVIOT CASE 01

今回の試聴では新USB/Ethernetチップ「LAN7515」の素性を確認したいこともあり、ノイズ源になるオンボードのWi-Fi/Bluetoothは無効化したうえで、Ethernetポートを利用してOpenHomeによるネットワーク再生を実施した。なお、AVIOT DAC 01がヘッドホンリスニング主体の製品ということもあり、NT-505共々ヘッドホン(SHURE SRH1840)で試聴している。

電源には、ラズパイ側面のMicro-B端子を利用した。「AVIOT DAC 01」には自前の電源入力端子があり、GPIO経由でラズパイに5V電源を供給できるのだが(ラズパイ3Bのスイッチングレギュレータが発するノイズを避けることが狙い)、ラズパイ3B+で導入された電源管理IC「MxL7704」の素性を確かめるためにはこれを使うわけにはいかない。

システムには、ワンボードオーディオコンソーシアムで開発中のオーディオ専用Linuxディストリビューション「1bc」を利用した。完全に同一のソフトウェアで聴き比べることにより、ハードの違いによる差を浮かび上がらせようという寸法だ。なお、1bcにはMPDやUpmpdcliの最新版を導入し、独自の機構(USBメモリを挿すとその内容を再生する「Music Plug & Play」など)も追加しているが、基礎部分はVolumioやMoode Audioと同じ最新版Raspbian Stretch LITEであり、1bcと同様の音質傾向を示すと考えられる。

まずはI2S接続の「DAC 01」、Earth, Wind & Fireの「I am」(FLAC 96kHz/24bit)で試聴を開始。ラズパイ3B+以外は使い慣れた構成であるにもかかわらず、出てくる音のキャラクターはかなり違う。一聴してクリアで音場が広く、左右のセパレーションがよくボーカルの定位が明瞭。パーカッションの立ち上がり/立ち下りは鋭く、ホーンセクションの光沢感もより艶やかに描き出される。

あくまで聴感上の印象だが、S/Nも改善されているようだ。DACおよびヘッドホンアンプ部はまったく同一なのだから、音質の変化はラズパイ3B+側にあることは確かだろう。そこからさらに因数分解することは難しいが、電源管理IC「MxL7704」と新USB/Ethernetチップ「LAN7515」が一役かっている可能性は高い。

PCからSSHでリモートログインしてtopコマンドを実行したところ、4コアのうち1基が3〜8%程度、他の3基がほぼゼロの負荷でゆるゆると稼働している状況。DAC 01ではPCM変換を行うため、DSD 5.6MHz再生時は40〜50%程度に上昇したが、FLAC/ALACやWAVであれば負荷といえないレベルの負荷だ。このような低負荷運用も、S/N向上と無関係ではないだろう。

FLAC 96kHz/24bitを再生中にtopコマンドを実行したところ。もっとも負荷が高いコアでも3%程度という余裕ぶりだ

MPDの出力先をUSBに切り替えてTEAC NT-505を接続、同じ「I am」を試聴したが、こちらもラズパイ3Bと比較すると音のキャラクターの変化を実感した。ボーカルの定位が明瞭なこと、立ち上がり/立ち下りの速さに改善が見られるなど傾向は似ているが、DAC 01のときに比べNT-505のほうが低域のスピード感向上をはっきり認識できる。

同じシステム構成をTEAC NT-505にUSB接続して試聴したが、音質の改善傾向はDAC 01と似ていた(DSD 11.2MHzをDoPではないネイティブ再生していることにも注目)

ただし、いいこと尽くしではない。ラズパイ3B+は「熱い」のだ。たとえゆるゆるとFLACやWAVを再生していても、システム起動から30分も過ぎればSoCの温度は60度を超える(ラズパイ3Bはそこから7、8度低い)。自宅据え置き派はまだしも、ポータブル派は熱対策が必須だ。これまでは特に熱対策がないまま運用するユーザーも少なくなかったが、ラズパイ3B+ではヒートシンクや金属ケースによる放熱は必須と言っていいだろう。

システム起動後30分もするとSoCの温度は60度を超えてくるため、熱対策は必須だ

ラズパイ3B+にすべきかどうかだが、音質という観点では選ばない理由はないだろう。SoCの性能向上はともかく、新USB/Ethernetチップ「LAN7515」による有線LANのスループット改善は疑う余地がなく、それがネットワーク再生の安定に貢献することは確かだ。とはいえ、その熱さは無視できないレベルで、ポータブル用途であればラズパイ3Bのほうが扱いやすい。用途を熟慮したうえで導入することをお勧めしたい。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE