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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第204回】話題の新ブランドAr:tio「CU1」レビュー! a.i.m.技術で音の“刺さり”を狙い撃ち

公開日 2018/03/02 10:52 高橋 敦
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設計の狙い通りの透明感やしなやかさ

それではサウンドをチェックしていこう。まず言えるのは“a.i.m技術の狙い通りのサウンド!”ということ。不快な刺さりは全く目立たず、実にしなやかな音調。そして刺さりに邪魔されないおかげなのか、温かみのある透明感や空間性も豊かに感じられる。

バンドサウンドの相対性理論「夏至」では、ウィスパー的な息の成分も多く含むやくしまるえつこさんの声を刺さらせず、それでいてシュッとした抜けは生かし、なおかつ肉声的な厚みもあるという、理想にかなり近い感触にしてくれる。シンバルも同様だし、ギターの艶やかさにも感心させられた。

相対性理論「夏至」

もう一つの感心ポイントはドラムスとベースの弾みの良さ。ダイナミック型ドライバーの配置、シェル内部からノズルにかけての適度な容積のおかげか、その空間で空気が元気に動いてくれているような印象。単に抵抗なくスッと届いてくる音というより、空気のバネ抵抗もうまく利用してタメや勢いを得ているような音、といった感触だ。

小松未可子さん「May be the next waltz」はゆったりとした三拍子のポップス。こちらではしなやかさが特に印象的。ゆったりと揺れるリズムもしなやかだし、ウッドとエレクトリックのベースはもちろん、エレクトリックギターの音色もしなやか。バンドでリズムを合わせるキメの部分も、バシッ!ピタッ!とカッチリさせすぎず、もっとナチュラルというか余裕のあるキメ方に。この曲ではその表現が正解と思える。

他、乃木坂46の齋藤飛鳥さんを迎えたMONDO GROSSO「惑星タントラ」では、ギターの空間エフェクトの広がりと減衰のクリアさが好感触。Robert Glasper Experiment「Human」の相当ディープなベースは、その「相当ディープ」な低域の再現は完璧ではない。しかしそこは完全に再現できるイヤホンの方が少数であるし、縦の沈み込みではなく奥行の厚みはしっかりしているし、繰り返しているように音の弾みは実によいし、トータルでは十分すぎるほど良好な低音再生能力だ。

小松未可子さん「May be the next waltz」



技術的な面白さ、使い勝手、音、どれを取っても独自性があり、その上で実際的にも好印象。強いて言えばその独特の形状から、耳へのフィットは、僕自身は問題なかったが、人によって合う合わないはあるかもと思う。また、角度や深さなど装着のベストポジションを見つけるまでには少し手間取るかもしれないが、良い意味で気になるところばかりなイヤホンだ。発売直後の現在は品薄状態になっているようだが、ぜひ気に留めておいて機会があれば手にとってみてほしい。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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