DACに旭化成「AK4490」を搭載

【レビュー】I2SでのDSD入力に対応したラズパイ用DACボード「Terra-Berry」を聴く

海上 忍

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2016年06月24日

音の印象は、鮮烈そのもの。Lee Ritenourの「Gentle Thoughts」(WAV 96kHz/24bit)などフュージョン/AOR系の楽曲を中心に試聴したが、I2S接続らしく音の立ち上がり/立ち下りに優れ、楽器がそこで鳴っているかのように空間描写が鋭い。リムショットはキレよく、バスドラのアタックも輪郭が濁らない。AK4490というDACのポテンシャルというより、素の表情を垣間見た気がした。

Raspberry Pi公式ケースに収めたところ。ピンコネクタを挿すと蓋はできない

天蓋を装着するためのフレームは付くには付くが、LINE OUTのピンコネクタに接触してしまう

YUTAKAの「Brazasia」などハイレゾ化されていないGRP系のCD音源を数枚聴いたが、こちらもいい。Terra-Berryでは、I2S経由で入力された音源はサンプルレートコンバータ「AK4137」によりPCM 707.6/768kHzおよびDSD 11.2MHzへとアップサンプリングされるため、USB DACに直接入力したときと比べるとDACの違いを差し引いても印象はだいぶ異なる。I2S接続らしい生々しさを保ちつつ情報量が増すことで、音場感が変わってくるのだ。クロックが44.1kHzと48kHzの2系統用意されていることも、アップサンプリングの正確性にプラスに作用しているのだろう。

DSDの再生は、山中千尋 サムシン・ブルー・クインテットの「ライヴ・アット・ブルーノート東京」(DFF 2.8MHz)でテストした。冒頭で説明したとおり、現時点でのRaspberry Pi向けLinuxディストリビューションの制約により、Terra-Berryで再生できるDSDの上限は2.8MHz(DoP)だからだ。

DSD 2.8MHz再生時のTerra-Berryの様子をprocファイルシステムで確認。DoPでの出力となるためデータは192kHz/24bitとなっている

しかし、その出音はふだんUSB-DAC経由で聴くときとは違う。音そのものではなく、サウンドステージがより明確に、より奥行きをもって広がる印象だ。これもアップサンプリングによる効果なのだろうが、DACとサンプルレートコンバータの組み合わせを前提とするTerra-Berryの個性ともいえる。

ノイズフロアの低さも評価したい。ラズパイ・オーディオの課題として、Raspberry Piの電源部(USB micro-B経由)が使うスイッチングレギュレータの問題があるが、自前の電源を持つTerra-Berryはその影響を受けない(付属のACアダプタは汎用品だがトランス方式)。4層基板に専用GND層を持つことの効果もあってか全体的にS/Nは高く、I2S出力で聴くにしてもややノイジーな傾向があるRaspberry Piの音がひと皮剥けて感じられた。

製品全体を通しての印象は、一言で言うと「スパルタン」だ。ある程度のLinuxの知識を要求することはともかく、すべて収まるケースが現在市場には流通していないなど、そのままオーディオ機器として楽しめるとは言い難い状況であり、むき出し感まで許容できるDIY指向のオーディオファンでなくては厳しい。

とはいえ、I2S経由でサンプルレートコンバータ「AK4137」およびDAC「AK4490」から出る音には強力なインパクトがある。I2S接続による入出力はPCM 192kHz/24bitが上限ではあるものの、オープンソースであるLinuxの開発スピードは速く、その制約は近い将来外される可能性が高い。他のRaspberry Pi用DACカードでは見られないI2SでのDSD入力に対応している点も考慮すれば、「将来に備えつつ現在を楽しめる」製品と言えるだろう。

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