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【特別企画】高級帯でも変わらぬコンセプト

“真っ当な音づくり” を極めたら、凄いイヤホンができた。final「E5000/E4000」レビュー

公開日 2018/07/03 07:50 高橋敦
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エレクトリックサウンドのロバート・グラスパー・エクスペリメント『Human』でもE5000の表現は秀逸だ。ディープなベースサウンドは、E3000から受け継ぐしなやかな感触はそのままに、ぐっとした抑えも少し効かせる。そのベースに限らず音像は全体に少しコンパクトにまとめる印象。E3000より一歩下がった位置から俯瞰的な全体像を見渡せる印象だ。

するとその後方でストリングスやリバーブ成分を主体としたピアノが溶け合って曲の背景を描き出している様子の美しさも、改めて伝わってくる。もちろんそういった、音が滑らかに溶け合う表現は、このイヤホンが特に得意とするところ。

対してよりフラットにまとめられているのがE4000。早見沙織さん『琥珀糖』の息遣いは、柔らかな感触よりもすっとしたスピード感の方が際立つ。とはいえ歌い方の柔らかさの再現性を確保した上でのことであり、いたずらに鋭さを強調するものではない。声や全体の明るさもあって、すっきりとした空間表現も印象的だ。

E4000はよりフラットでシャープさが際立つチューニング。しかし柔らかさが失われた訳ではない

ロバート・グラスパー・エクスペリメントの曲では、音像も背景もよりくっきりさせてくれることからか、ベースのディープな沈み込みを明瞭に感じられる。この曲のサウンドはR&Bやソウルに由来するクラシカルな要素とエレクトロやヒップホップに由来するコンテンポラリーな要素が融合したもの。そのクラシックな成分をより深く感じさせてくれるのはE5000、コンテンポラリーな成分をより際立たせてくれるのはE4000といった印象だ。



正直なところ実際に聴いてみるまでは、「E3000/E2000の魅力のひとつである圧倒的なコストパフォーマンスを捨ててまで、『音は良くて当然』なハイエンドの土俵にまで上がる必要あるの?」という疑念もあった。

しかし実際に聴いてその疑念は吹っ飛んだ。ハイエンドクラスのクオリティに引き上げられたことによってシリーズのコンセプトに内包されていた可能性が完全に発揮され、さらなる輝きが生まれていたのだ。

finalのコンセプトが、ハイエンドだからこそ実現できる作り込みによってさらに魅力的になった

大ヒットシリーズのハイエンド版。期待を膨らませていた方も多いことだろう。このモデルたちはその期待にしっかりと応えてくれるはずだ。

(特別企画 協力:S'NEXT株式会社)

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