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【特別企画】連続レポート第2回

マークレビンソンのUSB-DAC内蔵プリメイン「No585」のハイレゾ再生を山之内正がレビュー

公開日 2014/12/03 11:30 山之内 正
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繊細な表現や柔らかい響きを引き出す非凡な才能

No585でガーディナーとイングリッシュ・バロック・ソロイスツの『復活祭オラトリオ』を再生すると、バッハの音楽にそなわる躍動感を見事に引き出してみせた。3拍子でも4拍子でも1小節のなかで生き生きとした動きがあり、8小節以上の長いフレージングにも豊かな起伏が感じられる。強弱の振幅の振れ具合を正確に再現することはアンプの重要な資質の一つだが、No585はそこをしっかり押さえていることがわかる。

試聴では、同じくマークレビンソンのSACDプレーヤー「No512」、スピーカーはJBLの「Project K2 S9900」を組み合わせた

アタックに緩みがなく、トランペットやティンパニの鋭さをしっかり確保していることにも感心させられた。ヴァイオリンなど高弦もそうだが、その切れの良い立ち上がりが声の柔らかい響きと見事な対照を見せ、表情に起伏を生んでいるのだ。祝祭にふさわしく明るく勢いのあるガーディナーの演奏をマークレビンソンとJBLの組み合わせで聴いていると、他の演奏よりも曲が短く感じられるのが面白い。

『J.S.バッハ:復活祭オラトリオ、カンタータ第106番』ガーディナー&イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団(CD)

『ペーター・レーゼル モーツァルト:ピアノ協奏曲集 3』ペーター・レーゼル(ピアノ)ヘルムート・ブラニー(指揮)、ドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団(SACD)

繊細な表現や柔らかい響きを引き出す力にも非凡なところがある。ペータ・レーゼルがドレスデン歌劇場室内管弦楽団と組んだモーツァルトのピアノ協奏曲集、そのなかから第23番を聴くと、独奏ピアノのタッチの美しさ、そして録音会場の残響を生かした弦楽器の音色の美しさがにじみ出てきた。弱音のなかでの微妙な起伏を階調豊かに再現する力は、このアンプの基本的な資質と言ってよさそうだ。さらに、余韻が上に向かって浮上する様子がとても自然に感じられ、空間情報を忠実に引き出していることが伝わってくる。微小信号を正確に再現することはアンプの基本。本機はそこもしっかり押さえているということだ。

ハイレゾ音源がマークレビンソンの新たな一面を垣間見せる

次にMacBookAirをNo585につなぎ、USB-DAC経由の再生音を聴いた。本機の核心となる機能だけにその音質が注目される。192kHz/24bitのPCM音源は3種類試聴したが、AudirvanaPlus Ver.2との組み合わせでそれぞれの音源の特徴を鮮明に聴き取ることができた。

Mac Book Airを組み合わせてUSB-DAC機能も検証した

ミューザ川崎シンフォニーホールで収録したオルガン作品は曲のなかで一番低い音域まで風通しの良い澄んだ音色をキープし、透明感の高さを強く印象付ける。ダイナミクスが大きく変化して音数が増えても全体の響きが飽和せず、各声部の動きをはっきり聴き取れることにも感心させられた。ストップの異なるフレーズ間の音色の違いはとても幅が広く、響きは変化に富んでいる。演奏から立体感を引き出すのは本機の得意技の一つと言えそうだ。

『天上のオルガン〜 バロック音楽を中心にパイプオルガンとポジティフオルガンで聴く大ホールと礼拝堂の響き』塚谷水無子、管哲也(192kHz/24bit・e-onkyo)

『高橋アキ プレイズ エリック・サティ 1』高橋アキ(192kHz/24bit・HQM Store)

教会で収録されたオルガン伴奏の合唱にも同じことが当てはまる。ミューザよりもさらに残響が長い空間での演奏だけに透明感は一歩譲るのだが、礼拝堂のなかを満たす空気の密度の高さ、そして空間のなかに声が浸透していく様子の美しさは際立っている。演奏会場の空気の振る舞いの違いまで細かく鳴らし分けるところに、他のプリメインアンプとの違いを聴き取ることができた。

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