[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第75回】 DSD対応小型ヘッドホンアンプ「nano iDSD」「DS-DAC-100m」をまとめ聴き!

高橋敦

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2014年02月07日

■独自のDSDネイティブ伝送方式を採用するDS-DAC-100m


改めましてこちらがDS-DAC-100m
DS-DAC-100mの基本情報としては…

・ポータブルハードディスクサイズ
・PCM 192kHz/24bit、DSD 5.6MHz対応
・専用ドライバー+再生アプリAudioGate
・バッテリー非搭載
・ステレオミニ端子のライン出力搭載

…といったところだ。

説明が必要なのは、「専用ドライバー+再生アプリAudioGate」のところだろう。一般にUSB-DACは、Mac(OS X)環境での利用には専用ドライバーのインストールを必要としない製品も多い。OS XはOS自体が用意するオーディオ環境が整っているためだ。

しかし本機は…、というかKORGのUSB-DACは全て、OS X環境においても専用ドライバーのインストールが必要。これは主にはDSD再生のためだ。KORGのDSD-DACはPC→DAC間のDSDネイティブ伝送に、業界標準となりつつあるDoP方式ではなく、独自の方式を採用している。そのためKORGのDACでのDSD再生には、独自のドライバーと専用再生アプリAudioGateが必須なのだ。

AudioGateでのDSD再生。なおAudioGateには完全刷新大幅強化のAudioGate 3が控えている。登場の際には改めて取り上げる予定だ

設定の「サンプリング周波数」を「2.8MHz」または「5.6MHz」にするとPCM(FLAC等)の音源をリアルタイムDSD変換して出力することもできる

では「そもそもなんでDoPじゃないの?」という部分だが、おそらくは「DSDデータをPCMデータに偽装して伝送する」というDoPのトリッキーな仕組み、その信頼性について、KORGとしては納得できなかったということだろう。独自の方式を採用してでもその閉じた環境の中での完成度を優先するというのは、ある意味でむしろMac的な考え方かもしれない。なおWindows環境では、安定したDSD再生基盤として定評のあるASIO 2.1によるDSDネイティブ伝送&再生を採用している。

■DS-DAC-100mの音質をチェック

ではそのMac+専用ドライバー+AudioGateの環境で音質チェック!こちらも試聴ヘッドホンにはShure SRH1540を利用した。

意外でもあり納得もしたのは、コルグのオーディオ向けDSD-DACの第一弾製品DS-DAC-10との感触の違い。設計開発の方向性は同じだが、その到達度が上がったため、これだけ進化したのではないかと想像している。

DS-DAC-10はレコーディング機器の技術をそのまま生かして開発された第一弾製品であったためか、その音はややドライなモニター調と僕には感じられていた。
対してこちらDS-DAC-100mは、極端ではないが、いわゆるアナログ的な滑らかも感じられる音だ。同時発売の据え置きモデルDS-DAC-100も同傾向の感触だったので、これがコルグ第二弾の音!なのだと思う。

具体的にはまず、全体の印象として滑らかなまとまり感を増したと感じる。解像感は確保しつつもそれを強く主張しすぎず、個々の音はやや大柄でその感触も荒さは出さずに滑らか。空間表現も余白を生かすよりはギュッとした濃密さが印象的だ。

低音側のベースやバスドラムは、ほどよくこもった柔らかな抜け方も表現する。「こもった」というと悪い印象になるかもと思うが、例えばビンテージ楽器のウォームさを好ましく「こもり」と表現することもある。ゴリゴリバキバキのサウンドが好みの方には違って聴こえるかもしれないが、表現の幅としてそういったウォームさも含まれていることはポイントだ。

エレクトロなサウンドとの相性も良い。中低音が濃密でしっかりしているので、それ系のベースやバスドラムの存在感も強いからだ。前述の空間性の濃密さも、クラブ系の空気感というか密室感の表現にプラスになる場合もある。

中高域の刺さりや荒さといった要素は悪目立ちさせない。ボーカルの刺さる成分、シンバルの質感の荒さ、スネアドラムの炸裂音の濁点などの要素だ。特にボーカルは、コーラスが重なる場面でのそれらの滑らかななじみ感が秀逸だ。「にじみ」ではなく「なじみ」と表現するニュアンスを受け取ってほしい。単に分離が悪いわけではなく、アレンジやミックスの意図に沿った一体感に思える。

DSD再生でも印象にブレは出ない。というか、PCM再生時にもどことなくDSDっぽい柔らかな雰囲気を醸し出しているのが、この製品の持ち味かもしれない。なおAudioGateとの組み合わせでは、PCM音源をAuduiGate側でリアルタイムDSD変換して本機に送り出すことも可能。激変はしないが、持ち味である滑らかさや和らぎがもうひとさじだけ加えられるように感じる。

既存モデルに対して、ほどよい個性も獲得して面白みを増したモデルと言える。ポータブル用途を想定したコンパクトさを生かして、メインのお気に入りUSB-DAC(ただしDSD非対応)をお持ちの方が、DSD専用サブ機として導入するパターンもいけそうだ。


DSD音源の配信は現状では少なく、今後も主流にはならないとは思う。しかしその音調に惚れ込んでDSDマスタリングを行うミュージシャンやエンジニアは一定数いる。彼らの作品がハイレゾ配信される際にはDSD配信こそがまさに最終マスターそのままの配信となる。それに備えてDSDもしっかり再生できる環境を用意しておくことは損にはならない。

もちろんPCMの再生音質、そして全体的な使い勝手を優先するのが妥当ではあるが、今回紹介した2製品はその点も問題ない。保険としてDSD対応を確保しつつも、普通に優秀なUSB-DAC/ヘッドホンアンプがほしい。そういうニーズにも応えてくれるだろう。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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