HOME > レビュー > 【第123回】「人気キャラソン×高CPイヤホン」連載史上最大の40組み合わせで相性テスト!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第123回】「人気キャラソン×高CPイヤホン」連載史上最大の40組み合わせで相性テスト!

公開日 2015/04/24 14:43 高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

・渡辺早季(CV: 種田梨沙)「割れたリンゴ」


静止画だと何かすごく常識人っぽい普通に綺麗な方の雰囲気を漂わせているのだが、前世は風の国のお姫様とのことだ。つまりそういうことだ。「異能バトルは日常系のなかで」をご覧になっていた方なら、本編終了後のイベント告知CMでキャスト陣が厨二ポーズを決めていた際に、一人だけ明らかに突出したキレを放っていたことも記憶に残っているのではないだろうか。つまりそういうことだ。いずれにしても「きんモザ」「ごちうさ」両作品で主要ツインテールを演じる偉業を成し遂げるなど、現在のアニメ界に欠かせない人材。個性的というよりは普遍的に「綺麗な声だな」と思える凜とした声質が魅力だ。

さて「割れたリンゴ」は種田さんの初主演作品「新世界より」のED曲。しかしこれは正直、種田さんメインではなくこの曲のかっこよさメインで選んでしまった。アコースティックギターを大胆にスライス(高速トレモロのようにバババッと切り刻むエフェクト)したメインリフが印象的で、この「人工的に造り出された」人造感が作品世界と実にマッチしている。そういったエフェクト感の表現にも注目してイヤホンとの相性をチェックしてみたい。

相性相対表

・渡辺早季×SE112 相性評価:○

SE112はこの曲の無機質な部分と肉感的な部分が拮抗する様子が面白い。例えばハイハットシンバル(アナログドラムマシン的なノイズ系の柔らかなサウンドだ)など、リズムの音色はアナログ的な厚みを増す。エフェクティブなアコースティックギターも胴の低く豊かな響きを生かすことで生の楽器らしさも残しており、単に人工的なサウンドにはしていない。効果音的に挿入されるエレクトリックギターのハイゲインでギュウッと圧縮感の強いサウンドもエフェクティブであると同時に生々しく、よいアクセントになっている。

そしてこのイヤホンはどの曲を聴いても声が自然。「マイクと通した上での肉声感」みたいなニュアンスなのだが、それをこの曲でも発揮。それもまた、人工的なサウンドに対しての人間らしさということでこの作品の「らしさ」を感じさせてくれる。この曲に抱いていた印象を少し変える、それでいてなるほどという納得感のあるサウンドで聴かせてくれるイヤホンだ。

・渡辺早季×TX2 相性評価:◎

TX2は豊かな空間表現で作品の世界観を表現してくれる。まずアコースティックギターのすっと抜けてキレのよい音色。基本の音色がスパッとしているのでスライスエフェクトのキレもさらに際立つわけだ。

ハイハットシンバルの役割でリズムを刻むサウンドの響きの成分、それによってもたらされる立体感も秀逸。そういった細かな響きを感じ取りやすいのは、このイヤホンが空間を広く確保して音と音の間に余白を確保できているから。その余白に響きが映える。またエレクトリックギターの配置にもその空間性が発揮されている。

そしてそのエフェクト感や空間性の中に力強すぎずシュッとした音像の声が浮かんでいる様子が、世界と人との関係性のようなものを感じさせてくれるというのが、全体としての大きなポイント。押し迫る迫力ではなく呆気なく延々と広がる虚空に、歌声がぽつんと放り出されている。この作品の世界とヒロインの在り方を表してくれているようなサウンドだ。

・渡辺早季×ATH-CKB50 相性評価:○

ATH-CKB50は世界ではなく身の回り、日常が歪んでいく様子を感じさせる。冒頭からアコースティックギターの音色をざくっと荒い質感で描き出し、世界の荒廃を感じさせる。幻想的な表現ではなく、もっと現実的に厳しい感じだ。音色のキレ、スライスのキレもバシッと強く決まっている。

空間性は、それぞれの音がタイトなので余白を多く確保されているが、それほど広いという感じではない。世界というよりはもっと身近な、ヒロインたちが暮らす町の風景、そこでの出来事を思い出させてくれる。その町のほんの一歩外には異質な世界が広がっているという気配も含めて。ボーカルも少し荒い手触りではあるが、気になるほどではない。繊細さと荒れた質感が入り混じる雰囲気はこの作品の雰囲気ともあっているかもしれない。

・渡辺早季×XBA-100 相性評価:◎

XBA-100は世界と人とのコントラストが鮮やか。背景の静かさに対してアコースティックギターの輝きが強く、その落差が不穏さを強めてくれる。ハイハットシンバルとしてリズムを刻むサウンドの細やかさや立体感も見事だし、ストリングスもほどよい厚みで空間を広げる。エレクトリックギターその他の上物の配置や移動も綺麗で、空間性も秀逸。

しかしやはりいちばんのポイントは最初に述べた「背景の静かさ」と思える。オーディオ的な表現で言えばS/Nが良好みたいなことなのだろうが、厨二的な表現で言えば「全てを吸い込む闇の虚空」みたいな世界の深淵を感じさせるそれだ。なので歌がそこにぽつんと浮かび上がる様子もより際立つ。それでいて世界に立ち向かうのではなくその世界でどう生きていくのかというような、強い輝きではなくとも確かな灯火のような、種田さん演じるヒロインの強さも、その歌からしっかり伝わってくる。このイヤホンが声にほどよく与えてくれる鈴鳴り感のおかげだろう。これもまたこの曲この作品によく合うイヤホンだ。

次ページ次で折り返し地点。コウ(CV: 早見沙織)

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE