HOME > レビュー > AKG初のデュアルダイナミック型イヤホン「N25」速攻レビュー。これまでにない新しいタイプのサウンド

N20とも比較試聴

AKG初のデュアルダイナミック型イヤホン「N25」速攻レビュー。これまでにない新しいタイプのサウンド

公開日 2017/02/16 13:01 山本 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
オーストリアのオーディオブランド・AKGがコンシューマー向けヘッドホン・イヤホンのプレミアムラインである「Nシリーズ」を発表してから間もなく2年になる。順調に広がってきたラインナップの中核に、いよいよ初のデュアル・ダイナミックドライバー型のイヤホン「N25」が加わる。本機のファーストインプレッションをお届けしよう。

AKG初のデュアル・ダイナミックドライバーを搭載するイヤホン「N25」

AKG初のデュアルダイナミックドライバーイヤホン

N25は、シリーズのエントリーモデルである「N20/N20U」とプレミアムモデル「N40」の間を埋めるハイレゾ対応イヤホンだ。見た目のデザインはN20によく似ているが、ほぼ同じサイズのハウジングの中に2つのダイナミック型ドライバーを搭載したことが大きな違いであり、N25の画期的なところだ。

N25とN20U(右)の本体を比べてみると、ドライバーが2基搭載されているN25の方が少しサイズが大きいことがわかる。ノズルも長めになり、鋭角にデザインしたことで耳に深くフィットする

イヤホンを側面から見てもN25のハウジングはやや大きめ。ケーブルがよりノズル側に近い所から出ている

中高域用には5.8mm口径のドライバーをノズルの近くに配置して、その奥に低域用9.2mm口径のドライバーが並ぶ。N20/N20Uはフルレンジの7mm口径ダイナミック型ドライバーが1基だったので、N25ではドライバーを入れ替えて、さらに上下に帯域を広げた格好だ。再生周波数帯域は20Hz〜40kHzとなり、スペック上はN20/N20Uに対して高域だけが伸びている格好だが、音を聴き比べると中低域の余裕が明らかに違うのがわかる。

ドライバーの背圧を逃がすベントもN25はハウジングのトップ、N20Uはボトム側にある

左側イヤホンから伸びるケーブルのインラインにはマイク付の3ボタンリモコンを搭載。N20UやN40にも採用されている、iOSとAndroidのリモコン信号をボタンで切り替えられる仕様を継承する。なおN25は、N20と同様ケーブルの着脱には対応していない。そしてリモコンの有り・無しで二つのバリエーションを揃えたN20/N20Uに対して、N25はリモコン有りのモデルのみでスタートする。

リモコンもカラーリングを本体の色に合わせている。iOS/Androidを切り替えるスイッチを搭載する

N20Uと同じ3ボタンタイプのリモコン

本体のデザインは耳に装着した際にノズルが耳穴に深くフィットするよう角度を付けた。ハウジングも外耳に自然と寄り添うように柔らかな丸みを帯びている。ハウジングの素材は樹脂で、フェイスプレートの一部にはアルミ素材を採用。AKGのロゴを配置して上質なルックスに仕上げた。イヤホン部のサイズをN20Uと比べてみると、やはりドライバーを2基積んだぶん厚みは増しているが、装着感はより快適になっている。

ハウジングは耳にあたる内側に緩やかなラウンドを持たせて装着感を高める工夫を凝らした

ケーブルはイヤホン本体から分岐のところまで樹脂の被覆、合流後3.5mmプラグまでの間が布地の被覆としている。タッチノイズを抑え、デザインに高級感を持たせた。

ケーブルは分岐のところで被覆とカラーリングをスイッチしている

本体のカラーバリエーションはブラック/ベージュ/ティールグリーンの3色。付属品もサイズが異なるイヤーピースのほか、セミハードタイプのコンパクトなキャリングケース、クリーニングツール、本体と色を合わせたフライトアダプターなど充実している。

付属品も充実している。航空機変換アダプターも本体の色に合わせ込んでいる


N25の音質をチェック。
デュアルダイナミックだからこその余裕ある力強い再生力


N25の音質はハイレゾプレーヤーにAstell&Kernの「AK300」、スマホに「Xperia XZ」を揃えてチェックした。比較のためN20Uも用意している。

N25とN20Uを比較試聴

はじめにハイレゾ音源を聴いた。原田知世の「恋愛小説2」から『September』では、ボーカルのきめこまかな質感が指で触れたように伝わってくる。N20Uよりもメロディの存在感は鮮明で、かつ身近に迫ってくる。電子ピアノやエレキベースなど楽器の音色がとても濃く浮かび上がる。情報量がとても豊富だからだろう。ベースは肉厚でしなやか。インパクトの余韻が爽やかだ。色づけがなく、打ち込みの切れ味が鋭い。N20Uでは細身に感じられた低域の音像が比べものにならないほど充実度を増している。

AK300でハイレゾ音源を試聴

アップテンポな楽曲は渡辺美里「Lovin' You〜30th Annversary Edition〜」から『みつめていたい/Restin' In Your Room』を試聴した。ボーカルのハイトーンはN40譲りのシャープな解像感、見通しのクリアさが特徴だ。シンバルやハイハットなどドラムスの高域が、N20Uではやや刺さってきこえるところもあったが、N25では消え入り際までゆったりと滑らかな余韻が持続する。デュアルドライバーならではのキャパシティの大きさが活きている証拠だ。ベースの音像は引き締まっていてフォーカスがぶれない。ボーカルとバンドの楽器の定位も安定している。鳴らし込めばますます柔らかさも引き立ってきそうな手応えも感じる。

上原ひろみの「SPARK」から『Wonderland』を聴いてみると、N25は演奏の熱量を上手に引き出す余力も備えたイヤホンであることがわかる。ピアノの音像がグンと前に出てきて、強弱の彫りがみずみずしい。抑揚の豊かなメロディを伸び伸びとうたいあげる。ドラムスの演奏に自然なつながりが生まれて大きなうねりになる。細かな音の粒にも一つずつフォーカスがきちんと定まっている。アーティストが演奏に込めた感情までが読み取れるようだ。リアリティあふれる音楽に引き込まれた。

プレーヤーをXperia XZに切り替えて、Google Play Musicからスヌープ・ドッグのアルバム「COOLAID」のトラック『Two or More』を再生する。低音の再現性にはやはり相当の余力が感じられる。音が鋭く立ち上がり、深く沈み込む。中高域とのセパレーションも明瞭で、ボーカルとコーラスの音像がマスクされて滲んでしまうことがない。ラップのフレーズも歯切れがよく、力強く鮮やかなドライブ感に身を任せられる。気持ちのよい音楽再生だ。

Xperia XZで音楽配信サービスの音源をチェック

N25はAKGのイヤホンらしい緻密な中高域の解像度と透明感の高さと、音楽のダイナミズムを体の芯にまで伝える屈強で肉付きの良い低域を最良のバランスで揃えたイヤホンだ。ここのところが、ややもすれば中低域にバランスが偏りがちになる多くのデュアル・ダイナミックドライバー型イヤホンと、N25が明らかに一線を画していると言える。音楽のエネルギーをタイトに引き締めて鋭くぶつけてくるスピード感は、Nシリーズの上位モデルであるN40のキャラクターにも共通する部分があると感じた。AKGにとって初めてのデュアル・ダイナミックドライバー型イヤホンは、これまでにない新しいタイプのサウンドを楽しませてくれる魅力を持っている。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: