【特別企画】「VGP 2013 SUMMER 批評家大賞」受賞

ソニーの4K対応TV「BRAVIA X9200A」 − 画質/音質を徹底チェック

山之内 正
2013年06月06日

「VGP 2013 SUMMER 批評家大賞」を受賞したソニーの4K対応液晶テレビ「BRAVIA X9200Aシリーズ」を、VGP審査員でもある山之内正氏とプロカメラマンの川村容一氏がチェックする連載企画。技術的な背景などの製品特長を学んだ前回(関連記事)に続き、今回は4Kネイティブ映像とBDソフトの4Kアップコンバート映像との違いなどを山之内氏がレビューする。

【Part.2】新4K対応ブラビアの画質/音質を徹底チェック

ソニーから登場した4K対応液晶テレビ「BRAVIA X9200Aシリーズ」。前回は本機の高画質化や高音質化に関する技術的裏づけを中心に見てきたが、今回はいよいよその画質と音質を実際にチェックしていく。

X9200Aシリーズ。「VGP 2013 SUMMER」において「批評家大賞」を受賞

本機の潜在的な実力を知るには4K信号をダイレクトに入力するのが早道だが、コンテンツと再生機器を特別に用意する必要がある。今回は画質評価のためにその特別な環境をあえて用意した。4Kフォーマットでマスタリングされた映画作品をPCで再生し、4Kネイティブ信号の表示クオリティをX9200Aシリーズで確認したのである。

さらに、X9200Aシリーズをもう一台用意して同一作品のブルーレイディスクをBDZ-EX3000で再生する。こちらは本機が内蔵する4K X-Reality PROの性能を検証することが目的で、視聴にはソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが米国で発売した「Mastered in 4K」ブルーレイソフト作品のなかから『アメイジング・スパイダーマン』と『タクシードライバー』を使用した。

4K解像度の高画質映像をマスターに使用し、“広色域情報”を保持しながら高ビットレート、かつ、フルハイビジョン映像で収録したソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの「Mastered in 4K」BDソフト。日本では未発売だが今回の画質検証のために性格の異なる作品を特別にテストへ使用した

BDZ-EX3000

この2作品のうち前者は4Kカメラで撮影、後者はフィルムを4Kでスキャンして、それぞれフルHDにダウンコンバートしてBD化されている。新旧それぞれアプローチは異なるが、X9200Aシリーズの4K X-Reality PROはソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのダウンコンバート特性をデータベースに組み入れているため、オリジナルに近い再現性が得られる可能性が大きい。今回の画質検証のもう一つの目的はそこにある。

データベース型複数枚超解像処理のためのデータベースも進化

『アメイジング・スパイダーマン』はピーターがコナーズ博士と出会うシーンを見た。4Kオリジナル映像は人物と背景の自然な遠近感に感嘆しつつ、実験装置の精密な仕上げなど、テクスチャー描写のきめ細かさにも目を奪われる。隅々までチリひとつないクリーンな空間をいかにもそれらしく再現するのは4K撮影ならではの強みで、この場面ではその透明感が圧倒的なリアリティを生んでいる。

同じ場面をBDで再生すると、見慣れたフルHD映像に比べて明らかに見通しが利き、奥行きの深い映像を見せる。隣に映し出されている4Kオリジナル映像との差はごく僅かで、画面に近付いたときに輪郭部分が僅かに太くなる程度にとどまっていた。予備知識がないと判別が難しいほどの差で、オリジナルとアップコンバート映像の違いよりもアップコンバートとフルHD映像の差の方がずっと大きい。

『タクシードライバー』はトラヴィスがベッツィーに目を留める場面からナイトシーンに切り替わる部分を見た。4Kダイレクトはフィルムの濃密なグラデーションを忠実に引き出し、フィルムグレインの見え具合は劇場のスクリーンを彷彿とさせる粒状感がある。X9200Aシリーズは階調表現と色調を忠実に再現しつつ、グレインノイズはオリジナルよりも若干抑えた印象を受けるが、不自然なほどにS/Nの良い映像にはならない点に感心した。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが採用するダウンコンバートのフィルター特性をそのまま適用しているだけあって、さすがにそのあたりのさじ加減は絶妙である。

「トリルミナス(R)ディスプレイ」の色再現は『The Other Guys(2010年公開)』のBDで確認した。深みのある赤と青の純度の高さは一目瞭然で、既存のバックライトを積むテレビと見比べると鮮やかさが2段階ぐらい違う印象を受ける。「Mastered in 4K」プロセスでマスタリングされたBDの場合、この濃密で鮮やかな色をほぼ忠実に再現できるわけで、作り手が狙った映像に大きく近付く。前述の『タクシードライバー』もそうだが、新作だけでなく旧作でも効果は大きい。BDの画質改善を次のステップに進める大きな一歩として注目したい。

本機は「4K対応テレビを今買うこと」への解答

4Kのネイティブ信号を本機で見る機会はいまのところ限られているが、今後数年の間にその状況は一変する可能性が大きい。すでに映像製作の現場でフルHDから4Kへの移行が進んでいることはよく知られているし、映画やCMの撮影には4Kカメラが急速に浸透し始めており、その多くはフルHDに変換された映像ですでに家庭にも届けられているのだ。

4Kのオリジナル映像は映画館で実際に見られるが、いずれ放送などいろいろな家庭用メディアで私たちの目に触れる機会が一気に増えるだろう。そして、それはけっして遠い将来の話ではない。4K仕様のビデオカメラはいまはまだ業務用のみだが、技術進化の速さから見て、家庭用の4Kビデオカメラも遠くない将来に登場することが予想できる。

4K X-Reality PROは地上デジタル放送にも超解像処理とアップスケーリングを施す。X9200Aシリーズではその効果が顕著で、放送受信映像においても既存のフルHDテレビとは一線を画す緻密な映像を再現する。

一番大きな違いは、さまざまな太さの輪郭を精密に描き分け、境界部分ににじみや強調感を感じさせないことで、フルHDに満たない解像度の映像にも関わらず、4Kパネルならではの画素の細かさが確実に伝わってくる。エッジ部分だけでなく平坦部でもノイズが目立つことがなく、遠くまで見通せる透明感の高さも実感することができた。

画面下方にスピーカーを内蔵する機種は画面が大きくなるほど映像と音の中心がずれる現象が強まり、一体感を得るのが難しい。一方、本機は高域ユニットを上下の中心に配置しているため、台詞が画面中央に定位し、発音位置に違和感がない。まさにこれが本来の聴こえ方と納得できる自然なサウンドだ。台詞や効果音の音色がこもらず、音の浸透力が強いのはウーファーに磁性流体を採用して歪みを低減した成果だろう。スピーカーを追加しなくてもハイファイグレードに迫る音を楽しめるテレビがようやく登場した。

スピーカーを画面下でなく左右に配置し、さらにツイーターを中心にしているため映像と音声の一体感が高まる

いま4K対応テレビを選ぶべきかどうか迷っている読者が少なくないと思うが、X9200Aシリーズはそんな疑問に明快な答えを提供する。4Kアップスケーリングのメリットをいますぐ享受しつつ、拡張性と将来性についても明確な方向を示しているからだ。本機の真価を知れば、4K対応テレビをいま選ぶことへの疑問が氷解するに違いない。

>最も身近な4Kネイティブコンテンツであるデジカメ写真を大画面で観る楽しさとは?次回記事は6月13日(木)更新予定!
メニュー
【Part.1】新4K対応ブラビア誕生の意義と技術的特長

【Part.2】レビュー:画質/音質を徹底チェック

【Part.3】レビュー:高精細写真を4Kで楽しむ(6月13日更新予定)

関連記事