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【特別企画】

“ジャパンプレミアム4K” − パナソニック ビエラ「CX800」の魅力に迫る

2015/06/17 大橋伸太郎
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パナソニックの4Kビエラに新たな主力モデルが加わった。その名はCX800シリーズ。日本の美的感覚や感性を再現すべく、映像美をとことん追求した4Kビエラのプレミアムモデルである。

4Kの真価が問われるのは色彩と陰影の表現力にある

赤朽葉(あかくちば)、赤香(あかこう)、赤丹(あかに)、曙(あけぼの)、今様(いまよう)、潤朱(うるみしゅ)、臙脂(えんじ)、柿(かき)、樺(かば)、唐紅(からくれ)、東雲(しののめ)。何のことか、お分かりだろうか。

もっと一般的なものでは、緋(あけ)、朱(しゅ)、紅(くれない)、茜(あかね)。これでもほんの一部にすぎない。そう、伝統的な日本の「赤」のバリエーション名である。日本人の美意識の鋭敏さ、繊細さが窺われるが自然に由来したイメージに止まらず、これだけの数え切れない赤が染織や日本画の中に実際に表現仕分けられて「実在」するのだから凄い。

テレビジョンの実用化に日本が深く関わったことはよく知られている。液晶テレビやプラズマテレビは日本で発明されたと言っていい。図抜けて鋭敏な“色彩"感覚を持つ日本人だから、当初色域の狭かった固定画素方式の限界を突抜けて豊かにしていくことに成功した。

また、ディスプレイが表現する色彩のニュアンスは色相の違いにだけ拠るのでない。ベースとなるモノクローム特性に優れ、豊かで微妙な階調が描き分けられてこそ豊かな色彩が生まれる。ここにも日本人特有の“陰影"感覚が寄与している。

テレビが4Kになった当初、私達の眼は精細感に惹き付けられたが、4Kの威力は画素のきめ細かさから生まれる階調の微妙さにあり、それに色彩が加わり2Kで味わえなかったリアリズムが生まれることに気が付いた。同時に光源のドライブの最適化や画質回路の色復調の精度次第で色域に関して大きな開拓の余地があることが理解された。そうして4Kテレビは今、広色域とバックライト制御の技術を競い合っている。

色彩表現と陰影表現に長けたジャパンプレミアムモデル

昨年来、4Kテレビは大画面の主流と常識となる勢いである。パナソニックがUltra HD Blu-rayプレーヤーを試作、年度内に発売が予想され、今や4K第2幕が始まろうとしている。そうした中、“色彩”表現と“陰影”表現で大きな前進を成し遂げた製品が現れた。パナソニックのビエラCX800シリーズである。

ビエラ CX800

CX800のパナソニックのキャッチフレーズが「ジャパンプレミアム」。最初は今一つ意味が分からなかった。単に日本設計、日本生産ということなら従来からやっているではないか。

CX800の開発陣にインタビューしてメッセージを理解した。ジャパンプレミアムの心は、冒頭で紹介したような淡い色やくすんだ色の、従来では難しかった表現にあるというのだ。

これは広色域だけでは達成出来ない。ベースとなる正確かつ微妙な明暗、陰影のニュアンス、さらに発色の阻害要因の映像ノイズの高度な抑制が加わって初めて達成出来るはずだ。

バックライトや色補正回路を大きくブラッシュアップした

CX800シリーズは、60型を筆頭に55型、49型の3画面サイズを用意、スラント(CX800N)とフラット(CX800)の二つのデザインがあり計6機種で構成される。

パナソニック ビエラCX800シリーズ

注目すべきは全機種IPSパネルの採用だ。後述の広色域技術「ヘキサクロマドライブ」との親和性が高いことに加え、水平視野角が約178度と優れ、家庭での実使用時、画面に正対出来ない場合もコントラストや色の階調の劣化が少ないことが採用の理由に挙げられる。


49型を含む全機種で部分駆動(ローカルディミング)のLEDバックライト方式を採用。IPSは開口率が高く高発光効率LEDとの相乗効果で最高輝度が前世代のAX800比で1・6倍に向上。その結果、高輝度部分の色再現性が躍進した。


ヘキサクロマドライブの中心技術が3次元カラーマネジメント回路だ。液晶パネルの特性に低輝度部分の色域がねじれて縮む特徴があるが、3次元カラードライブで本来の色域に戻し正確な色再現を行うことに成功。最も再現の難しい人肌でその効果が発揮される。

色空間の処理について昨年のAX800では一部線形補間処理を行っていたが、今年の本機からLUT参照方式を採用、旧製品比で16倍精度を高めた。色彩表現へのこうしたこだわりの結果、色域の大幅な拡張をなし遂げ、4K放送規格BT・2020色域に対応する

調整工程を増やしパネルの均一性と精度が一段と向上

CX800シリーズが部分駆動のLEDバックライトを採用することはすでに紹介したが、バックライトの光漏れの特性をあらかじめデータとしてインプットして動作信号補正を行い、光の収束度を向上する工夫がなされた。パナソニックでは出荷前の製造過程で一台ずつガンマ補正をかけているが、CX800ではガンマとホワイトバランス両面で調整ポイントを増やし個体の均一性と表現の正確さを一段と高めている。


注目のHDRにも対応を果たした。HDRは映像の輝度レンジを大幅に引き上げ自然界の明暗レンジに近づける試みで、各社のテレビやビデオカメラですでに対応が始まっている。しかしHDR本来の形はソフト/ハード一体になってのシステムワークの改革で、現時点のHDRは輝度情報の類推に拠る復元に止まり、本命はUltra HD Blu-rayの登場まで待たねばならない。


Ultra HD Blu-rayのHDRはコンテンツのピーク輝度を現状の100ニットから1,000〜10,000ニットへ飛躍的に向上されており、CX800はそうしたコンテンツに対してバージョンアップで対応する。パナソニックはUltra HD Blu-rayを先導する立場だけに、CX800のHDRに期待が募る。

色彩を巧みに描くカラリスト − 現時点で最上の4Kテレビ

CX800シリーズの視聴には、大画面の中核TH-60CX800Nを使用。広色域やコントラスト表現の進化、そしてシネマプロ画質の確認を行った。

最初に視聴したソフトは定番のデジタルアニメーション『TSUKUMO』。昨期登場した最上位モデルAX900と比較すると、黒の沈み込みではさすがに及ばないものの、冒頭で書いた赤系の色相の豊かさ、適確さでAX900以上のカラリストぶりを見せる。

赤系に限らず紫や茶といった複雑な色相の中間色の豊かさとノイズの少ない透明感豊かな表現に眼が吸い寄せられる。ソースが持つ色彩バランスやニュアンスへの密着という点で、現時点で最上の4Kテレビといえよう。

次に視聴したのが、昨年を代表する高画質BDソフトの一本、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス名もなき男の歌』。フォークブーム前夜のN.Y.のライブハウスで主人公のデイヴィスがギターをつま弾くシーンを再生する。本作の大半が35mmフィルムで撮影された。

4Kテレビの場合、精細感を強調する意図でカメラフォーカスの合焦部分が強調され遠近のバランスのいびつな映像になる機種がしばしば見られる。CX800はピントが来ている手前の部分のエッジ描写に作為がなく自然でしなやか。近景、中景から背景へエッジの高域成分がなめらかにロールオフしていくので映像の中の一枚の画としての一体感が損なわれずフィルムシューティングらしいしなやかな質感が息づく。

デイヴィスの歌に聞き惚れる聴衆の一人の若い女の肌のトーンが薄明かりの中でしっかり描かれることもここでのポイントだが、暗部ノイズの少なさも寄与して3次元カラーマネジメントの効果がいかんなく発揮され、わずかに紅潮した柔らかな肌が映像の中で呼吸する。

色彩と明暗の美学の要求に応えるジャパンプレミアム

最後にCX800系はオーディオにも改良の手が入った。AX800で総合18Wだったサウンドが10W×4の総合40Wに躍進、スピーカーの磁気回路には従来のフェライトに代えてネオジウム磁石を採用、クアッドパッシブラジエーター(4基のドライバーが背中合わせに配置、不要振動を打ち消す)を搭載し低域の量感を増したことに加え、人の声の埋もれ感を改善した。



「ジャパンプレミアム」を標榜するCX800だが、往年のカラーテレビのように日本の伝統色に強いというのでなく、世界で最も繊細かつ厳しい日本人の色彩と明暗の美学の要求に応えるスケールを持つテレビである。昨年発売のAX900のプロスペック仕様はハリウッドのスタジオ各社に相次いでモニターとして納入された。AX900を上回るカラリストぶりのCX800シリーズである。こちらも引く手数多だろう。 「ジャパンプレミアム」はすなわち世界標準でもあるのだ。

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