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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第157回】ちゃんと説明できますか? 知っておくべき11のポータブルオーディオ最新トレンド

公開日 2016/05/27 10:00 高橋 敦
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▼ベント(ポート)

・タグ|イヤホン 潮流

●ワード概要
空気孔。この項目では特に、イヤホンのハウジングに設けられるそれについて解説する。消極的にはドライバーの駆動を妨げる空気バネの低減のために、積極的には意図的な音響調整のために用いられる。

●トレンド解説
イヤホンの遮音性を高めるには、ハウジング全体やイヤーピースとリスナーの耳とを隙間なく密着させ、耳の中の空間を密閉することが必要だ(その究極系がCIEM)。しかしするとその空間に閉じ込められて逃げ道のなくなった空気が、そこに対して動くものへの反発力を備えてしまう。BA型の小さな振動板なら無視できる程度だが、ダイナミック型の振動板はその空間で動こうとするとそこに閉じ込められた空気に負けて押し返されたり変形したりして、本来の性能を発揮できなくなってくる。

その対応策として最もシンプルで効果的なのは、遮音性を犠牲にして空気孔(ベント、ポート)を設けることだ。振動板の動きに合わせて空気が抜けたり入ったりしてくれれば、振動板への負荷は生まれない。

そしてどうせ空気孔を設けるなら、そこにフィルターのような機能を持たせることで積極的な音質調整にも利用しよう、そういった発想と思われるモデルが増えているように思える。さらに興味深いのはその後者、積極的な音質調整機構という発想で空気孔を搭載したと思われる、BA型ドライバー搭載モデルも現れてきているということだ。
一方、遮音性を重視する観点から空気孔を用いない別の手法を開発したFitEar「FitEar Air」のような例も面白い。

Fender「FXA5」は2BA。Aurisonics時代に「GROOVE-TUNED PORT」として採用していたものの流れを汲むと思われるポートが見える

対してFitEar「FitEar Air」はポートを搭載せず密閉性を高めたままで空気負荷を低減する新発想技術を搭載


▼4.4mmプラグ&ジャック

・タグ|イヤホン ヘッドホン プレーヤー アンプ 接続方式 素材 新規格 潮流

●ワード概要
4.4mm径5極の新規格端子。電子情報技術産業協会(JEITA)による音楽鑑賞用ヘッドホンの規格改正、その附属書にて「ヘッドホン用バランス接続コネクタ」として規定された。

●トレンド解説
これは現時点では単に「新規格」として提案されたものであり、強制力をもって「業界標準」とされるものではない。そこは誤解がないようにしたい。その上で、「バランス駆動端子の乱立」「それぞれの端子が抱える難点」が悩ましい問題であることは、ユーザーもメーカーも共通の悩みであり認識だろう。電子情報技術産業協会というある程度中立的な組織による新規格の提案、それ自体は素直に喜ばしい。あとは「4.4mm径」5極というのが現実的にどうなのか?というのが問題だ。

既存のイヤホン端子は2.5mm、3.5mm、6.35mm。字面にしても外観にしてもそれらとの区別の付きやすさ、挿し間違えの回避といった点から言えば、空いている4mm台または5mm台が妥当だろう。強度的に十分であれば小型な方が好ましいので、5mm台よりは4mm台。こういった考え方からすれば4.4mmは妥当には思える。

しかし2.5mmよりも3.5mmよりも大型ということはどうしようもない事実であり、無視できない。ポータブル機器はポータブル機器なのでポータブル性は考慮されてしかるべきだ。端子周りの大型化はそれについてはマイナス要因となる。

ただそこは、そもそも「ポータブル性を重視するモデルにバランス駆動は必要なのか?バランス駆動搭載のハイエンドプレーヤーに小型軽量は求められているのか?」というところで考え方、受け止め方が分かれそうだ。

日本ディックスによる実物

編集部による極アサイン図解

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