70年代に人気を誇ったHPDシリーズが進化して復活
TANNOY「LEGACY」シリーズをレビュー。最新技術により進化して蘇った“銘機”
石原 俊
2018年04月09日
1970年代、TANNOY(タンノイ)が世に送り出したモニタースピーカー「HPDシリーズ」は、多くのファンに愛されるハイファイ・スピーカーの定番機種の一つになった。このHPDシリーズの素性と外観を生かしながら、最新技術で性能向上したドライバーユニットとパーツ類を投入して、最新ソースにも対応できるようレベルアップさせた待望の「LEGACY(レガシー)シリーズ」が誕生した。英国王立デザイナー協会ジャック・ハウによるクラシカルなデザインを忠実に再現したデザインとその高いクオリティが評価され、オーディオ銘機賞2018の「銀賞」を受賞。単なる復刻ではなく、新たな銘機「レガシーシリーズ」3モデルの魅力を徹底的に紹介する。
本機誕生の背景
■レガシーシリーズの原点は、タンノイの危機を救った「HPDシリーズ」
タンノイがレガシーシリーズをリリースした。レガシーシリーズの原点は、1970年代に一世を風靡したHPDシリーズに遡る。HPDは“High Performance Dual”の頭文字をとったもので、タンノイのお家芸である同軸2ウェイ・ドライバーユニットの高性能ぶりをアピールしていたことが窺い知れる。
HPDシリーズは従来のタンノイのスピーカーとは趣を異にしていた。それまでのタンノイのスピーカーは家具調の重厚なスタイルであったのに対して、HPDシリーズには一種の軽快さがある。設計を担当したのはイギリス王立デザイナー協会に所属するジャック・ハウ。彼は自分の才能の全てをこのスピーカーで世に問う、といった内容の発言をしていたように記憶している。
実はこの頃、タンノイ社は危機に瀕していた。工場が焼失したのに加え、社主のガイ・R・ファウンテンが心臓発作に倒れ、ファウンテンの持ち株が売却されるという事態に陥っていたのだ。その危難を救ったのがHPDシリーズの成功だった。1970年代の時流に乗ったライトでキュービックなエクステリアデザインに加えて、精度の高い音質と高度なパワーハンドリング性能を有するHPDシリーズは、録音スタジオやオーディオ愛好家のリスニングルームに好意を持って招き入れられたのだ。タンノイ社は後に売却された株式を買い戻し自主経営権を回復しているが、その背景にはHPDシリーズの成功があったのである。
そんなHPDシリーズをモチーフにしているのが、今回紹介するレガシーシリーズだ。このたび発売されたモデルは3機種で、いずれもHPDシリーズでも使用された名称が与えられている。
3モデルの概要
■外観もモデル名も同じだが、キャビネットも進化を遂げた
「EATON(イートン)」はレガシーシリーズ唯一のブックシェルフ型だ。ブックシェルフとはいってもエンクロージャーの内容積は30Lもあり、なかなかコワモテな面構えをしている。バスレフダクトはドライバーユニットの上部に2基マウントされている。これはクロスオーバーネットワーク回路とロックアップ式の高域レベルコントロールとの場所的な兼ね合いなのだが、1970年代のスタジオモニター機めいた姿がオーナーの自負心をくすぐる。同軸2ウェイ・ドライバーユニットのウーファーの口径は25mm。トゥイーターの口径は33mmで、これはシリーズに共通している。
「CHEVIOT(チェビオット)」はシリーズ中堅のフロア型だが、現代のフロア型としては異例ともいえるほどエンクロージャーの奥行きがなく、リビングルームにも無理なくセッティングできるだろう。バスレフダクトはドライバーユニットの直下に2基マウントされており、ウーファーの口径は300mm。サランネットは二分割方式になっている。これはサランネット全体を外さずに高域レベルコントロールを操作するための配慮で、かつてのHPDシリーズでも採用されていた。
