【特別企画】「車の中でもハイレゾ!」

KENWOODの業界初192kHz/24bit対応カーナビ「MDV-Z702」を詳細レポート

野村ケンジ
2015年06月25日


ハイレゾ音源が急速に充実しつつあるなか、ついに車の中でもハイレゾ音源が楽しめる時代がやって来た。それが、ケンウッドから発売された192kHz/24bitソースの再生を可能にした彩速ナビゲーションの最上位「Type Z」シリーズの「MDV-Z702」である。ここでは、車の中でハイレゾを楽しむことのメリットを考察しながら、実際の機能や操作感を含めて検証を行い、気になる音質までを詳細にレポートしていきたい。

培ってきた高音質手法をフルに投入しハイレゾに対応
高音質メディアを車の中でも楽しめる画期的なモデル


●ハイレゾ音源が車の中で聴ける喜びとは
ついに車の中でもハイレゾ音源
本来のサウンドを楽しめる時が来た


本誌でなぜカーナビを紹介するのか? と疑問に思う方も多いかもしれない。だが今回紹介するケンウッドの彩速ナビ「MDV-Z702」の衝撃は大きい。カーオーディオ、カーナビの中で初めて192kHz/24bitPCMというハイレゾに本格対応し、ついにハイレゾ音源を家の中から持ち出せ、しかもハイレゾ本来の高品位なサウンドを楽しむことが実現したのだ。


プジョーの3008に設置されたMDV-Z702。スピーカーはケンウッドのXSシリーズに変更してある。
私は実はずいぶん前から、カーオーディオメーカーにハイレゾ対応を早くしてくれと言い続けていた。配信サイトの誕生でハイレゾ音源の入手が容易になり、またiPodとの対応といったデジタルデータ音楽を、カーオーディオは先行して取り込んでいたからである。だがシステムの問題でなかなか実現されず、歯がゆく思っていたのだが、ついにケンウッドが対応モデルをリリースした。これによりハイレゾ音源のポータビリティが実現され、車の中でもスピーカーを通して純粋かつ高品位なハイレゾ音源を満喫できるようになったのである。この意義は、非常に大きいといえる。

●いち早くハイレゾに対応したこだわり
培ってきた高音質技術を生かしながら
難しいDSPの問題をクリアし完成へ


実はカーオーディオでハイレゾ再生を実現するのはかなり難しい。いままで車内でハイレゾ音源を聴くには、ハイレゾ対応ポータブルプレーヤーをアナログラインでつなぐしかなかった。しかしカーオーディオはDSPがポイント。車のスピーカーの位置は限定されているし、限定された空間でいかにいい音場をつくり上げるか、という点を進化させて、高いレベルに達している。その音場技術が、アナログ接続だと生かせない。そのDSPを中心とした高度なテクノロジーを、ハイレゾ対応にするのは非常に難しく、こんなに時間がかかってしまったのだ。つまりハイレゾに対応するには、DSPも含めて全てを刷新しなければならない。開発工程も大変だろうし、コストも相当かかるはずだが、それをいち早くケンウッドが実現させたのは大変素晴らしいことだ。

もうひとつ重要なのは、ケンウッドが以前からカーナビに対する音質向上にこだわっている点である。今回で4世代目となる彩速ナビの以前から、大熊龍彦さんというトリオ時代から音響をみてきた人が、音質マイスターとしてカーオーディオに取り組むようになって大きく進化させてきた。今回搭載された「独立中点回路」を開発したり、カーナビではデジタルノイズ、高周波ノイズが大きく影響することが分かっていたので、ナビ部とオーディオ部をセパレートさせたりして、常に音質向上を図ってきた。ケンウッドはカーナビでもいい音で楽しめるんだよ、と知らしめた先駆者的なメーカー。この10年以上もの蓄積があって、エンジニアリングの集大成が今回誕生したモデルなのである。逆にいえば、カーオーディオコンポーネントとして徹底して音質を向上させた製品が、ついにハイレゾに対応したので、高品位なのは必然といえるのだ。

いま、オーディオ部門があり、音楽レーベルも持っていてカーオーディオをやっているのは、実はJVCケンウッドしかない。また「ビクタースタジオ」が、グループ内にあるのも強みのひとつ。これらの連携も、今後、ホームと車の中でハイレゾを楽しむ世界を広げるために、大きな資質となるだろう。

