[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第93回】いつかは買いたい? “10万円イヤホン” 4モデル一気聴き!

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高橋敦

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2014年07月25日

■音質傾向

●IE 800|極上シャープ!精密感の最高峰!
●SE846|完璧バランス!全方位の表現力!
●W60|天然パワフル!低音が太く唸る!
●Roxanne|超絶ステレオ!広がりと奥行き!
○K3003|至高ハイブリ!理想の融合!

音質はもう言うまでもないが、それもそれぞれすばらしい。あとはそのすばらしさの方向性、超ハイエンドとしてあらゆる要素をハイレベルに満たした上で、さらにどこを得意とするかだ。

なお、今回の試聴環境(プレーヤー)は別件でお借りしていたAsteIl & Kern「AK100II」。音源やイヤホンの音を大きく盛ることも削ぐこともなくおおよそフラットに送り出してくれる印象で、超ハイエンドイヤホンの音質評価再生環境として過不足ない。以下、モデル別に音質レポートしていく。

・IE 800

IE 800の描写のシャープさは尋常ではないレベルだ。例えばシンバルの薄刃の切れ味は、イヤホンだろうがヘッドホンだろうがスピーカーだろうが、これに匹敵するものを味わえるオーディオは滅多にはない。そこは同社のフラッグシップヘッドホン「HD 800」にも通じるものがある。

そのシャープさは女性ボーカルでも見事に発揮される。坂本真綾さんがあえて刺すような発音で歌う瞬間のその刺さりを、すごい刺さりっぷりなんだけれど不快な痛さでは全くないという感触にしてくれる。宇多田ヒカルさんの歌もシャープな成分を存分に出すことで歌の切なさを強めてくれてすばらしい。

ここまでの話だけでは、極端に繊細傾向のイヤホンに思えたかもしれないが、このイヤホンは迫力も十分だ。Unkieの青木裕氏のギャリッと強烈に軋んで唸るギターも、そのエッジ感をこれでもか強烈に伝えてきてくれる。エレクトリックベースのぐいっとしっかりとした推進力というかドライブ感も確保。肉厚というよりは骨太な感じで、よい具合のゴツさも表現してくれる。

また今回ピックアップした中では唯一、寒色系の音調、ひんやりとした透明感といった印象でもある。ノルウェーのミュージシャンたちによるHoff Ensemble「Quiet Winter Night」には、その雰囲気がとても合っていた。

・SE846

SE846は、「超ハイエンドとしてあらゆる要素をハイレベルに満たした上でさらにどこを得意とするか」ではなく、「超ハイエンドとしてあらゆる要素を”さらに”ハイレベルに満たした」ような印象だ。そのためこのように他と並べて聴き比べると突出した何かという意味では弱いのだが、しばらく聴き込んでいると「…ん?いやこれって全面的にすごいんじゃ?」ということに気付く。

といっても全くの無個性無色透明ではない。例えば音調としては、ほんのりと少しだけウォームだ。女性ボーカルやシンバルはシャープな成分を強調しすぎず、自然に十分に伸びている高域によって、音色のほぐれを引き出している。ぼけてはいないのだが鋭いわけでもない、高度な中庸さだ。

低域の深さは今回ピックアップした中でトップクラス、つまり現状のイヤホン全体においてもトップクラスだ。多弦ベースがその特に低い音域までを活用して広い音域で動いても、その音が実に安定している。特定の帯域にピークがなく、低域がその底の方まで自然に伸びている証拠だ。その低音による豊かな空気感もポイント。

またアコースティックなローパスフィルターの威力なのか、その音場は濁りがとても少ない。そのおかげで音の細かな表情や響きの見え方もクリア。空気感や響きのよさはもちろん、空間性のよさも生み出してくれている。なお試聴は主に「バランス」ノズルインサートで行った。なので好み次第ではもうちょっと「ブライト」あるいは「ウォーム」に調整することもできる。

続いてW60とRoxanneをレビュー

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