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【特別企画】リスニング用途での実力を検証

オーディオテクニカ「ATH-M50x」を聴く ー 製作者が音楽に込めた意図を体感できるモニターヘッドホン

公開日 2017/10/23 11:02 岩井 喬
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モニタリング作業ではかなりの大音量で聴くことも多いが、リスニングという観点から行くと音量をある程度絞って聴いた場合にどんな印象であるのかも重要だ。ここがモニター由来のモデルのメリットでもあるが、音量を絞ってもきちんと音像の輪郭を際立たせ、メリハリを持たせて抜けよく表現する力を持っているため、逆に音量を上げなくても細部まで見通しの良いサウンドを楽しむことができる。

ATH-M50xを装着した岩井喬氏

しかも本来の用途であるモニタリングの性能を追求し、密閉型モデルとして高い遮音性も備えている。屋外の使用でも雑踏の騒音をある程度抑えられ、S/Nの良い音場を確認することができるだろう。

本機は1つ1つの音と音の距離、音像との間にある空間性を誇張なく引き出してくれるため、個々のパートが自然に浮き上がり、ほぐれの良いサウンドとしてくれる。音像の重心もしっかり落ちており、バランスの取れたニュートラル基調の音質だ。また音像の分離の良さはもちろん、各音の落ち着きもあるのでS/Nの良い音場形成に繋がっている。

まずはソニー「NW-WM1Z」を使い音質をチェックした

ボーカルは密度が高くて肉付きがリアルで、定位もシャープに決まる。透明感が高く、適度な倍音の艶を持たせてキリッとした輪郭を描く。低域は解像度が高く、彫りの深いアタック感と緻密な余韻のグラデーションを両立させている。

オーケストラの響きも緻密で、その余韻は非常に爽やか。低域の音伸びは弾力を伴い、旋律のしなやかな張り感を含めクールな艶を感じさせてくれる。ピアノやギターのエッジは輝くような鮮やかさがあり、アタックは多少硬質となるものの、アタックとリリースの描きわけが明快。残響がどの程度あるのか、細かく聴き込むこともたやすい。リアリティの高い空間再現力を持っている。

DSD音源も確認してみたが、音場の空気感、余韻の豊潤さが増してより音離れの良い立体的なサウンドとなる。音像の厚みもナチュラルであり、ほのかに漂う潤い感も嫌味がない。付帯感のないクリアで見通し良いサウンドである。

据え置き環境でその能力を引き出してみた

一方、据え置き環境(ラックスマン「DA-06」+「P-700u」)でのサウンドも補足的に確認してみたが、非常にタイトでモニターヘッドホンらしい生真面目さ、切れ味の良い高鮮度でシャープなサウンドをいっそう引き出すことができた。一方で、再生環境の持つピュアオーディオ機ならではのウェットな艶感をストレートに引き出してくれるため、自然と音楽の世界観へ没入させてくれる。

ラックスマンのD/Aコンバーター「DA-06」とヘッドホンアンプ「P-700u」と組み合わせ、据え置き環境でも音質を確認したソニー「NW-WM1Z」

低域はアタック重視の傾向だが、密度が高く弾力を備えたタッチであり、硬さのない絶妙なバランスだ。音場感はリスニング向けのヘッドホンと比べるとやや平面的となるが、澄み渡るリヴァーブの清々しさ、楽曲の楽器構成や、音量バランス、音像の前後感はより鮮明につかみ取ることができた。

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