UHD BDの色再現性が向上

4K REGZAが「Ver 2.0」に? 12月中旬の大規模画質アップデートをUHD BDで先行チェック

大橋伸太郎
2017年12月06日
東芝製テレビ“4K REGZA”は、12月中旬に予定しているアップデートにおいて、「スカパー! ハイブリッド」対応とともに画質も向上する。この画質向上効果を、評論家の大橋伸太郎氏が一足先に体験。地デジでチェックした前回に続き、今回はUHD BDでの視聴結果をレポートする。

55X910

■アップデートで「Ver.2.0と呼んで差し支えないほど画質が進化」

東芝の有機ELテレビ、“レグザ”「55X910」が筆者の視聴室に再びやって来て一ヶ月半が経った。その間、AV REVIEW誌の連載記事「UHD BD QUALITY CHECK」「BD QUALITY CHECK」のリファレンスディスプレイの重責を務め、20タイトルを超える4K UHD BD、2Kブルーレイディスクの全てを本機で視聴した。

X910は12月中旬に、画質アップグレードを含むファームウェアアップデートが予定されている。筆者宅の55X910はその最新ファームウェアが一足先に実装済で、今年春に短期間65X910を借りてリファレンスとして視聴した時と画質の印象が異なる。この一カ月半は驚きと発見の日々だった。地上デジタル放送、BSデジタル放送の画質の変化については既にお知らせしたので、今回は読者にとって目下、最大の関心の的と思われる4K UHD BDの画質について報告しよう。

今春視聴したX910をVer.1.0とすれば、現在筆者視聴室にあるX910はVer.2.0と呼んで差し支えないほど画質進化の跡が見られる。今回のアップグレードのポイントは主に二つ。その第一が、地上デジタル放送、BSデジタル放送の画質について超解像のアルゴリズムを変更しゲインを再設定したことで、これについては前回報告した。第二が、UHD BDの色再現性の向上を目的としたもので、いわば今回のアップグレードの目玉である。

国内各社が有機ELテレビを発売し半年以上が経つが、有機ELテレビの「色」に違和感を覚える、という声をしばしば聞く。そうした方々からは、コントラストと黒表現で液晶に圧倒的に勝っていることは一目瞭然だが、発色が鋭く生々しく、あざとい印象があって馴染めないという感想が異口同音に返ってくる。前年に某社が導入したモデルでの、これでもかと赤系を強調したデモ映像がトラウマになっているのかもしれない。

現在の大画面有機ELテレビは白色ダイオードにカラーフィルターを組み合わせて描画するので、その点は液晶方式と変わりはなく、有機EL固有の発色の癖があるわけではない。プラズマ方式と液晶方式のあいだのような差異は存在しない。有機ELの色表現を独特と感知するのは、UHD BDのBT.2020の広色域と色純度を最大限アピールせんとした、有機ELテレビ共通の色彩設定、いわば演出が原因なのだ。

取材時の様子

それでは、筆者が55X910“Ver 2.0”をUHD BD視聴のリファレンスにこの一カ月半使い続けて得た印象を一言で表現してみよう。

それは初期の有機ELテレビに感じられた人工臭が消えたということだ。色彩バランスの均整が取れていて、中間色が原色の存在感の影に隠れることがない。結果、画面に映し出される色数が増えた。具体的にUHD BDの有名人気作を例に挙げ、X910の変貌をみていくことにしよう。

まず量販店店頭でエンドレス再生され、色彩の華麗さで本年最右翼のお馴染「ラ・ラ・ランド」。映像モードはシネマプロで視聴した。

映画の終盤、チャプター15、1:45:00〜、ミアと夫がセブのジャズクラブの階段を降りて店内に足を踏み入れるシーンの、ブルーからマゼンタにかけて推移する色彩がVer.2.0ではブルー寄りに修正され、深く沈潜していく青が支配的に変わった。

映画はここから映画という芸術ジャンルの特性を活かした“IF〜もしも”の世界へ入って行くわけだが、ファンタジーの世界へ、その下地が整ったわけだ。豪華なスタジオセットを活かした巴里のシーンで逆に華やかな赤系へと主調色が変わるが、X910“Ver 2.0”では対比が鮮やかで、ディレクターズインテンションが浮かび上がる。デイミアン・チャゼル監督が見たらさぞかし我が意を得たり、だろう。

次に「4K 夜景」を映像モード「標準」で視聴。黄昏の空の赤味を抑えて日の名残を感じさせる黄金色へ修正された印象だ。一方、夜間撮影の画面の主調色は当然藍色だが、その中に埋没気味だった明るく彩度の高いブルー、シアン系の被写体が本来の存在感を取り戻し、実景感覚に大きく近づいた。特定の色の突出を抑え中間色が増えたことが解像感にも影響し、映像のディテールが豊富になり、映像の奥行きも増した。

最後に、これはX910登場時からある機能だが、映像調整→コントラスト感調整と入っていくと、HDRコンテンツ入力時にのみ有効化する「HDR明部調整」という項目がある。デフォルトはオートだが、手動に切り替えると一瞬画面が明るくなり、0→10へ設定数値を上げて行くと映像のピークが抑えられ、落ち着いたバランス重視の映像に変わる。

最近のUHD BDには、HDRのピークを過度に強調したグレーディングがしばしば見受けられる。「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」「LOGAN/ローガン」(ノワール)等々だ。暗室視聴でピークが眩しく感じる場合、このHDR明部補正でギラつきが抑えられ非常に有効だった。色彩に限らず、何事もバランスが肝心だ。

型番こそ同じX910だが、春の時点に比べ直近のアップグレードによって映像は大きく進化した。この一年間に東芝技術陣が蓄積したデータと経験の厚みがうかがわれる。もはや「有機EL第二世代」といって過言でない。これからも発見の毎日は続く。