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DAC兼小型アンプとして使用可能

【レビュー】I2Sの鮮烈な音を手軽に。サンハヤトのラズパイオーディオ用DACボードを試す

公開日 2016/05/12 10:23 海上 忍
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■I2Sならではの音、ただし磨く余地あり

肝心の音質だが、“I2Sならではの音”は期待して良い。試聴にはFLAC 96kHz/24bitの「Gaucho / Steely Dan」およびFLAC 192kHz/24bitの「Come away with me / Norah Jones」を利用したが、ふだん利用しているUSB-DAC経由での出音と比較すると、ひと皮剥けたような印象だ。

この状態で試聴を実施した。ACアダプタ(AD-S525A)の用意がないため、ヘッドホン出力のみのテストとなった

一音一音の立ち上がり/立ち下りがスピーディーで、ハイハットのオープン・クローズやリムショットは迅速に収束し、歯切れがいい。ピアノのタッチも鋭く、余分な響きが生じないためか音像がはっきりと定まる。音の鮮度感が増し、ボーカルは口もとの様子がリアルに浮かぶほど。音色にはややモニター的な傾向はあるものの、生真面目でも無色透明でもなく、ひたすら写実に徹した細密画のような音、とでも言えばいいだろうか。

しかし、S/Nには改善の余地がある。原因はいくつか考えられるが、アンプICや周辺のコンデンサといったアナログ回路、SoCなどメインボード部分が発する電磁ノイズ対策など、結局のところオーディオ的な発想と実装が必要なのだろう。実際、I2Sで入力できるよう改造を施したPMA-50(関連ニュース)は、アンプとして出力段や電源部が作り込まれていることもあり、同一のRaspberry Piから出力した音の印象はかなり異なる。このAS-E404という製品の出音も、磨きをかける余地はあるはずだ。

装着後に使えるケースの不在も気になる。製品の仕様書に「評価/学習/電子工作用」と明記されていることもあり、その辺りは自作で賄うべしというスタイルはじゅうぶん理解できるが、ケースがなければオーディオ機器としての体裁は整わないし、第一扱いにくい。安価なプラスチック製でもかまわないので、DACカードをシリーズ化する暁にはオプションとしての提供を検討してほしいものだ。

DACが直接SoCと通信するI2Sによる伝送は、オーディオシステムとしてのユーザビリティはともかく、USB-DACに対して音質面でのアドバンテージがあることは間違いない。シングルボードコンピュータの拡張ボードとはいえ、オーディオに知見のある企業がこの手の製品を発売することには、大きな意義があるのではないか。ラズパイ・オーディオを推す身としても、サンハヤトの試みにエールを送りたい。

(海上 忍)

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