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海上忍のラズパイ・オーディオ通信(45)

I2Sスレーブに対応、ASUSの最新シングルボードコンピュータ「TinkerBoard S」を試す

2018/05/30 海上 忍
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肝心の音は、使いやすさで定評あるVolumio 2を利用しただけあって呆気ないほど簡単に、しかも予想を上回るクオリティで鳴り始めた。第38回でTinkerBoardとDAC 01の組み合わせを試した時には、絶え間なくクリックノイズが聞こえる中で44.1kHz/16bit FLACを辛うじて再生できる程度だったが、今回はまったく違う。

Volumio 2をeMMCにインストールしたTinkerBoard Sを起動すると、セットアップウィザードが開始される

宇多田ヒカル「ファントム」など96kHz/24bit FLACを中心に試聴したが、Raspberry Piと比べても遜色ないほどの瞬発力とエナジー感がある。やや雑味はあるが、素性のいい音だ。

CDからリッピングした44.1kHz/16bit WAVを再生してみると、今度はガッカリ。第38回の時ほどではないにせよ、結構な頻度でクリックノイズが発生し、音楽に集中できない。88.2kHz/24bit FLACも同様の傾向だ。しかし、48kHz/24bit FLACでは特にノイズを感じない。これはもしや……

予感は的中、Linuxカーネルのログをチェックしてみると、曲の再生開始直後に「pcm512x 1-004d: No SCLK, using BCLK: -2」と出力されていた。このメッセージは、DACのPCM5122が外部クロックを利用できていない状態、つまりDAC 01上に搭載されている2系統のオシレーターが使われていないことを意味している。

SSHでリモートログインしてオーディオデバイスを確認したところ。「DAC 01」はHiFiBerry DAC+互換カードとして認識されている

カーネルのログを調べたところ、PCM5122が外部クロックを利用できていないことが判明した

PCM5122に内蔵されたPLLも高性能なため、48kHz系音源はそれなりに再生できてしまったが、DAC 01本来の音ではない。クリックノイズの原因は不明だが、クロックと無関係ではなさそうだ。

というわけで、当面の課題として外部クロックを利用できない問題(PCM5122/HiFiBerry DAC+ PROドライバの不具合?)、言い換えればTinkerBoard Sの売りであるI2Sスレーブ接続を生かせない問題が浮上した。96kHz/24bit音源を聴いた印象で判断する限り、この問題を解決すれば、Raspberry Piを脅かすレベルの音が手に入りそうなのだが……続報をお待ちいただきたい。

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