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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第163回】イヤホン「ROSIE」「ANDROMEDA」でaikoの『ロージー』『アンドロメダ』を聴いてみた

公開日 2016/08/19 10:00 高橋 敦
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■「ROSIE」と「ANDROMEDA」の実力をaikoじゃなくてチェック

では続いて、僕が普段から使わせていただいているリファレンス曲でのチェック。

▼ROSIE

まずここで改めてセッティングを確認。イヤーピースはフォームタイプのL。これは単に僕の耳のサイズや形とのフィッティングからだ。低音調整ダイヤルはやはり全開を基本に、曲との相性等で必要を感じれば絞り込んでみるという対応。

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」はスタジオライブの一発録音。しかし単に生々しいというだけではなく、アコースティックな空間性とは別種の、演奏時のエフェクトや録音後の処理の素晴らしさによるレコーディング作品としての空間性にも優れた作品だ。

ROSIEはその空間の空気感をかなり濃厚に表現してくれる。空間が音の粒子で満たされているような感覚だ。それでいてそこに濁りはないし、解像感も高い。映像で言えば上質なフィルム撮影のような感触だ。ギターだけに注目してもほぐれたエッジ感や豊かな響きにすぐに気付く。

しかしほぐれっぷりと言えばボーカル。ほぐれているのにしゅっとしてもいて、意図されているであろうその息遣いを存分にかも心地よく届けてきてくれる。なお「粒子感が濃すぎる…」と感じる場合は低音ダイヤルを全開から少し下げてみるとよいだろう。

Q-MHz feat. 小松未可子さん「ふれてよ」でもボーカルは見事というか、声質との相性ということで言えばこちらの方がさらによい気がする。

小松未可子さんは声優として幅広い役柄を演じているが、少年役でも力を発揮するタイプの声質だ。例えば「ガンダムビルドファイターズ」では主人公の少年、イオリ・セイを演じている。その少し中性的な成分というか声が胸で響くような中低域を、低域調整全開にしたこのモデルは実に豊かに表現してくれる。胸が豊かだ。

この曲ではもうひとつ、ベースの表現もポイント。ベースという楽器の中でも特に低い音域を多用したフレージングで、音色の重心も低い。全体のバランスやボーカルとのコンビネーションを考えると実に適切なアレンジであり演奏だが、明瞭にしっかりと再生するのはなかなか難しい。このモデルはそこを実にさらっとクリアしてくれる。

ゴツゴツ感は抑えて柔らかに弾む、プレジションベース的な音色になる点には「この演奏本来のものとは少し違うのかも…」とも感じるが、しかし違和感があるわけではない。というか僕としてはこれも好感触!だ。

▼ANDROMEDA

こちらも同じくイヤーピースはフォームタイプのL。同じく単に僕の耳のサイズや形とのフィッティングからだ。

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」ではやはり、濃い口のROSIEと比べて「爽快!」な方向性での表現になる。相対性理論の曲ならしゅわしゅわ弾ける「ウルトラソーダ」との相性はさらによいのだがこの曲でも、濃い空気感ではなく素晴らしい透明感で描き出すことでの表現というのを感じさせてくれる。

イメージでいうと、スタジオライブ録音であるこの音源のその雰囲気の比率がROSIEだとスタジオ3のライブ7のところ、ANDROMEDAだとスタジオ6のライブ4になるような感じ。音の配置であるとかエフェクトの効果であるとかがわかりやすい。もちろんROSIEもそこはしっかりしているが、そこをあまり意識はさせない音作りだ。対してこちらは特に強く意識なくてもその緻密さに気付かされる、そんなタイプの音になっている。

ミッドレンジに追加されたドライバーの効果は、もちろんボーカルでも感じられるが、この曲だとベースの音色の芯の強さに特に感じられる。ベースラインがガツンとしてくれて、ソリッドでロックなドライブ感が強まる。

相性のよさを感じた曲は花澤香菜さん「あたらしいうた」。この曲は曲も歌もそして歌詞の言葉も、あらゆる意味での「抜け感」がポイントだと思うのだが、このモデルはやはりそこが強い。この曲とこのモデルがかけ合わさったときの抜け感の気持ちよさときたら…だ。

手数の多いドラムスではそこの強みを特に強く感じる。アタックから余計な膨らみや響きを残さず、一発一発の音がすっと綺麗に抜けて収まってくれるおかげで、音がどんどん詰め込まれてきても前の音がもたっていて重なってだぶつくみたいなことがない。シンバルのシャープさもこの歌この歌詞の思い切りのよさの表現をサポートしてくれる。

その歌も花澤香菜さんの声のシャープでいて耳心地のよい成分をまさにその期待通りに出してくれて、文句なし。

■まとめ

同じような時期に同じような価格帯で発売された両モデルだが、方やシリーズのエントリー、方やシリーズのトップエンドという立場の違いから始まり、メーカーの目指す方向性や考え方、技術的な背景、そしてもちろん音も実に対照的なものだったというのが、チェックを終えての感想だ。そこは技術面を見ると特にわかりやすいと思う。

JH氏自らが示したBAマルチの基本的な考え方を継承し、その精度、完成度を磨き上げてきたのがJHで、それは「FreqPhase」に象徴される。

対してBAマルチの設計に新しい手法を用いてきたのがCampfireで、それは「Resonator assembly」に象徴される。

結果、どちらもがそれぞれの方向性での高みに到達している。このように個性豊かな選択肢が並ぶのはイヤホンファンには喜ばしいことだ。素直にひたすら歓迎したい。

…あ、あとみなさんもうお忘れかもしれませんが、aikoさんのハイレゾもいい感じです。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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