「ARDEN(アーデン)」はシリーズの頂点に君臨するモデルだ。正面から見ると堂々たる体躯なのだが、CHEVIOTと同様に奥行きは少ない。ウーファーの口径は380mm。バスレフダクトはフロントバッフルのボトム側に3基マウントされている。サランネットは三分割方式だ。これまたCHEVIOTと同様、高域レベルコントロールとの兼ね合いなのだが、このサランネットの分割こそが、HPD/レガシーシリーズのエクステリアデザインのアイデンティティであり、奥行きの少なさと相まって1970年代的な雰囲気を醸成していると筆者は解釈している。
本機誕生の背景
■レガシーシリーズの原点は、タンノイの危機を救った「HPDシリーズ」
タンノイがレガシーシリーズをリリースした。レガシーシリーズの原点は、1970年代に一世を風靡したHPDシリーズに遡る。HPDは“High Performance Dual”の頭文字をとったもので、タンノイのお家芸である同軸2ウェイ・ドライバーユニットの高性能ぶりをアピールしていたことが窺い知れる。
HPDシリーズは従来のタンノイのスピーカーとは趣を異にしていた。それまでのタンノイのスピーカーは家具調の重厚なスタイルであったのに対して、HPDシリーズには一種の軽快さがある。設計を担当したのはイギリス王立デザイナー協会に所属するジャック・ハウ。彼は自分の才能の全てをこのスピーカーで世に問う、といった内容の発言をしていたように記憶している。
実はこの頃、タンノイ社は危機に瀕していた。工場が焼失したのに加え、社主のガイ・R・ファウンテンが心臓発作に倒れ、ファウンテンの持ち株が売却されるという事態に陥っていたのだ。その危難を救ったのがHPDシリーズの成功だった。1970年代の時流に乗ったライトでキュービックなエクステリアデザインに加えて、精度の高い音質と高度なパワーハンドリング性能を有するHPDシリーズは、録音スタジオやオーディオ愛好家のリスニングルームに好意を持って招き入れられたのだ。タンノイ社は後に売却された株式を買い戻し自主経営権を回復しているが、その背景にはHPDシリーズの成功があったのである。
そんなHPDシリーズをモチーフにしているのが、今回紹介するレガシーシリーズだ。このたび発売されたモデルは3機種で、いずれもHPDシリーズでも使用された名称が与えられている。
3モデルの概要
■外観もモデル名も同じだが、キャビネットも進化を遂げた
「EATON(イートン)」はレガシーシリーズ唯一のブックシェルフ型だ。ブックシェルフとはいってもエンクロージャーの内容積は30Lもあり、なかなかコワモテな面構えをしている。バスレフダクトはドライバーユニットの上部に2基マウントされている。これはクロスオーバーネットワーク回路とロックアップ式の高域レベルコントロールとの場所的な兼ね合いなのだが、1970年代のスタジオモニター機めいた姿がオーナーの自負心をくすぐる。同軸2ウェイ・ドライバーユニットのウーファーの口径は25mm。トゥイーターの口径は33mmで、これはシリーズに共通している。
「CHEVIOT(チェビオット)」はシリーズ中堅のフロア型だが、現代のフロア型としては異例ともいえるほどエンクロージャーの奥行きがなく、リビングルームにも無理なくセッティングできるだろう。バスレフダクトはドライバーユニットの直下に2基マウントされており、ウーファーの口径は300mm。サランネットは二分割方式になっている。これはサランネット全体を外さずに高域レベルコントロールを操作するための配慮で、かつてのHPDシリーズでも採用されていた。
「ARDEN(アーデン)」はシリーズの頂点に君臨するモデルだ。正面から見ると堂々たる体躯なのだが、CHEVIOTと同様に奥行きは少ない。ウーファーの口径は380mm。バスレフダクトはフロントバッフルのボトム側に3基マウントされている。サランネットは三分割方式だ。これまたCHEVIOTと同様、高域レベルコントロールとの兼ね合いなのだが、このサランネットの分割こそが、HPD/レガシーシリーズのエクステリアデザインのアイデンティティであり、奥行きの少なさと相まって1970年代的な雰囲気を醸成していると筆者は解釈している。
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