【レビュー】コルグのDSD対応DAC「DS-DAC-100」「DS-DAC-100m」使い勝手&音質検証!

山之内正
2014年01月27日
DSDレコーダーのMR-2000Sや高機能な再生ソフト「AudioGate」でおなじみのコルグがハイファイの世界でも大きな役割を演じ始めた。DSD対応USB-DACを相次いで発売し、ハイレゾオーディオの最前線を切り開いているのだ。

昨秋登場した最上位のDS-DAC-100とポータブル機DS-DAC-100mは、第一号機DS-DAC-10の姉妹機に相当するが、3機種とも形状が大きく異なることが興味深い。特にDAC-100は人間の眼を思わせるデザインが斬新だが、剛性の高いケースと金属製スパイクを組み合わせるなど、実はピュアオーディオ志向もかなり強い。

DS-DAC-100



DS-DAC-100m



第一号機DS-DAC-10。3モデル共、全く違う形状だ

DS-DAC-100は剛性の高いケースと金属製スパイクを組み合わせるなど、ピュアオーディオ志向も強い製品となっている
バスパワーで動作する点は2機種共通だが、入出力端子の構成は異なる。DAC-100mはUSBミニB、ステレオミニ仕様のヘッドホン出力とライン出力に絞り、厚さは2cmを切る。一方のDAC-100のアナログ出力はRCAとXLRに加えて標準ジャックのヘッドホン出力を積み、デスクトップオーディオを意識した仕様にまとめている。コンパクトなDAC-100mもサンプリング周波数表示を省略せず、モバイル用途の使い勝手を犠牲にしていない。


DS-DAC-100mはフロントに3.5mmステレオミニジャック、背面にUSB-miniB端子、ライン出力端子を用意したシンプルな構成。

DS-DAC-100の背面部。接続端子としてRCA出力、XLR出力端子、φ6.3mmヘッドホン出力(フロントに配置)を備える
こだわりの強さは回路構成にも読み取ることができる。DACチップはいずれもシーラス・ロジックのCS4398を採用し、DSD2.8/5.6に加えて最大192kHz/24bitのPCMをサポートする点も変わらない。

最大の注目点は、AudioGateと組み合わせることでWindowsとMacの両OSでDSD信号のネイティブ再生ができることだ。MacユーザーはこれまでDoP以外の選択肢がなかったが、専用ドライバーをインストールすることにより、MacのCoreAudioでもASIOと同様に低負荷で安定したDSD再生が実現できる。本機を選ぶ大きな理由になりそうだ。


1.使い勝手検証
ノイズ発生はないか?再生はスムーズか?PCへの負荷は?

前述の専用ドライバーと今春登場予定のAudioGate 3.0のベータ版をMacBookAirにインストールし、DS-DAC-100の音を聴いてみた。なお、AudioGate 3.0はシンプルで洗練された画面に生まれ変わり、いい意味で音楽再生ソフトらしい使い勝手になった。ワンクリックで編集画面に切り替えると波形が表示され、任意の位置での分割などが直感的な操作で行える点も便利だ。

AudioGate 3.0

こちらはこれまでのAudioGate。インターフェースが大きく刷新されたことが分かる


リアルタイムDSD変換やDSD-Analog変換、iTunesからの音源インポートにも新たに対応した
まずはプレイリストにWAV、FLAC、DSDのファイルを混在させて登録し、ノイズの発生や音の途切れがないかどうか、確認する。組み合わせるUSB-DACによってはいまもノイズなどの不具合が生じるケースがあるが、DS-DAC-100はまったくその徴候がなく、安心して音楽に集中することができる。オーディオ機器ではそれが当たり前のことなのだが、パソコンが介在するとその当たり前のことがなかなか実現できない。安定した動作を実現することがいかに重要か、あらためて思い知らされた気がする。曲の切替時にノイズが出ないことに加え、不自然なギャップや信号の途切れが起こることもなく、再生は非常にスムーズだ。今回の試聴環境ではMacのCPU占有率は10%台前半に収まり、負荷が意外に小さいことにも感心した。


2.音質検証
DSDの良さを引き出せているか?空間/質感表現力は?

アタックに確実にエネルギーを乗せつつ、音像の輪郭には余分な強調感を加えない点はDSDの大きなメリットだ。ネイティブ再生ではその長所がダイレクトに伝わり、余分なプロセスが介在しない良さを実感できる。あらゆる楽器に当てはまるのは音に力みがないことで、弱音はもちろんのこと、フォルテやフォルテシモでも音調が硬くなったり、音圧感が飽和して音色を聴き取りにくくなるということがない。それは本機のPCM再生にもある程度あてはまるが、DSDの方がよりその印象が強い。

ショスタコーヴィチの交響曲第15番(DSD2.8MHz)は第1楽章冒頭から各楽器の分離の良さに感心する。そして、楽器の種類が増えてもその印象は少しも変わらず、それぞれの旋律の動きと表情を漏らさず聴き取ることができた。低域に過剰な量感を加えていないので、ヴァイオリンや木管の旋律が大音響に埋もれず、しっかり前に出てくるのだ。柔らかさをたたえたトランペットなど、音色を正確に再現する点にも好感を持った。

『NAMA』(DSD5.6MHz)は演奏者同士が五感を駆使して呼吸を合わせる様子が生々しく伝わり、リズムの切れの良さとテンポの推進力の強さに引き込まれる。空気感のリアルな描写はDSDの特徴の一つだが、そこには息遣いなど、余韻以外にもいろいろな情報が含まれるのだ。

シュアのSRH1840で聴いたDS-DAC-100mの音にも上位機種と共通した特徴がある。特に、空間の広がりが大きいのに音場がスカスカにならず、密度の高い空気の存在が実感できる点には感心した。外見の印象とは裏腹にスケールが大きく開放感のある低音が出てくるのだ。性能は据え置きモデルに肉薄しているので、コストパフォーマンスではこちらの方が上を行くと言ってよさそうだ。

(山之内 正)

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