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「ハイレゾ時代のHDCD」

CDでハイレゾ「MQA-CD」徹底解析! MQAエンコードあり/なし音質比較からリッピング方法まで

2017/04/17 佐々木喜洋
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先日発表された「MQA-CD」(関連ニュース)は、音楽CDにMQA音源を収録、CDプレーヤーではCDとして再生ができ、MQA対応DACと組み合わせた場合はMQAとしてハイレゾ相当の音質で再生できるというもの。こうやって説明するとなかなかわかりにくいMQA-CDの仕様を整理しつつ、様々なケースで再生しながら仕組みについて分析を試みた。


1、MQA-CDとは何か
「使い勝手」と「音質」を両立させたMQA

MQAは最近オーディオ業界で話題の技術だ。このMQAをCD再生に応用したものが、「MQA-CD」である。本稿ではMQA-CDをさまざまな角度から検証しながら、MQAの可能性についても探ってゆくが、まずその前にMQAの基本的な解説をすることにしよう。

MQA(Master Quality Authenticated)とは、英Meridian(メリディアン)が提唱した音楽データの形式である。今ではMeridianとは独立した組織がライセンスを管理しているため、MQA Ltd.という組織自体の名称でもある。2014年の暮れに発表され、昨年度はメジャーレーベルとの提携が話題となり、今年になってからもTIDALでの採用が話題を呼んだ(関連ニュース)。

MQAが目指すのは、いままでのオーディオでは相反していた「使い勝手」と「音質」を両立させることだ。つまりハイレゾ音源は音質は良くてもデータ量が多くなってしまうが、MQAならばコンパクトでかつ高音質が達成できるというわけだ。

MQAのボブ・スチュアート氏

その目標を達成するためにMQAに導入されたキー技術は大きく2つある。ひとつは時間的なボケ・ぶれを減らして知覚的に高音質化するという点。もうひとつは、“オーディオ折り紙”と呼ばれる独自の圧縮技術によって、ロスレス相当の高品質を保ったまま大幅にデータ量を軽量化しているという点だ。

MQAのさらなる特徴は、従来機器との高い互換性だ。本来MQAは独自形式であり、その力をフル活用するためにはMQA対応のDACが必要だ。しかし内部的には通常のPCMであり、MQAの非対応機器で再生する場合でも、ハイレゾの拡張部分は使えないがCD品質相当の再生ができる。

そしてMQAに注目すべきもうひとつの理由は、その応用範囲の広さだ。現在のデジタルの主要オーディオソースはCD音源、ダウンロード音源、ストリーミング音源の3種類だが、MQAはこのすべてについての応用が可能である。

MQAは当初、2Lレーベルなどをはじめとしたダウンロード音源として知られるようになったが、最近ではTIDALにおけるハイレゾ・ストリーミング(TIDAL MASTERS)を実現する手段としてMQAが採用されたため、ストリーミング音源にも応用されるようになってきている。

MQAの必要データ量が約1.1Mbpsというのは、ロスレスストリーミングの必要データ量である1.4Mbpsを少し下回る程度である。要は既存のインフラを変えずにハイレゾ・ストリーミングができるということで、MQA技術が当初からストリーミングをターゲットとしていたことを示しているとも言えるだろう。

MQA音源を音楽CDに収録した「MQA-CD」

そしてCD音源への応用が、本稿で取り上げるMQA-CDである。特に日本ではまだまだCDがオーディオの主流音源であり、CDでハイレゾ相当のMQA音源が扱えるのならば画期的なことだ。

MQA-CD『A.Piazzolla by Strings and Oboe』

具体的に言えば、MQA-CDは普通の音楽CD(CD-DA形式)に音楽データとしてMQAエンコードされた音楽データが格納されたものだ。CD-ROM(例えばISO9660形式)のようにCDメディアにFLACなどのMQAファイルを格納したものではない。つまりPCオーディオよりも、通常のCDプレーヤーでの再生を主眼としている(エンコードとは録音時にコード化することであり、デコードは再生するために復元するということだ)。

端的に言うと普通の音楽CDとまったく同じである。それでいて、再生機器がMQA対応できていればハイレゾ相当の音質が実現できることになる。CDなのにハイレゾ再生できるというのも、MQAの目指している「使い勝手」と「音質」の両立という目標を実現したものと言えるだろう。

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