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ニコ動アンケートの結果も説明

「BD/DAP課金の早期実現を」− 著作権利者団体が補償金制度の見直し訴え

公開日 2009/02/05 21:36 Phile-web編集部
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椎名氏が両宣言を読み上げたのに続いて、菅原氏がマイクを手にし、昨年12月19日から21日まで「ニコニコ動画」で行った実態調査の結果を発表した。

日本音楽著作権協会 菅原瑞夫氏

これによると、私的録音に用いる主な機器は72.4%がパソコンであること、回答者の83.4%がパソコンに収録された楽曲をさらにコピーすることなどが分かったという。さらに、録音したデータを保存するメディアも主にパソコンのHDDが使用されていることなども明かされた。

また、楽曲をパソコンからさらにコピーすると回答したユーザーは、そのコピー先として47.1%がDAPを選んでいることも発表したほか、得られた回答から独自の計算で推計した、30代までのユーザーがパソコンに保有している楽曲は239億曲超に上ることも説明した。

菅原氏は、このことに関して「数字には大変びっくりした」と語るとともに、「現在は補償金制度の対象外である機器で音楽を聴いているユーザーが非常に多いということだ」と説明。DAPも制度の対象にするべきだという主張を改めて述べた。

アンケートでは、パソコンやDAPへの補償金の支払いに対して、ユーザーから一定の理解が得られたことも分かった。それによれば、パソコンやDAPに対する補償金を、「支払うべき」という回答が14.3%、「支払っても良いが払う金額による」という回答が49.4%集まり、6割超のユーザーが補償金支払いに理解を示したという。

この結果を受けて、菅原氏は「“果たしてパソコンで録音する人は存在しているのか”というメーカー側の主張は現実に即していない」と発言。「既に録音の補償金制度は崩壊している」とし、「早急に補償金制度の見直しが必要だと考えている」と改めて主張した。

続いて発言した新藤氏も、自らの立場からブルーレイの補償金制度対象への早期指定を要求。昨年11月にBD機器がDVD機器のシェアを逆転したことに触れ、「現在、新規にプレーヤーやレコーダーを購入するユーザーは、そのほとんどがBDだと思う。それなのにBDが政令指定から抜け落ちているのは現状を反映していないのではないか」と問題提起をした。

日本映画制作者協会 新藤次郎氏

新藤氏は、「我々映画制作者は、作品を作るにあたってコストを負担する。その制作費を回収する唯一の根拠が著作権を持っているということだ」と、クリエーターにとって補償金によってもたらされる利益がいかに重要であるかを改めて説明。

また、新藤氏は「ダビング10導入に際しても、BDが補償金制度の対象に含まれることになるということで権利者として納得した側面もあったが、それが現在まで履行されていない」とも指摘。「今回の案がそのまま施行されることを切に願う」とコメントした。

そして、会見の最後には椎名氏が改めて発言。「私的複製に関する様々な意見を整理して、制度問題を決着する。そしてルールを決めた上でインターネットに向き合っていく必要があるのではないか」と、早急なルール作りの必要性に言及。文化庁など国に対しても「机の下でなく、表立った場所で関係各省庁が話し合って、ナショナルプランを決めて欲しい」と要求し会見を締めくくった。


以下、会見で行われた質疑応答の模様をお届けする。

Q.ブルーレイにかかる補償金は具体的にいくらくらいになるのか。
A.現在、DVDレコーダーについては補償金の算出額が機器価格の1%と決まっている。そして、大半のBDレコーダーにはDVDの録再機能も付いている。ここで現在はDVDについてのみの補償金ということで、価格の何割かの金額の1%という計算をしている。そう考えれば、BDプレーヤー・レコーダーには全て課金されているとも言える。そうなると問題はディスクだが、こちらもディスクの価格の1%が補償金になる。

Q.宣言の中でアナログチューナー非搭載の再生機器に言及していたが、実際にそうした製品が出るような動きがあるのか。
A.シャープから出ているらしいとの話も聞いたが、我々では実際には分かっていない。どうやら、今後デジタル放送の推進ということで多数出てくるようだ。
メーカー側は「録画補償金はアナログ放送のデジタル録画に対して払っているものだ」と主張している。コピーフリーだったアナログ放送が、デジタル放送ではコピーワンスになってしまったからということらしい。このことから、アナログチューナーが付かなくなれば補償金を払う必要がないという主張がメーカーにある。しかし、今回の指定というのはダビング10に関連して環境整備が行われたもの。皆さんも分かる通り、BDにアナログ録画をする人はいない。メーカー側の主張は無理があるのではないか。

