HOME > レビュー > 【レビュー】エソテリック「P-02/D-02」の音質を評論家3名が徹底チェック − 開発陣特別対談も!

藤岡誠/山之内正/石原俊がそれぞれの観点から実力に迫る

【レビュー】エソテリック「P-02/D-02」の音質を評論家3名が徹底チェック − 開発陣特別対談も!

公開日 2012/01/18 11:00
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE


昨年、一体型CD/SACDプレーヤーのトップエンド機K-01とK-03を発売し、そのかつてない音楽再生能力により、高い評価を得たエソテリック。本年は、そのKシリーズの思想をさらに前進させたセパレート型のフラグシップ機P-02/D-02を登場させ、2年連続オーディオ銘機賞「金賞」を受賞するという快挙を果たした。そのあくなき音質へのチャレンジ精神と、最先端のテクノロジーを駆使した多彩な機能について、企画・開発に関わったお二人に伺ってみたい。

P-02

D-02

Kシリーズ開発の手法やテクノロジーをベースにして
セパレートにしか成しえない製品づくりを目指した


ーー今回のフラグシップ機の開発の意図をお聞かせ下さい。

加藤 音楽性とオーディオの関係は一番バランスとして難しいところだと思うんですね。エソテリックというブランドとして、音楽性というところをいかに追求していくか、それに加えてオーディオだからこそ得られる快楽をどう表現するか。あまりオーディオに寄ってはだめだし、聴いていて心地良いだけでもだめ。どういう塩梅に持ってくるべきか、ということに気をつけました。

本機開発のリーダーであるティアック(株)音響機器事業部 開発部 副部長の加藤徹也氏

昨年高い評価を頂いたK-01、K-03に比べるとオーディオよりに寄せてきました。ただし音楽は音楽として楽しめ、感動できる、という点はきっちり狙っています。

町田 Kシリーズは音楽的にとてもしなやかになったということで、いままでエソテリックにない路線でした。それが、評価を頂きましたね。

エソテリック(株)販売部 担当マネージャー 町田裕之氏

いままで、どちらかというと水墨画のような、きっちりと線を出してはっきりと描くというのが我々の特徴でしたが、それにもう少し温度感が欲しいなということで、それを上手く取り入れたのがKシリーズだったと思います。さらにセパレート機となると、オーディオ的な解像度やフォーカス、そういったものもより求められるだろうと考え、よりディテールにこだわりつつ開発を進めてきました。

加藤 今までのエソテリックというと、どうしても音が硬いと、言われてきました。柔らからず硬からず、しなやかな感じを残しつつ、細やかなところもきっちり出していきたい。それが意図ですね。

ーーまとめあげるには相当な苦労があったと思いますが…

加藤 大きなポイントは、35bit分解能のDAC部ですね。この機能は、正直にいうと「搭載できたら、搭載しよう」という考えでした。実際に試してみて音質的に必ずしも好ましい方向に行くとは限らない場合も現状あるんです。なので、まずチャレンジして、良いものになるか、聴いてみないと分からない部分があって(笑)。今回はでき上がってから聴いて、ホッとしたというのが正直なところです。あー、やって良かった、と。

町田 フラグシップですので、とにかく音質が一番。成果が出ない場合もあるので、その辺をいかに上手くまとめ上げるかというところで加藤も苦労して、毎日試聴室に詰めていました。

加藤 そうですよね。各技術的要素ができあがって終わりではなくて、できがったものを評価して、取捨選択しながらまとめていくというのが、私の仕事です。

対談の様子

ーー 一体型とセパレートの難しさというのは何処にあるんでしょうか?

加藤 一体型は1台の中できちんとある形にまとまってさえいれば良い。セパレートは2つに分かれているので、場合によっては、それぞれの機器がとんでもなく歪んだものにでき上がる場合があるんですよ。トランスポートはすごく尖がった音がするんだけど、DACは丸い音がするから、組み合わせると中和されてちょうど良い音になるとか。

けれどもお客様の中には、トランスポートだけやDACだけという方がいらっしゃるので、個々が極端ではだめなんです。P-02を作りながら、既存機種のD-03やD-01につないで確認する、といった検証をしたり。新しく作ったものの素性がどの辺にあるのか、どのような部分が良さなのかを見極めながら、音をまとめて行く作業が、大変でしたね。

町田 一体型では入りきらなかったものがありますので、それらを投入する。物量が上がることによるメリットは、セパレート型には絶対あると思いますね。

加藤 35bitといういままでよりも、もっと有利な点を活かせる伝送方式がないといけない。そこで、前から構想はしていた新しいES-LINK3を今回採用しました。

町田 広帯域を伝送してあげないと新しいDACの性能が活かしきれないので、従来の24bitから一気に倍まで増やしてしまった。

加藤 通常8個のDAコンバーターを使った場合、8人のDACに同じ値を教えて、8人が同じことを頑張ってやっています。それを横に並べてみたり縦に並べてみたりしながら、いわゆるパラレルだとか、ディファレンシャルなどを組み合わせながら電気的なノイズを打ち消し合うなどの工夫をこれまで色々やってきたんです。

それに対して今回は、明らかに数値として32bitを超える部分というのを表現してみたいとい考えました。例えば8人いて8人が「1」と言ったら「1」でしょう。じゃあ8人のうち7人が「0」で、一人だけ「1」と言ったら8分の1が表せませんかと考えました。それを上手く使っていくと、8人分のDACを使うと8倍分解能が細かいものが表現できることになります。

町田 通常は同じデータを入力するんですけど、新しい技術というのはひとつひとつにデータの流し方を変えてやるということです。ひとつのDACには「1」、他のDACには「0」という信号を入力すると、と平均化した後で8分の1となる。2つに「1」で残りの6つに「0」を入れると4分の1になる。という形で8分の1から8分の8まで、通常の32bitの8倍の解像度が表現できるというのが35bitテクノロジーの基本的なコンセプトです。

D-02が採用した『35bitD/Aプロセッシング(特許出願中)』でのイメージ。32bitDACデバイスを複数個組み合わせることで、35bitの高解像度でPCM信号をアナログ信号へ変換するアルゴリズム

ーー32bitと35bitの違いというのは大きいものなんですか?

加藤 24bitに対して32bitというのが8bit足されているので256倍。それに対してさらに8倍ですと、24bitに対して2,048倍の解像度という細かさです。

町田 カタログの模式図も本当は24bitに対する比較を入れたかったんですけど細かすぎて書けなかった。それだけの解像度が出るんですけど、それ以外にもあるんですよね。

加藤 機器の中で計算して出てくるデータの分解能は、回路の規模を大きくしていけばいくらでも桁が上がっていくんです。しかし最終的なアナログ出力のスペックが、きっちり35bit分取れていますかというと実は取れていない。けれども、それを出力に練り込んでいった時、耳で聴いた感じは全然違う。聴感上は確実に分かる。これが今回の大きな特徴です。

次ページ各機種ごとの詳細な特徴も丁寧に解説

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク