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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第59回】FM内蔵ドッグタグが“なんかイイ” JabraのBTイヤホン「Jabra TAG」

公開日 2013/09/13 11:33 高橋敦
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Jabra TAGの音質をチェック!

では音を確認していこう。大まかな印象としては、盛大な低音といったわかりやすい特徴はないものの全体のバランスはよく、音調としてはロックを聴くときに力を発揮するほどよい荒さが心地よい。

相対性理論「ミス・パラレルワールド」では、この曲を主導するハイハットシンバルがざっくりとした手応えでロック的な迫力を強めている。薄刃ではなくほどよい厚みを残しつつの、チャキンと金属的なキレと抜け。またエレクトリックギターも同じく金属的な音色だ。この感触がこのイヤホンの高音の表現傾向と言える。音色の艶や味わいといった要素は弱いが、迫力や存在感はある。

ベースは重量感や厚みを無理に稼がず、しかし自然な太さはある。音色は少し柔らかいが輪郭を崩すことはない。スタッカートも素直にこなしてリズムを躍動させてくれる。なかなかしっかりとしたまとめ方の低音だ。やくしまるえつこさんのボーカルは、彼女の豊かな倍音成分の柔らかくではなくシャープに出す。とはいえ耳障りなほどではなく、表現傾向としてありと言える範疇だ。

ただ、ボーカルは宇多田ヒカルさんの「Flavor Of Life - Ballad Version -」でも確認したが、こちらでは少しシャープすぎるかなという気もした。宇多田さんの声には様々な成分が含まれており、再生機器によってどの成分が目立つかで聴こえ方が変わる。このイヤホンでは高音の鋭さにつながる成分が目立つようだ。

しかしさらにただ、井口裕香さんの「Glow Slowly」でのギターのザクザク感の素晴らしさのように、そこが強みとして出てくる場面もあるので、一概に弱点というわけではない。

Daft Punk「Give Life Back to Music」はこの時代の新譜にして王道のディスコソング。この曲のベースは特に低い音域での演奏が多いのだが、このイヤホンはそこで無理をして重低音を演出しない。音色を膨らませてボリューム感を稼いだりしないおかげか、低い音域でぼやけがちな音程感や輪郭もしっかりと残る。なのでグルーブ感もぼやけない。ディスコソングでグルーブがぼやけていたら実に残念なので、そこをクリアしていることは嬉しい。

またシンバルやギターの感触は、相対性理論と同じく心地よく荒いキレがある。これもリズムを生き生きとさせている。

というわけで、この価格でワイヤレスであるから、ハイエンド的な再現性というのはない。しかしこの価格でワイヤレスということを鑑みれば、音質面での説得力も十分だ。納得できる。手頃な価格のBluetoothワイヤレスイヤホンをお探しの方なら検討の価値ありだ。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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