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【特別企画】連続レポート第2回

マークレビンソンのUSB-DAC内蔵プリメイン「No585」のハイレゾ再生を山之内正がレビュー

公開日 2014/12/03 11:30 山之内 正
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音楽の本質的な情報を引き出すNo585の魅力

高橋アキが取り組んだサティのアルバムは、ピアノの音色の豊かさが一音一音から伝わる優れた演奏で、聴き手を柔らかく包み込む残響の広がりを自然にとらえた録音の良さにも耳を傾けたい。今回の録音はファツィオーリ製の楽器を使っていることもあり、旋律の輝きや低音の伸びやかさが一味違う。No.585はその響きの特徴を細部までしっかり描写するため、繰り返し聴いても何かしら新しい発見を誘う。

No585のサウンドを確認する山之内氏

ネトレプコが歌うオーケストラ伴奏のアリアでは本機のセパレーションの高さを実感することができた。ツインモノ構造を徹底することで獲得した分離の良さはセパレートアンプ並みに次元が高く、オーケストラの各パート間はもちろんのこと、独唱と伴奏それぞれの音像が曖昧にならず、明瞭な筆致でイメージを描き出す。ソプラノの音像は中央に鮮明に浮かび、揺るぎないステレオイメージのリアリティに耳が釘付けになる。歪みを徹底して排除しているためだと思うが、高音域の音量が限界まで強まった瞬間さえ少しも不快ではなく、心地良い緊張に浸ることができた。

『ヒロイン −ヴェルディ・アリア集』アンナ・ネトレプコ、トリノ劇場管弦楽団、ジャナンドレア・ノセダ(96kHz/24bit・e-onkyo)

Jane Monheit『The Heart Of The Matter』(88.2kHz/24bit・HDtracks)

同じボーカルでもジェーン・モンハイトが歌うバラードにはフワリとした柔らかさがあり、しかも囁きかけるような弱音まで濃密な表情を失わない。ディスク再生時にも気付いたことだが、ボーカル音源とNo585の相性はとても良い。

海外ブランドでもプリメインアンプとしてはトップレンジに位置する製品だけに、No585の再生音にはあらゆる点で余裕が感じられる。しかも、音楽の本質的な情報を引き出し、演奏の表情を克明に描き出すという基本姿勢は同社の上位機種からしっかり受け継いでいる。新設されたUSB入力もその例外ではなく、ハイレゾ録音の緻密さやスケールの大きさを確実に聴き取ることができた。

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