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筐体デザイン、ユニットまで新技術を多数投入

FOCAL「KANTA N゜2」レビュー。音楽のダイナミクスにエレガンスが同居する最新スピーカー

公開日 2018/03/30 08:00 生形三郎
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エレクトリックベースの再現は充実感に満ち溢れ、逞しい腕力による力強い筆致で、音楽のグルーヴをパワフルかつ重厚に牽引する。しかしながら、茫洋としたレスポンスにはならずに、ドラムスとベースそれぞれの音像が立体性に富んだフォルムで再現されるのはさすがである。振動板に同じフラックス素材を用いる「ARIA」シリーズで感じられた爽快なレスポンスを持ちつつも、そこにさらなる重厚さと歪みを抑えたスムーズネスを感じさせる低域再現なのだ。

音元出版にて試聴した

ボーカルは、丹念かつ密度の高い表現を聴かせる。なおかつ、驚くほどにシャープで明晰な反応も堪能できる。シェイプされる声に無駄な造作が無い。タイトでキメ細やかな表現を聴かせる、冴え渡った描写だ。この辺りに「IAL3」トゥイーターの真髄が現れているのだろう。同時に、安定感溢れるボトムの厚さを備えながらも、必要以上にフォルムが肥大化することは決してなく、リアルな声の太さが貫かれる。

続いて、バロックオーケストラとコーラスによる「Bach Collegium Japan / J.S. BACH : h-Moll Messe」を聴いてみる。広大なステージの描写が印象的だ。音の収束が速やかで、耳を凝らさずともオーケストラに散りばめられた各楽器の余韻表現が自然と耳に届いてくる。楽器の重なりや余韻が連なり合う様が清澄に描写され、弦楽の弓の運びには、擦弦のスピードやエネルギーの推移がリアルかつ詳細に再現されている。

合唱部分は、パートの人数や位置関係の明解な描き込みが現れるものの、押しつけがましくならない。歌い手一人一人の個性が浮かび上がり、それが一体となったコーラス隊の特徴がよく分かるのだ。演奏者達が生み出す表情や、楽曲が持っている音のカラーが、能弁に表現され聴き手に生き生きと伝わってくる。

鮮やかで爽快な音色と、量感ある低域で重厚な音響表現も実現

低域帯はしっかりとした量感を持ち、演奏のダイナミクスが実に迫力豊かだ。ただ、それが過剰にならないところが実にFOCALらしい。紳士的でエレガンスを忘れないのである。このソースは声のダイナミクスが大きく、スピーカーによっては高域表現に飽和や突出などが生じてしまうことも多い音源だ。しかしながら「KANTA N゜2」では、当然それらに全く動じることなく、堂々たる余裕の対応力を聴かせてくれた。

最後は、ジャズ・ピアノトリオ「Bill Charlap / Notes From New York」を試聴。ウッドベースは低域弦にたっぷりとした厚みがあり、ふくよかなボトムを表現する。グランドピアノの低弦を伴う分厚い和音と同時に鳴らされても、決して飽和せず、音楽のドライブ感やリズムの律動を乱すことがない。音楽演奏の躍動感が高いのだ。

ドラムスのワイヤーブラシによるスティックワークは、生々しいヒット感で描き上げ、スネアドラムのヘッドにワイヤーが擦りつけられる際の粒立ちがリアルだ。しかしながら、ピーキーになりがちなピアノの高域弦やシンバルアタックにも、まったく金属的な質感がないところが白眉である。歪み感がないのだ。



KANTA N゜2では総じて、歪みを抑えた爽快な音色と、ワイドバンドかつ重厚な音響表現が楽しめる。同社渾身の新開発ユニットによる、闊達かつ上質なサウンドを堪能することができるスピーカーだ。イメージ的には、「ARIA」と「SOPRA」の、互いの持ち味がバランス良く融合したスピーカーであると感じた。

鮮度感やレスポンスの良さと、音色の饒舌さや品の良さが巧みに融合している。また同時に有機的かつナチュラルな質感が楽しめる新たなデザインコンセプトにも、とても好感が持てた。今後の「KANTA」ラインナップ展開も非常に楽しみだ。

(生形三郎)

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