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新コーデック「aptX Adaptive」標準搭載に

クアルコム「Snapdragon 855」詳報。モバイルの5G/オーディオ/ビジュアル体験が変わる

公開日 2018/12/06 16:18 山本 敦
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画像処理プロセッサー「Spectra 380」は、理論上で最大48MP/30fps(シングルカメラ)、あるいは22MP/30fps(デュアルカメラ)の画素数を持つイメージセンサーから入力された情報を素速く正確に処理できる。「Spectra 380」はさらに、BT.2020の色域、および10bitの色彩表現をサポートしたほか、4K/60p/HDR動画のキャプチャはHDR10に加えて、HDR10+とHLGにも対応する。

モバイルでは初めてHDR10+をサポート。HDR10/HLG/Dolby VisionのHDR技術を全方位にカバーする

SnapdragonシリーズとしてはHEIFのファイルフォーマットも初めてサポートした。静止画の本体データに付随する、深度・マスキング、AI画像解析によるエフェクト情報などをひも付けながら、なおかつファイルのデータサイズを抑えて記録ができるところが特徴だ。動画は高効率なHEVC/H.265のコーデックによる記録に対応する。

Snapdragonシリーズとして初めてHEIFフォーマットに対応

従来はDSPの中で処理していた動画撮影時の深度解析、オブジェクト解析など頻繁に行うコンピュータ画像解析に関わる処理を、「Spectra 380」の中に独立したハードウェアチップとして切り出して配置したことにより、処理性能の向上と最大1/4の省電力化が図られている。

新たなDSP「Hexagon 690」では画像解析に関わる処理負担を減らして、音声処理などを含むオンデバイスAIのパフォーマンスを高める方向に振り分けた。結果としてSnapdragon 855シリーズは、Snapdragon 845に比べてシステム全体で約20%の低消費電力化を実現しているという。

さらにクアルコム独自設計によるGPU「Aderno 640」は、現行世代との比較で約20%、画像レンダリング処理の性能向上を引き出した。4K/HDR動画の再生はハードウェアアクセラレータを組み込むことにより、消費電力をソフトウェアデコード処理を行った場合と比べて約1/7程度にまで抑え込んでいる。

CPUとDSP、GPUを組み合わせたオンデバイスAIプラットフォーム「Qualcomm Artificial Intelligence Engine」は第4世代に進化を遂げた。Snapdragon 845シリーズと比較した場合、性能が約3倍上がっているという。毎秒あたりの演算処理回数は7兆にまで到達する。

Snapdragon 855のCPUは7兆/秒の演算処理をこなせる

Snapdragon 855のオンデバイスAIに関連する説明を担当した、クアルコムテクノロジーズのProduct Management Senior DirectorのGary Brotman氏は、「ライバル企業が開発するAndroid OS対応SoCのオンデバイスAI処理と比較して、約2倍のパフォーマンスに到達した。その他、オンデバイスAIの上で実現するアプリケーションやサービスに対する柔軟なソリューションが提供できるところが、長年の経験を培ってきたSnapdragonシリーズの強みだ」と壇上で述べている。

クアルコムテクノロジーズのGary Brotman氏

このプロセッサーとGPUやDSPの組み合わせによって、機械学習の技術を活かした高度なAI解析を加えた動画・静止画の撮影が実現する。一例として、昨今のスマホが静止画撮影のプレミアム機能として搭載する、被写体の背景に「ボケ味」を加える機能を動画撮影でも可能にしたり、またその背景を実際の風景と異なる画像に差し替えてキャプチャできる機能などが提案された。

AI画像解析の強化により動画撮影時にもボケ味効果が演出できる

他にも、顔認識による生体認証システムなどセキュリティ方面の機能を高めることにも活かせる。高性能なオンデバイスAIを音声処理の方向に活かした事例として、中国のElevoc社が開発した、ビデオ通話時に効果を発揮するノイズリダクション機能も紹介された。イベント会場の展示スペースでは、この技術を組み込んだプロトタイプ端末を使って、遠くの賑やかな場所にいる通話相手の声が明瞭に聞けるデモンストレーションが体験できた。

この機能についても、従来はDSPに組み込まれていたノイズキャンセリング機能を「Voice Assistant Accelerator」と呼ぶハードウェアICチップに切り出したことで高い性能が得られるようになった、とクアルコムのスタッフが説明してくれた。SoC全体の消費電力、パフォーマンスの最適化にも貢献しているという。

DSPからAIや音声UIに関わる処理を切り出した「Voice Assistant Accelerator」を搭載したことにより、オーディオ系の処理も性能の向上と消費電力の最適化が図られる

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