●本機の使いやすさを検証する
サウンド関連の調整も簡単にでき
大きな効果をもたらしてくれる


さて、デモカーに搭載された「MDV-Z702」を操作してみると、オーディオを楽しむ機能の使い勝手のよさは、まさにケンウッドといえる。サウンド設定画面のメニューから入る各種設定(調整)は、誰にでも容易に使えるのが大きな特徴。いままで培った車載データを元に搭載された「リスニングポジショニング設定」は、スイッチひとつでフロントに音が広がり、フロントシート左右どっちでも楽しめたり、運転者専用モードなども用意。また音像イメージをリスナー正面に設定できる「フロントフォーカス」は優秀で、音場コントロールに関して素晴らしい効果をもたらし、簡単かつ手軽に使えるプリセットにも関わらず、大きな効果的をもたらしてくれる。ハイレゾの効果を生かしながら、解像感的にもうまくできている。


リスニング調整としては「リスニングポジション調整」と「フロントフォーカス調整」が用意され、簡単に切り替えることでその効果を確認できる。

グラフィックイコライザーは画面を指でなぞるだけで変更できる。もちろんアルバムや曲の選択は指でのスクロールよりスピーディに行える。
新たに「K2テクノロジー」も搭載され、これはCDやMP3では効果が大きく、基本的にはオンのままでいい印象だ。また13バンドのグラフィックイコライザーも秀逸で、指先でなぞるだけで設定できる。まずこんな感じかなって最初描いてみて、あとは微調整できるので、とても扱いやすい。さらに「ナチュラルEQ」は設定したものに対して独自のアルゴリズムでナチュラルなサウンドバランスにしてくれる。それで自然な感じになるので、好みで「ノーマルEQ」か「ナチュラルEQ」かを選べばいい。


サウンド設定のメイン画面は認識しやすいように工夫されている。

操作を行う野村氏。サウンド調整も簡単にできるのが大きな魅力。

●実際のハイレゾ試聴による音質レポート
AKMの32bitDACを採用し
最新技術と高音質技術を融合させた



さて肝心の音質面の技術を簡単に説明しよう。まず、核となるDACチップには新世代のAKM製32bitプレミアムDAC、「AK4490」を搭載している点が注目に値する。「VELVET SOUNDテクノロジー」により、高分解能32bit処理に加え、ノイズ耐性の高い設計を行うことで繊細な音の表現を可能にし、AKM製トリプルコア浮動小数点演算DSP、低位相ノイズマスタークロックを採用することで、ハイレゾ音源のもつ膨大な情報量を正確かつ迅速に処理している。また、全てのソースは192kHz/32bitにアップコンバートされ、再生される。




そのほか「ジッターレス信号処理システム」「アイソレーションアンプ」「新・独立中点回路システム」「セパレートシャーシ構造」など、新しい技術と長年培ってきた高音質技術をフルに投入し、ハイレゾの真の音質を引き出すことに成功しているのだ。

アコースティックから打ち込みまで
さまざまな音楽ジャンルに対応できる


さて、デモカーにて実際に様々なハイレゾ音源を使って試聴してみた。ちなみに、デモカーはプジョーの3008で、スピーカーはケンウッドのXSに変更してあるが、デッドニングなどは、ほとんど施していない。

取材時にJVCケンウッドの木村 剛さんからMDV-Z702の説明を受ける野村氏。その扱いやすさと高品位なハイレゾサウンドを入念に確認していた。

一聴して音はいい。基礎体力が高いので、ハイレゾ音源に対応して、さらにCDやMP3の音質もクオリティが上がっている。ハイレゾ音源は、すごくリアリティの高い音が出せている。騒音レベルの高い車室内で、ハイレゾなんて意味がないと思うかもしれないが、ハイレゾはサンプリングレートが細かく、ダイナミックレンジが広くて細やかになることが持ち味なので、中域のヴォーカルが生々しくなるとか、楽器の切れのよさが出るので、車の中でもいい音を聴くことができる。実際車の中で、ロードノイズやエンジン音でマスキングされるのは120Hz以下の低域。それ以上ならあまり影響は出ない。だからこそハイレゾソースを車の中で楽しめる。一度聴けば実感できる質の高い音質で、フォーカス感が高くはっきりとしたサウンド。特にハイレゾならではのライヴ音源もお薦めだ。ケンウッドらしい細かい音が耳まで届くのが特徴である。