Q.JEITAの亀井氏は録画に関する補償を2011年には廃止するべきとの見解を示している。その中で、デジタル放送ならコントロールが効くようになるからという意見があったが、前述のアナログチューナー非搭載機などの話はそういう流れから出てきたのか。それとも別のものなのか。
A.それは私達には分からない。ただ、調整の過程でアナログに限定するということに関する様々な付帯的な制約を政府案に付けたいという話があったため、今回の改正案公表まで時間がかかったようだ。

Q.「補償金制度の抜本的な見直し」について具体的にはどんなことを考えているのか。
A.例えば、メーカー側は「DRMで課金ができる」と説明しているが、我々は技術的なことが詳しく分からないのでその実現性について判断しにくい。DRM課金が実現するとしても、それが達成される時点までは補償金が必要だと考えている。現在、補償金の対象になっているのはMDなど、博物館に飾られるようなレベルのものだけで、権利者に還元される補償金が激減している。実態に合った機器に補償金をかけて、権利者に補償金が還元されるサイクルを再構築したいというのが我々の主張だ。

Q.「20XX年にはDRMが普及し補償金が不要になる」という文化庁のビジョンはもう受け入れないということなのか。
A.我々が実施した調査結果を見ても、録音などには基本的にパソコンが使われている。パソコンについては話が先鋭化してしまうので文化庁が避けた部分もあると思うのだが、パソコンの話をしないと駄目だと思う。よく、「インターネットが様々なビジネスモデルを変える」という話があるが、インターネットの前にまずパソコンがビジネスモデルを変えているのではないか。パソコンには汎用性もあり、パソコンの価格全体を補償金の対象にするという方法では無理があると思うが、何らかの形でそこを補足してルールとシステムを作っていく必要があるだろう。文化庁提案についてはそういう評価をしている。(椎名氏)

昨年の私的録音録画小委員会が、結論を出し切れないまま終結した。それはつまり、文化庁が取りまとめた折衷案というのは残念ながら意味をなしていないということだ。ということは、補償金制度についてもっと突っ込んで、「“私的録音録画ができること”に対してどう考えるか」という点に戻って議論が早急に必要だろうし、そうした点に合った制度が必要だろう。(菅原氏)

Q.それは、ここからまた何年か掛けてまたゼロからやっていくという認識でよいのか。
A.あまりよろしくはないのだが(笑)、やっていかなければしょうがないのかなと思っている。また、我々の「カルチャーファースト」という考え方をうまく伝え切れていない部分もあるだろう。この問題は、もう後がない状況まできている。これは根幹に関わる問題だと、我々だけでなくメーカー側も考えていることだろう。解決の手法について著しく利害が対決してしまっているが、問題解決に向けて権利者側の現状から頑張っていきたい。

Q.文化庁が、補償金制度に関しては小委員会ではなく新しい枠組での議論を提案しているが、権利者側としてはどういった枠組みを望んでいるのか。
A.とにかく問題が解決できる枠組を望んでいる。メーカー側はJEITAという組織を作り、補償金制度を廃止するミッションを帯びた専門家が理論武装して会議に出てくる。そして我々も我々で理論武装をしていく。そうした対立を2年間続けてきて、我々も徒労感を感じている。そうした点を踏まえると、裁量権のある人が席について物事を決めていく必要があるのではないか。それが具体体にどういう形なのかはまだ分からないが、そこは文化庁が考えるだろう。

Q.iPodやDAPについてはどう考えているのか。
A.一律の割合で補償金を取るのでなく、録音録画に関係する度合いに応じてキメ細かく補償金を設定できればいいのでないか。現在、我々の主張については対象機器の拡大という点がことさら強調されがちだ。語弊のある言い方だが、広くまんべんなく、薄く平らにしていくことが必要なのでなないだろうか。一部に偏った、ピーキーな現在のあり方を是正していくべきだ。そうすればiPodやパソコンも対象になってくるだろう。

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