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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第112回】高橋敦の “オーディオ木材” 大全 〜 音と木の関係をまるごと紹介

公開日 2015/01/16 10:44 高橋敦
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●塗装等の仕上げ

木材は樹種によっては、ヤスリやカンナで表面を整えればあとは何の仕上げ処理もしなくても十分な美しさと耐久性を持つが、何らかの仕上げを施すことでその美しさや耐久性をさらに高めることもできる。例えば塗装を施せば(木材の弱点である)湿気の影響を受けにくくなるというのはわかりやすい利点だ。

オーディオ機器だと塗装の種類等までは製品情報に明記されていないことが多い。逆にそれが明記されている製品があれば、その製品はそこに何かしらのこだわりがあると考えてよいのかもしれない。

木材全般の塗装として現在最も一般的なのはポリウレタン塗装だろうか。硬質で木材の響きを阻害せず、あるいはその硬質さでまた別の音色感を加えつつ、耐久性も高く、化学的に迅速に硬化してくれるので大量生産性も高い。ウレタンの他にもこういった合成樹脂系の塗料が現在の主流だ。この系統では、紫外線硬化塗料も塗装の種類や方法としてメジャーになってきているように感じる。

ラッカー塗装は、現代的なアクリルラッカーにせよ、古いタイプのニトロセルロースラッカーにせよ、自然乾燥が必要なので大量生産性は低いし、耐久性も高くはない。しかし柔らかく暖かな艶を得られるし、耐久性の低さのおかげで使い込むと外観に味が出やすい。十年単位で使い込むつもりならばの話だが。

塗装の色は、木材らしさを生かすならば、クリアやそれに少し色付けした程度のものということになるだろう。塗膜ではなく「木地着色」で色合いを調整する手法もある。木材用の着色剤の他、面白いところでは紅茶とかワインとかで木材に色を付けて、その上からクリア塗装で仕上げるというやり方だ。

しかし一方、木材らしさとは別のかっこよさのある「ピアノブラック」も定番。まあそれを含めてソリッド(塗り潰し)の塗装になると木材に限った話ではなくなるが。ピアノといえばついでに言っておくと、楽器であるピアノやギター等の塗装技術を持つヤマハなどは、ここにおいて少なからずの優位を保っているのではないかと期待できる。

塗料による塗装とは異なる感触を生み出せるものとしては、各種のオイル仕上げがある。上記の塗料は材の表面に塗膜を形成するが、オイル仕上げは材の表面付近に浸透して表層に保護層を作るといったイメージだ。物理的な保護力は前述の塗装に全く及ばないが、木材の手触りを生かしたまま、湿度等へのある程度の耐性を持たせつつその油分で艶も出せるといったところが特長。

オイル仕上げ用のオイルとしては、石油系合成樹脂ベースのオイルもあれば、亜麻仁油や桐油、荏の油といった植物由来「乾性油」全般の天然オイルもある。オイルとの合わせ技で蜜蝋(蜂の巣から採取したロウ)を使うのも一般的だ。オーディオで一般的ということではなくて、工芸とかで一般的ということだが。

あとは、ここ日本では「漆」も木材の仕上げとして欠かせないものであり、オーディオにおいてもプレミアム製品などで採用例をちょくちょく見かける。和の仕上げとしては「柿渋」もあるが、こちらはオーディオのメジャーな製品での使用例は記憶にない。そのほか、ヴァイオリンやギターの仕上げに用いられるニスやセラックをオーディオに用いる例も、ないわけではない。


クリプトンがオーディオ事業10周年記念モデルとして発売した漆塗りスピーカー「KX-3UB」
■終わりに

というわけで今回は「オーディオ木材大全」として木材についての基礎知識をまとめさせていただいた。木材製品の専門家になるわけでもなく、オーディオファンとしての製品選びの参考や話の種としては、これくらいでとりあえず十分だろう。「もっと!木材!もっと!」という方は、最初の方でおすすめしておいたように、楽器や建築や家具とか方面の木材情報を各自でチェックしてみてほしい。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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