独自技術の「蓄冷材」を幅広い分野へ展開

シャープ、ベンチャー発の新規事業「TEKION LAB」を50億円規模へ。異業種とのコラボも推進

Senka21編集部 徳田ゆかり
2019年09月13日
シャープは、同社の新規事業である「TEKION LAB(テキオン ラボ)」および、関連する新製品などについての説明会を開催した。

TEKION LABにて開発中の製品群

これまでの取り組みについて、同社Smart Appliances&Solutions事業本部 副本部長の田村友樹氏が説明。「そもそもは、インドネシアの駐在員が現地で停電後に冷蔵庫の中の食品を食べお腹を壊したのがきっかけ。停電の多い地域向けに5℃で凍り10℃で融ける蓄冷材を2014年に開発、実用化したことから、蓄冷剤マーケットを模索する活動として立ち上げた社内ベンチャーがTEKION LAB」だと語る。

シャープ(株)Smart Appliances&Solutions事業本部 副本部長の田村友樹氏


TEKIONの名前の由来は、暮らしの中のちょうど良い温度。「たとえばお酒もただ冷やせばいいというのでなく、ワインとビールでは適温が違う。マイナスの温度でもプラスの温度でもそれぞれにちょうど良い温度を自由に設計できる、そんな蓄冷材のブランドを “TEKION” としました」。その技術のベースとなっているのは、シャープのコア技術である液晶。「液晶とは、個体と液体の中間の状態。寒冷地でも液晶が凍らないようにする技術が、さまざまな温度で溶け始める氷の蓄冷材に転用された」という。


TEKION LABは2017年にクラウドファンディングサービス「Makuake」にて、−2℃の日本酒「冬単衣」を楽しむ保冷バッグ×日本酒プロジェクトを発信、開始1ヶ月を待たずに目標であった3,000本を達成。この成功事例からさらなる展開を図り、社内ベンチャーでスタートした取り組みがこのほどシャープブランドの第一弾「TEKION COOLER」として商品化された。

9/19発売の「TEKION COOLER」


TEKION COOLERは、蓄冷材を活用して-2℃の新感覚飲料を楽しめるクーラーバッグで、9月19日より発売(オープン価格、市場想定価格は税抜5,000円前後)。蓄冷材は-24℃から+28℃で溶け始める氷の状態で蓄冷できる特長をもち、冷蔵庫に11時間入れると-11℃になる。冷蔵庫で冷やした飲み物をTEKION COOLERに入れると約30分で-2℃になり、氷点下を約2時間キープするという。「-2℃は、日本酒の酵母が活動しない温度。酵母が活性化すると入れ物から酒が吹き出してしまう状態になるが、TEKION COOLERでこれを防ぎ安定した状態にすることができる」。


シャープではさらに、こうした独自のTEKION技術を食に限らずスポーツ、美容、医療、物流などさまざまな分野に活用し、商品化を進めていく構え。「我々の知見がない分野で、B to Bの異業種コラボを図り、本格事業展開を開始する」とし、その展開の一端も紹介された。


スポーツ分野への展開では、夏場などの暑熱対策にフォーカス。スポーツ分野のアドバイザーである株式会社ウィンゲート 代表取締役 の遠山健太氏と共同で開発を行なっている。遠山氏は「暑熱対策としてプレクーリング(事前冷却)が、深部の体温を下げ暑い中でもパフォーマンスを維持するのに効果的だとされている。またこの考え方を浸透させることで、ご高齢の方や子供さんなどが熱中症の犠牲になるのを防ぐことにつながる」と期待を寄せる。

(株)ウィンゲート 代表取締役 の遠山健太氏


蓄冷材と新規製品について、シャープ株式会社研究開発技術本部 飲料・エネルギー技術研究所 課長 TEKION LAB CEO 兼 CTO 内海夕香氏が説明した。シャープの蓄冷材の主原料は水。「水は、氷から水にかわる時0℃を一定に保つ蓄冷材の役割を果たす。その基本特性をもとに、一定に保つ温度を変化させることで蓄冷材を開発している」。一定に保てる温度として設定できるのは-24℃から+28℃だという。


シャープ(株)研究開発技術本部 飲料・エネルギー技術研究所 課長 TEKION LAB CEO 兼 CTO 内海夕香氏

保てる温度-11℃の蓄冷材を使い、シャープとウィンゲートが共同開発しているのは「TEKION アイススラリーBOX」。アイススラリーとは、小さな氷の粒が混じったシャーベット状の飲料で、これを摂取すると深部体温の上昇を抑制し体調を維持、気分がリフレッシュし運動パフォーマンスが維持されるという。TEKION アイススラリーBOXは、アイススラリーをつくれる。-11℃の蓄冷材をセットし、ここに冷蔵庫で冷やした飲料を入れ4時間静置したのちに振れば飲料がスラリー化する。Jリーグ セレッソ大阪や、プロ野球 楽天イーグルスで実証実験中。

「TEKION アイススラリーBOX」

TEKION アイススラリーBOXの蓄冷材






さらに、シャープとウィンゲート、およびデサントジャパン株式会社が共同開発しているのは、「TEKION 暑熱対策グローブ」。融解温度+12℃の蓄冷材が入るポケットが手のひら側についたグローブである。手のひらは特殊な熱放散構造をもち、ここを冷やすと深部体温の上昇を抑制するという。氷や保冷剤などで冷やすと温度が下がりすぎて痛みが感じられるが、シャープの蓄冷材を用いると快適な冷たさを保持できるという。


TEKION 暑熱対策グローブ」


手のひらは特殊な熱放散構造をもつ


デサントジャパン株式会社 第1部門 デサントマーケティング部 部長の小林俊夫氏は、「氷水の入ったバケツやペットボトルを握って手のひらを冷やすのが一般的だが、今回は新しいソリューション。グローブをつけたままスポーツもでき非常に画期的。サッカーや野球、ランニングへの効果を期待しマラソン大会などで使っていくが、今後はゴルフ、またスポーツ観戦や屋外レジャー、さらに学童やご高齢者への熱中症対策など幅広く活用の場を広げたい」と意気込む。

デサントジャパン(株)第1部門 デサントマーケティング部 部長の小林俊夫氏

「TEKION アイススラリーBOX」と「TEKION 暑熱対策グローブ」は、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた同年春の商品化が期待されている。また、TEKION LABは今後事業を拡大。学校や通勤・通学、外での作業などへの活用、美容や医療への展開、そしてグローバルでの展開も視野に入れる。異業種とのコラボレーションもさらに推進し、2025年に50億円規模を目指すとの目標が示された。

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