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海上忍のラズパイ・オーディオ通信(16)

ラズパイ・オーディオでDSDネイティブ再生、DSD 11.2MHzの世界を目指す

公開日 2016/06/16 09:35 海上 忍
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■なぜDSDネイティブ再生にこだわるか

なぜDSDネイティブ再生に拘るかだが、それは「DSD 11.2MHz(DSD 256)再生」にある。DoPは識別信号が付加されるため、DACの受け取るデータが約1.5倍に増加してしまい、DSD 11.2MHz対応をうたうDACといえど、再生能力が不足することになりかねないからだ。ラズパイ・オーディオでDSD 11.2MHzを狙うのであれば、ネイティブ再生を追うのは当然の成り行きといえる。

LinuxでDSDネイティブ再生(非DoP)が可能かどうかチェックする場合、カーネルとALSA、および再生ソフトのバージョンを確認することが1つの方法だ。細かい話は省略するが、Linuxカーネルはバージョン4.1.10以降、ALSAライブラリはバージョン1.0.29以降であればOK。これは、前述した有志開発者による改変が他の開発者に認められ、本流のソースコードにマージされたためだ。Linuxカーネルのバージョンは「uname」コマンドで、ALSAライブラリのバージョンはdpkg(Debian系)やpacman(Arch系)などのコマンドで調べることができる。

残念ながら、本連載でターゲットとしている「Volumio」は、上述の条件を満たさない。現行バージョンのv1.55は、カーネルがv3.18.14、ALSA(libasound2)がv1.0.28で両方ともアウト。次期バージョンのリリース候補版「Volumio 2 RC1」も、カーネルはv4.1.19だがALSAがv1.0.28でアウト。手作業でカーネルとALSAライブラリをアップデートできる経験値があればともかく、多くのオーディオファンにとってそれは苦行以外の何物でもないはず。

Volumio 1.55のカーネルとALSAの情報を確認してみると、どちらもDSDネイティブ再生に対応していないバージョンであることが確認できた

さらに、再生ソフト側の問題もある。ファイルフォーマット(DSF)に対応していることはもちろん、ネイティブ信号のままALSAにオーディオ信号を引き渡さなければならないからだ。これに対応するための拡張は、有志開発者によりパッチの形で公開されており(リンク)、バージョンに応じたパッチを適用したMPDでなければDSDネイティブ再生はできない。

■DSD 11.2MHzのネイティブ再生に必要な環境とは

ラズパイ・オーディオでDSDネイティブ再生をするために必要な"三位一体"の条件を満たすディストリビューションは、本稿執筆時点では「RuneAudio」を挙げることができる。正式版ではなく最新ベータ版(v0.4-beta、RuneAudio_rpi2_rp3_0.4-beta_20160321_2GB)だが、カーネルとALSA、MPDのいずれもDSDネイティブ再生に対応するよう調整済の状態で収録されているのだ。RuneAudioはVolumioと源流が同じ(RaspyFiというディストリビューションの後継)であり、パッケージ構成や操作性もよく似ているため、Volumioユーザならばインストールを含め違和感なく利用できることだろう。

本稿執筆時点ではベータ版だが、「RuneAudio」はカーネルとALSA、MPDの3要素ともDSDネイティブ再生に対応している

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