さまざまな音楽ジャンルに対応でき、アコースティックな楽器、チェロとかの帯域でもボウイングの細かい響きが伝わって生々しい。「テクノボーイズ」の音源では、アナログシンセを使用することが聴き分けられて、ガツッとした低域を聴くことができる。音楽性も高く、ホームオーディオの高度なシステムで聴いた時と同じ感覚が車の中でも体験できるのである。もちろん「ビクタースタジオ」の思想が入っているためか、生楽器の再現性にこだわりがあり、リアル感も見事に出ている。さらに打ち込み系でも切れがいいので、まさにオールラウンドなシステムといえる。

もちろんドンシャリの世界ではない。ピュアオーディオらしいサウンドで、ケンウッドKシリーズに通じるキャラクターを持っている。やはり求めている音は、原音主義なのだと強く感じた。

●本機が果たした新しい世界
好きなハイレゾソースを持ち出すことで
カーオーディオの新しい世界が広がった


ハイレゾは家でこもらないと聴けない、しょうがないから外ではヘッドフォンで聴く。でも本当はスピーカーで聴きたい人が多いはず。そんな人が車の中でもハイレゾが楽しめる。好きなハイレゾソースが持ち出せるのが大きなメリットであり、本機のハイレゾ対応で、カーオーディオにもこんな素晴らしい世界があるのが分かってもらえると思う。


SDカードはフルオープンすると挿入できるようになる。
実際は車の中ではチープな音で聴いている方が多いと思うが、それが今回の彩速ナビ「MDV-Z702」に交換するだけで、ハイレゾも楽しめ、通常のソースもいい音で聴ける。もう少し良くくしたいと思えば、ハイレゾ音源が楽しめる同社のセパレートスピーカーXSシリーズに変えてトレードインすればいいだろう。その意味では、移動中にもスピーカーで音楽を楽しめるという新しい環境ができたと思うし、本機の誕生でハイレゾの世界がさらに広がったことに拍手を送りたい。

■ネットオーディオを楽しんでいる方へのメリット
USBやSDカードを使ってハイレゾが車で楽しめ
しかも簡単操作ができるのが大きな利点だ

DSDには対応していないものの、192kHz/24bitまで対応しているので、ほとんどのハイレゾ音源に対応している。USBやSDカードを使って、ピュアなハイレゾが車の中で楽しめる世界が用意された。その意味では、ハイレゾ音楽が、外にも持ち出せるようになったことに大きな意義がある。この価格でこれだけの音が手に入るなら、とてもいいシステムだと思う。ケンウッドがずっと培ってきた高音質技術の集大成であり、しかもハイレゾ対応としたことで、大きくステップアップしたのが、このモデルである。とにかく操作の手軽さにかけては、ホームとは次元が違う。車なので、運転中も操作ができなければならない。ササッと操作ができ、誰にでも容易に使えるようになっている。ご主人が設定すれば奥さんも簡単に、車の中でいい音楽を楽しめるシーンが実現するのである。

(野村ケンジ)


■Specification

●メディア対応:DVD-VIDEO、CD-DA、CD/DVD(音声MP3、WMA、AAC、WAV)、USB(音声MP3、WMA、AAC、FLAC、WAV、Vorbis/映像MPEG-4 Video、H.264/MPEG-4 AVC、WMV)、SD(音声MP3、WMA、AAC、FLAC、WAV、Vorbis/映像MPEG-4 Video、H.264/MPEG-4 AVC、WMV) ●対応最大サンプリング周波数/bit数:192kHz/24bitPCM(WAV、FLAC) ●最大出力:50W×4 ●定格出力:29W×4(4Ω,1kHz,10%THD) ●S/N比:100dB(CD) ●ダイナミックレンジ:96dB(CD) ●ステレオ・セパレーション:90dB(CD) ●外形寸法:180W×100H×185Dmm ●埋め込みサイズ:178W×160H×100Dmm ●質量:2.79kg

本記事は、『ネットオーディオ 18号』からの転載です。『ネットオーディオ』の詳細はこちら

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