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シャープと共同実験

ソフトバンク、5Gでバスケ国際試合を8Kマルチアングルライブ配信に成功

公開日 2019/08/26 10:00 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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■モバイル端末でYouTubeのように8K映像が楽しめる

ソフトバンクは8月23日、シャープと協力して、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市中央区)で開催されたバスケットボールの国際試合「ドイツ対チュニジア戦」の8K高精細映像を、第5世代移動通信システム(5G)を活用して、高精細な8K映像でマルチアングルライブ配信する実験に成功した。

2台の8Kカムコーダーで撮影したさいたまスーパーアリーナの試合映像を、ソフトバンクの光回線と5Gネットワークを通し、ソフトバンク「5G×IoT Studio」お台場ラボ3台に設置した高精細8Kモニターへリアルタイム伝送。左右のディスプレイの映像は同じもの

本実験では、さいたまスーパーアリーナのコートサイドに、全体を俯瞰して撮影するものと選手を追って撮影するものとの2台の8Kカムコーダー(シャープ「8C-B60」)を設置。撮影するバスケットボールの試合のマルチアングル映像と同時収録した7.1ch音声を、ソフトバンクの光回線と5Gネットワークを通し、ソフトバンク「5G×IoT Studio」お台場ラボ(東京都江東区)へリアルタイムに伝送し、高精細8Kモニター(シャープ「LV-7000」)を接続したパソコンで視聴することに成功したもの。

今回の伝送実験の構成。5Gの検証環境は28GHzの周波数帯を使用、帯域幅は400MHz

ソフトバンク(株)先端技術開発本部 先端事業企画部・山田大輔氏は「YouTubeを視聴するように、モバイルデバイスやPC、タブレットを使用して、HTTP形式による8K映像を、WEBブラウザ上から見られるかを検証するもの」と狙いを説明する。

ソフトバンク(株)先端技術開発本部 先端事業企画部・山田大輔氏

インターネットでの映像配信方式には、プログレッシブダウンロード方式とストリーミング方式があるが、今回の実験では、ストリーミング方式の「MPEG-DASH」(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)を採用。MPEG-DASH は、HTTPで動画や音声のストリーミングを行うためのISO国際標準規格で、視聴するデバイスやデータ量、ネットの混雑状況などの視聴環境に応じて、2K、4K、8Kなど最適なセグメントを自動で選択して受信できる特徴を備える。

MPEG-DASH方式の採用により、汎用ブラウザを搭載したパソコンなどで容易に視聴することを可能とする

試合映像は、ソフトバンクの通信ネットワーク内に設置したコンテンツ配信サーバーを経由してMPEG-DASHに変換され、ウェブブラウザーから視聴するデバイスにストリーミング配信された。MPEG-DASH を採用したことで、マルチアングルのライブ伝送で必須となるストリーミングデータ(動画・音声)の同期性を確保するとともに、映像再生に必要な専用機器を介さず、汎用ブラウザを搭載したパソコンなどから容易に視聴することができる。より安価な8K伝送ソリューションをユーザーに提供することが可能となる。

コンテンツ配信サーバーをインターネット環境ではなく、ソフトバンクの通信ネットワーク内に設置した理由について、「配信サーバーをインターネット内に配置すると、インターネット環境がボトルネックとなり、リアルタイムの配信が難しくなることが予想される。そこで、通信ネットワーク内に配信サーバーを配置すれば、インターネット環境に影響されないため、よりリアルタイムな配信が可能となる」と説明した。

■パブリックビューイング環境を容易に実現

モバイルデバイスでの視聴とともに、今回の実験では「パブリックビューイングでの活用を想定し、マルチ画面を同期することを意識した」とポイントを解説。前記のように、8K IPストリーミング3本(2台の8Kカメラで3つの映像を配信)と7.1chマイクによる音声ストリーミングを同期して配信した。なお、遅延はこの同期に約1秒、解凍にも時間を要するなど、さいたまスーパーアリーナからソフトバンク「5G×IoT Studio」お台場ラボまでのend to endで約10秒になるという。

さいたまスーパーアリーナのコートサイドに、全体を俯瞰して撮影するものと選手を追って撮影するものとの2台の8Kカムコーダー(シャープ「8C-B60」)を設置

パブリックビューイングという観点からは、8K映像に加え、シャープが開発中の22.2ch対応立体音場再生スピーカーにより立体音響を実現、遠隔地にいても臨場感ある試合映像を体験できることが確認されたことも見逃せないポイントのひとつ。「受信端末さえあれば、今後、こうしたパブリックビューイングがどこでもできるようになってくる」と展望を示した。

今回はコンテンツ配信サーバーを経由してストリーミング配信が行われたが、今後、解析AIや映像編集サーバーなどモバイルエッジコンピューティング(MEC)機能を拡張することで、さらなる発展が期待できるという。「映像データを、画像解析を使ってお届けしたり、映像処理したものを制作会社にお渡ししたり、今回はモバイル端末向けだったが、それ以外の用途にも拡げられる」と拡張性をアピール。制作会社がリアルタイムに映像編集できるアプリケーションの開発を進められている。

モバイルデバイスで視聴するユーザーにとって、8Kはオーバースペックではないかとの見方もされるが、この点に対してシャープ(株)8K Lab エグゼクティブディレクター・新本真史氏は「視聴環境はさまざまであり、4K、2Kのスマホやタブレットもある。しかし、コンテンツサーバーに8Kの映像があがっていることで、8Kが必要なところには8K、2Kが必要なところには2Kといった対応が可能となる。また、8Kだから映像から切り出して拡大したものを高画質で楽しむこともできる」と新たな可能性を訴えた。

シャープ(株)8K Lab エグゼクティブディレクター・新本真史氏

なお、試合会場のさいたまスーパーアリーナでは、“スマートアリーナ化”を目指した実験も併せて行われた。さまざまなIoTデバイスを活用し、VR・自由視点・ARホログラムなどの5Gデモ体験ブースや顔認証ゲートが設けられた。

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