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【レビュー】ケンウッド6年半ぶりのヘッドホン、最上位機「KH-KZ3000」速攻チェック

高橋 敦
2015年08月06日
ケンウッドからヘッドホンが登場!…と聞いて「ケンウッドからヘッドホン?」と驚いた方もいらっしゃることだろう。それもそのはず、ケンウッドのヘッドホンは2009年の春以来という久方ぶりの登場とのこと。近年のヘッドホンファンは「おひさしぶり」ではなく「はじめまして」の方も少なくないかもしれない。オーディオ全体としては定番ブランドなのにヘッドホンとなると新鮮。その点からも注目のモデルだ。

KH-HZ3000

その復活の新モデルのうち、よりハイエンドな上位モデルとなるのがこちら「KH-KZ3000」。ベーシックデザインは「KH-KZ1000」と共通だが、主に音質面によりハイコストな技術をいくつか投入。ケンウッド新世代ヘッドホンのフラッグシップだ。

ということでベーシックな部分については同時掲載のKZ1000の記事の方を参照していただくとして、ここではKZ3000のみとなるポイントを中心に紹介していこう。

KH-HZ1000(左)と並べたところ

1つ目はドライバー。こちらには「トリプルネオジウムマグネットドライバー」が搭載される。「トリプル」の部分がKZ3000のみのスペシャルな要素だ。口径はKZ1000と同等だがメインマグネットの前後にセカンド、サードのマグネットが追加されており、電磁的な駆動力が強化されている。

3つのマグネットによる40mm径のトリプルネオジウムマグネットドライバーを搭載

2つ目は「グラスファイバーPAサウンドディフューザー」だ。ディフューザー=拡散器というとドライバーの前面に搭載され高域や指向性の調整に用いられるものという印象が強いかもしれない。しかし本機のそれはドライバーの背面側に搭載されており、その効果は特に低い低域の再現性の向上だ。ヘッドホンの限られたハウジング容量の中で空気をいかに綺麗に効率よく動かすか、空力的にその補助をするパーツと考えてよいだろう。

そして3つ目はグラスファイバーPA+アルミニウムハウジング。これは単純に、より頑強なハウジングとすることでブレや余計な響きのないより正確な再現性を得るため。なおKZ3000は他にもそれぞれステンレス製とアルミ製のふたつの「アンチバイブレーションリング」も仕込まれており、振動特性の異なる素材をいくつも組み合わせて不要振動を抑える意図を見て取れる。

KZ1000との違いとしては他に、イヤーパッドの素材がソフトPUとなっており、装着感もこちらの方が良好だ。

ケーブルは着脱式

そしてその実際の音だが、「駆動力+制振性」の徹底のおかげなのか、KZ3000の持ち味はそのキレの良さにある。特段アンプとしてのパワーがあるわけではないポータブルプレイヤー「AK120II」での試聴だったが、それでもそこは際立った。

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」冒頭のバスドラムはその低音の音の本体をタイトにそれでいて太く描き出し、だからこそそこから広がる響きもクリアで、過剰ではないのに豊かに届いてくる。キレがよく無駄がないからこそ、無駄ではない細かな響きも大いに感じられる。

もちろんそうなれば空間表現にも十分な余白が確保されており、それぞれの音像の配置もクリア。そこに余裕があるのでエレクトロニックでもメタルでも音数が詰め込まれているサウンドのその情報量も潰さない。

TECHNOBOYS P.G.「SHaVaDaVa in AMAZING♪(OUT OF LOGIC)」で光ったのは、ベースのスラップ奏法のアタックの弾けっぷりだ。スラップ奏法は楽器の中でも特に強く速いアタックを持つ奏法のひとつだと思うが、それにも送れずに追従する。

好みが分かれるかもしれないところとしては、女性ボーカルは少し鋭い感触だ。音作りに遊びがないのでそういった傾向になるのかもしれないが、その遊びのなさこそが本機の他の長所にもつながっているわけだ。なおKZ1000は本機よりも遊びが残されている印象で、好みによってはあえてそちらという選択肢もあるかもしれない。

メーカーではそういった表現はしていないが、「すっきりモニター系ヘッドホン」が好みな方にも特に合いそうな印象。挑戦的な技術で堅実に音質を高めた、姿勢も音も硬派な復活作だ。

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