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【特別企画】SACD/MQA CD/ネットワーク再生に対応する多機能プレーヤー

「一番の魅力は音が良いこと」。テクニクス初のSACDプレーヤー「SL-G700」の魅力を開発者、評論家、オーディオ誌編集長が語る

2020/03/13 構成:ファイルウェブ編集部
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SL-G700の一番の魅力は「音が良い」こと

伊佐山DACにはAK4497をデュアルモノラル構成で採用していたり、クロックはリファレンスクラスで採用している「Battery Driven Clock Generator」を搭載していたりと、音質面でもテクニクスの技術が結集した製品になっていますよね。

オーディオアクセサリー誌の編集長を務める伊佐山勝則

井谷クロックに関しては、話がけっこう遡ります。1989年にテクニクスがリリースしたデジタルプロセッサー「SH-X1000」に搭載していた1bit DAC「MASH」の経験が大きいですね。なにせ1bitなので、クロックの精度の影響がモロに音質に影響するんです。

そこからクロックの精度というものを強く意識するようになりまして、リファレンスクラス「R1」で開発した「Battery Driven Clock Generator」をベースに、バージョンアップを重ね続けてきています。今では波形やジッターメーターを見てもなかなか判別つかないレベルまで精度が上がって来ているのですが、それでもズレがあれば音質に確実に現れてくるので、本当に奥が深い世界です。

鈴木多機能なうえ、テクニクスのこれまでの技術も結集しています。SL-G700は、ある意味ではライター泣かせの、非常に書きどころの多い製品なんですが(笑)、私が考える一番の魅力は「音が良い」ということなんです。

デジタルプレーヤーというものは、特性を良くしたりジッターを少なくしたりで、ある程度のレベルまではすぐに到達できます。ですが、それが音楽を聴くのにふさわしい音かというと、どこかつまらないサウンドだったりする。でもSL-G700の音は生々しくて、リアルで、聴きごたえがある。

僕の感覚としては、テクニクスは2018年に発表したアナログプレーヤー「SL-1000R」で一皮剥けたと思っているんです。SL-1000Rは、世界のハイエンドプレーヤーと比較しても情報量が多く、実在感が高い空間表現力を持っていると思うのですが、今回、デジタルプレーヤーでも、ついにそういう方向に舵が切れた。しかもそれを30万円以下の価格帯で実現したのは、すごいことだと思います。

井谷まさに、SL-1000Rを作りあげたことは、社内でも大きな出来事でした。SL-1000Rは小川(テクニクス推進事業室室長の小川理子氏)が「最高のサウンド」と評した製品で、「あれを原器にして、あの音に学んでほしい」と言っているんです。

特に“原器”の影響が大きかったのが、最終的な音の磨き上げの時ですね。例えばネジの締め方のバランスのような、細かい調整を一つひとつ積み上げることで磨き上げが行われたのですが、その時の目指す場所になっていたのが、まさにSL-1000Rの音でした。

鈴木氏が絶賛するSL-G700のサウンドは、同社のアナログプレーヤー「SL-1000R」を原器として磨かれたという

伊佐山言わばSL-1000Rの音は “神の音” なんですね。そうすると、SL-1000R以降はその指標があるので、製品も作りやすくなったのでしょうか?

井谷それはあると思います。自分たちの中でも、本当にやりたかったことはこういうことなんだな、と方向性が定まったような感覚があります。

鈴木今の話を聞いて、すごく納得がいきました。先ほども言いましたけど、デジタルプレーヤーにおいて、音楽として硬い・柔らかい、暖かい・冷たいといった音の軸に関する話は、これまであまりされてきませんでした。その部分に力を注いでいそうだな、と感じていましたが、なるほど、SL-1000Rの音を目標としていたんですね。

伊佐山ヘッドホン出力も、アナログ回路から独立させて「JENO Engine」を専用回路に使っていたりと、とにかく細かいところまで凝った作りになっています。本当に語るところだらけですね。

井谷あと、あまり知られていないことですが、初期設定でフロントのマルチコントロールつまみをメインボリュームにすることができるんです。これは主にヨーロッパのお客様からの「SL-G700とアクティブスピーカーでシステムを構築したい」という声にお応えし、実装した機能です。

伊佐山最近は日本でもアクティブスピーカーを使ってシステムを組む方が増えてきているので、この機能を有難いと感じる方は多いと思います。

鈴木やっぱり多機能というのは嬉しいですよね。自分が持っているライブラリを余すことなく再生することができますし、これを機に「SACDも聴いてみようかな」「MQAもやってみよう」「ネットワークも試してみるか」と、新たに挑戦する機会にもなりますし。色んな人が「そうそう、こういうものが欲しかったんだよ」って思うことは間違い無いです。

多機能というと音が悪いんじゃないか、などとお感じになる方もいるかもしれませんが、このプレーヤーにおいて「多機能である」ことは、あくまで「買わない理由にならない」だけなんです。じゃあ、なにが「買う理由」になるかと言えば、それは「音が良い」こと。デジタルプレーヤーでこれだけ生々しく、表現力のあるサウンドを実現し、しかも価格を28万円に抑えているというのは本当にすごいことだと思います。ぜひ多くの方に、本機の魅力を体験してもらいたいですね。

(協力:パナソニック)

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