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dCS「Rossini Player」を聴く。独自の5bit Ring DACが奏でる唯一無二のサウンドとは?

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角田郁雄

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2016年02月10日
昨年2015年も、素晴らしいオーディオ製品たちが続々と登場した。次々に現れる魅力的な新製品に、目をらんらんと輝かせた方も多いはず。私も同じだ。数々の新製品の中から特に関心を持ったのが、半導体DACを使わず、独自のアルゴリズムによってD/A変換を行う“ディスクリートDAC”だ。今回から数回にわたって、このカテゴリーに当てはまるD/Aコンバーターやディスクプレーヤーを取り上げ、機能や技術、そしてその音を紹介していきたい。第1弾として取り上げるのは英dCSの「Rossini Player」だ。

dCS「Rossini Player」¥3,590,000(税抜)

<INDEX>
1、dCSへの“思い入れ”
2、Rossini Playerの製品詳細
3、Rossini Playerの技術(Ring DACについて)
4、Rossini Playerの音を聴く

私のdCSへの“思い入れ”について

かつて録音スタジオを席捲したdCSサウンド

Rossini Playerについて詳しく説明する前に、個人的なdCSへの思い入れをお話しておきたい。若い頃、私はクラシックを中心とした録音の仕事をしていた。振り返ってみて印象に残っているのは、1995年頃から始まったハイビット・ハイサンプリング録音である(今で言うとことろのハイレゾ録音だ)。

この頃から、“ハイレゾリューション”あるいは“ハイディフィニション”なサウンドを目指すスタジオエンジニアたちが、ワイドレンジで高解像度なA/DコンバーターやD/Aコンバーターを求め始めた。そして数々のスタジオモデルが登場したが、中でもdCSの製品は高い評価を受け、世界のメジャーレーベルの標準機器となっていた。

私自身もdCSの製品に強い興味を抱いたのだが、実際にスタジオでその音を聴いて、心動かされたことが何度もあった。たとえばプロ用のDATレコーダーで録音した音を「dCS954」D/Aコンバーターで再生したときには、「こんなの微細な音、空気感までも録音されていたのか。こんなにも倍音が豊かだったのか」と驚かされたのを今でも覚えている。広い空間に描きだされたのは、あたかもその場で演奏されているかのようなリアリティだった。

90年代以降に登場したクラシックCDの多くは、dCSサウンドと言えるのではないだろうか。しかし、後にdCSはプロオーディオ機器の販売をやめ、ハイエンド・コンシューマーマーケットへと舵を切った。2007年にはトランスポート/DAC/クロック/アップサンプラーの4ピース構成となるフラグシップ「Scarlatii」シリーズが発売された。2012年にはこれをさらに上回る旗艦シリーズとして、やはり4ピース構成の「Vivaldi」が登場し、現在に至るまでラインナップされている。

角田氏の試聴室にリファレンスシステムとして導入されているVivaldi Transport/DAC/Clock/Upsampler(写真:下段および中段)。写真右上は今回取材したRossini Player。左上はDELA「N1Z」。

現在も録音やマスタリングにわずかながら携わっていていることもあり、卓越したdCSサウンドで音楽を楽しむだけではなく、プレス前のCD/SACDやハイレゾの音の再現性を評価するリファレンス(基準)として、Vivaldiシステムを導入しようと考えていた。そして、本当に苦労の末にVivaldiを導入するに至り、前述の評価やハイレゾとディスクメディアの両方を楽しんでいるところだ。

しかしながら、Vivaldiシステムは前述のようにトランスポート/DAC/アップサンプラー/クロックの4筐体で構成されている。デジタルケーブルはUSBとLANケーブルを含めると最大9本。クロックケーブルは5本、ラインケーブルと電源ケーブルで6本。合計で20本もののケーブルが必要となる。導入はできたものの、音作りが大変だった。1年かかって、ようやく好みの音ができたかな、といったところだ。その間、苦労はしたが、いろいろな工夫を試すことができて興味深い体験ができた。

dCSの基幹技術である5bit Ring DACは第8世代となり、2.8MHz DSDやSACDを再生しても、11.2MHz DSDではないかと思うほどの空間性と高密度な音像が体験できる。よくできたハイレゾやディスクメディアを再生すれば、あたかも生演奏ではないかと思えるような、ワイドレンジなリアリティを聴かせてくれる。特にアナログレコードに迫るきめ細い音質と鮮度の高い倍音表現は魅力的で、弱音の美しさは、音楽をより高次の世界へと導いてくれるようだ。

Rossini Playerの詳細

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