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【レビュー】ラックスマンの新・最上位ヘッドホンアンプ「P-750u」。さらに進化した“王道サウンド”

公開日 2017/08/01 11:06 岩井 喬
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S/Nや解像感で従来モデルを数段上回る。分離感や密度も申し分ない

P-700uでも十分なクオリティと感じていた。改めてP-700uを、最新のP-750uと比較しながら聴いてみると、こちらはいくぶん音像が厚く、中低域の密度が濃くまとまってぎゅっと凝縮した力強いタッチの描写であることが確認できる。ただし、リリースのふくよかさを感じる一方で、P-750uと比べると余韻の階調性が甘く、若干滲みを感じてしまう。

ゼンハイザー「HD800」を用いて試聴

P-750uは、S/Nや解像感もP-700uを数段上回る彫りの深いサウンドであり、中低域の密度感と分離の良さ、そして微細なニュアンス感も申し分ない。わずかな楽器のタッチノイズさえリアルに捉え、重心も低く、ベースの芯の厚みや制動感も十分に再現してくれる。オーケストラの旋律もキレ良く締まり、ハーモニーもほぐれ良く余韻を爽やかに描写。ボーカルもハリ良くシャープに中央へ定位するが、ボディ感も自然で口元は潤い良くしなやかだ。高密度でドライブ力も高いが制動性も十分であり、音像は太くたくましく、余裕のある音色が特長だ。

USB-DACにはラックスマンの「DA-06」を合わせて使用

バランス駆動は一際しなやかで、極めてナチュラルな描写を楽しめる

そしてバランス駆動は一際しなやかで音離れ良く、朗らかで数段落ち着きが増す。ボーカルの肉付きもナチュラルで、瑞々しい口元の動きをリアルにトレースする。オーケストラの旋律も雄大かつ緻密で抑揚豊かだ。S/Nも良く余韻のほぐれも見事で、立ち上がり、立下りの再現性もスピーディーかつダイナミックに表現してくれる。

P-700uでも丁寧で情報量の多いサウンドを楽しめるが、やや硬さがあり全体的に軽いタッチでまとめられているように感じられた。P-750uの方は重心が落ち、落ち着き良く滑らかで、より自然でほぐれ良い描写性を持つようだ。ピアノの響きもしっとりとまとめ、艶やかさも付帯感なく感じられる。ホーンセクションやシンバルの響きも余韻を丁寧にトレースし、グラデーションも極めて細やかである。

オーケストラのハーモニーも伸び良く引き締め、爽やかな響きをリアルに描き出してくれる。音場の澄んだ奥行き感は静寂性が高く、非常に有機的で生き生きとしたタッチで表現。硬さのない極めてナチュラルな描写を楽しむことができた。

ベイヤー「T1 2nd」を4pinXLR端子で駆動。抑揚豊かで彫りの深い再現に

続いてもう一つ、P-750uで新たに採用された4ピンXLRのバランス駆動出力を試してみるため、ベイヤーダイナミック「T1 2nd Generation」と純正オプションのバランス駆動用4ピンXLRリケーブル「B CABLE T1 2G」でも試聴を実施した。

まずアンバランス駆動において、P-700uでは太くどっしりとした低域のリッチさと滑らかで潤い良い艶やかな高域のハリを主体とした音色でまとめていたが、P-750uでは全体的にクリアかつ丁寧なタッチで描かれ、密度良く爽やかで粒立ち細かく落ち着いた傾向になる。ボーカルも抜け良く丁寧で潤いに満ちた描写で、オーケストラの旋律やジャズのホーンセクションをキレ良くクリアに表現。低域の響きもダンピング良く描き、音場の透明感をより際立たせているようだ。

ベイヤーダイナミック「T1 2nd Generation」を用いてバランス駆動を試す

最後に4ピンXLR端子を使ったバランス駆動のサウンドであるが、HD800の時と同じように重心が落ちて抑揚豊かで落ち着き良く。そして彫りの深い描写性を実感した。ボーカルの口元のニュアンスもより細やかに描き出し、密度良く流麗なタッチで描き出す。

アタックやリリースの切れ味が増したオーケストラのハーモニーは豊潤な響きを自然にまとめあげ、解像度の高さとボディの厚みをバランス良く融合した、制動性の高い澄んだ余韻を堪能できる。非常に丹念で艶やかな響きを大事にした穏やかなサウンド性であり、バランス駆動らしい音離れの良さとほのかに華やいだ余韻を味わえる有機的な描写性を楽しめた。



P-750uは、P-700u以上にニュートラルかつ透明度の高いサウンドが特長であり、シングルエンド、バランス駆動ともにさらに足を踏み込んだ、緻密でダイナミックな表現性が最大の魅力となっている。P-700uとの音質差は小さくなく、これまでのラックスマン・ヘッドホンアンプを愛用してきたリスナーであれば、そのサウンド進化に納得できるであろう。

かくいうP-700u愛用者である筆者も、P-750uのリファインされたサウンドが気になるようになってしまった。P-750uは次世代の新たな評価軸たるリファレンスアンプとして、絶対的な王道を今後も歩み続けていってくれることだろう。

(岩井 喬)

■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(5.6MHzに変換)

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