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【特別企画】シリーズを超えた組み合わせテストも

オーディオテクニカの新VMカートリッジ、「針交換」できる魅力とその活用法を徹底解説

公開日 2016/12/22 14:08 炭山アキラ
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■「VM740ML」 ¥42,000(税抜)
  無垢マイクロリニア針「VMN40ML」搭載/交換針単体価格:¥26,500(税抜)

ここからメタルボディの700番台へ入る。「VM740ML」も無垢マイクロリニア針を搭載するが、実はVM740MLとVM540MLの交換針は同一のものだ。もちろん前述の通り、今作VMシリーズは内部のインピーダンスもコイルのターン数も完璧にそろえてあるから、交換針が共通でもまったく問題はないわけだ。

「VM740ML」

VM540MLからすぐにVM740MLへと聴き比べたが、最初に気づくのはパチパチノイズが明らかに減ったことだ。これは、ボディがアルミダイカストになったことで針先から伝わるパルスの共鳴が小さくなり、結果として再生音が静かになったと考えられる。高級なボディの恩恵といってよいだろう。音質もまさにその通りの違いが耳へ届く。

クラシックはVM540MLでもいいさじ加減の素晴らしい表現だと感心したが、VM740MLになると途端に楽音への付帯音が減ったことがあからさまに実感できる。ややにぎやかに広がる印象があった音場はすっきりと整理され、レコードへ入っている音情報のみで広大で濃厚な音場を聴かせるのだから、やはりボディの違いはそのまま音の品位へ直結しているといってよい。

ジャズはまさにハイファイ。録音現場の活気と一糸乱れぬビッグバンドの統制感と緊張感が再生音からビンビンと伝わる。これはある種、音楽を楽しむための音とモニター的な検聴サウンドの中間に位置する音質傾向ではないか。ポップスでは、これまでわずかにモコつき気味だったベースラインがすっきりと開放的に鳴り渡るようになった。歌い手のウィスパー・ボイスは、抑揚や情感がさらに耳へ届く。謹厳実直で、それでいながら音楽の魅力を耳へしっかりと送り届ける、実に好ましいカートリッジである。

■「VM750SH」 ¥50,000(税抜)
  無垢シバタ針「VMN50SH」搭載/交換針単体価格:¥35,000(税抜)

お次の「VM750SH」は、日本が誇る超広帯域ラインコンタクト「シバタ針」を採用する。シバタ針は数あるラインコンタクトの中でも際立って音に厚みとコクを付け加えるタイプという印象を持っているが、このVM750SHもやはりそうだった。

「VM750SH」

クラシックは弦楽合奏の奏者1人ずつが見えてくるような高解像度で大スケールの鳴りっぷりを聴かせ、しかしそれはオーバーシュートなどの後付けで作られたスケール感ではなく、音溝をより深く掘り下げたら結果としてこうなった、という強い説得力を有している。

ジャズはさすがというべきか、演奏への魂の入りっぷりが頭抜けている。分厚く、濃く、パワフルに爆発し、華麗に音の成分が散っていく。これまでの楕円針やマイクロリニア針でも全然問題なく楽しんでいたのだが、「やっぱりジャズを聴くならこれくらいのコクが欲しいね」などと思わず独りごちてしまう。この差は大きい。ポップスは少しボリュームを大きくしたようなスケール感と厚みが耳に快い。マイクロリニア針がよく尖らせた鉛筆で書いた細密画だとすれば、こちらは4Bくらいの鉛筆でぐいぐい書き上げた絵画のイメージがある。ボーカルはホットで情熱的、伴奏はジャズ同様に分厚く、濃い。オーディオテクニカとしては異色、というか新境地を見せる音作りなのではないか。

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