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ハイレゾとの両輪で臨場感を追求

<CES>ソニー提唱の「360 Reality Audio」、何がすごくてどう楽しめる? 特徴を開発者に聞いた

公開日 2019/01/09 14:09 山本 敦
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CES 2019会場で360 Reality Audioを体験した

CES 2019の会場では、13個のスピーカーによるオープンエアなマルチチャンネル環境と、ヘッドホン「MDR-Z7M2」によるモバイルリスニング環境で実際に360 Reality Audioを体験した。インストゥルメンタルとボーカルの楽曲を1曲ずつ試聴し、ヘッドホン環境のデモでは先述の通り、耳画像を撮影する代わりHRTFをマイクで測定してキャリブレーションを行っている。


ヘッドホン再生のデモンストレーションは体験者の耳に合わせた音響特性を特殊なマイクを使って計測する方法を採った。商用サービスの段階ではソニーのヘッドホン・イヤホンを使う場合は耳の写真を撮ってからパーソナライズされたプロファイルを受け取って、音楽配信アプリに読み込む形になる
オブジェクトの定位感に多少のばらつきは散見されるものの、音場の広がりと奥行きの見通しの豊かさは十分に感じられる出来栄えだった。本サービスが開始されるまでさらに細部を煮詰めていけば、ソニーの音楽ビジネスの柱に育つ可能性を秘めている技術であると実感した。

一体型のコンセプトモデルについても体験したのだが、こちらはまだ初期段階のプロトタイプであったことと、リスニングルームの条件があまりよくなかったことから評価については別の機会に譲りたいと思う。

7つのユニットを搭載するワンボックススピーカーのプロトタイプによるデモンストレーションも実施された。こちらはコンシューマー向けーハードウェアの展開例をわかりやすくするために開発されたコンセプトモデル。ソニーやその他のブランドから実現するのか楽しみだ

今後どんなコンテンツが期待できそうか

知念氏は360 Reality Audioが「音場の豊かさ」を高める事に注力した技術であると繰り返し説いていた。音楽が演奏された瞬間の空気、熱気をそのままにキャプチャしてリスナーに伝えるというゴールはハイレゾと同じだが、たどり着くための道筋が異なっていると言えるだろう。立体音響の技術でありながら、 “Reality=臨場感” にウェイトを置いたのは正解だと思う。

360 Reality Audioを体験すると、多くの音楽ファンが「より良質な音楽体験」に関心を持つはずだ。それが一般的なオーディオ用ヘッドホンとスマホの手頃な組み合わせによって体験できるのであればさらに理想的だ。360 Reality Audioがきっかけになって、ハイレゾに関心を持つ若い音楽ファンも今よりさらに増えるかもしれない。

360 Reality Audioの効果にマッチするコンテンツにはどんなものがあるだろうか。今回のCESで体験した音楽ライブももちろん良いのだが、コンサートやライブの録音からいったん離れて、例えば普通のスタジオ録音の演奏を360 Reality Audioで聴いてみてもまた、アーティストにぐっと近づいて音楽に触れるような斬新な体験が得られるに違いない。

知念氏によると、当初こそ配置できるオブジェクト数は最大24個と規定される格好となったが、MPEG-H 3D Audioのフォーマットそのものに「限界」は無く、機器の性能やインターネットの配信技術の発展次第で、体験はさらにリッチ化できるという。360 Reality Audioの対応機器についてはサウンドバーやスマートテレビにまで広がる可能性もある。

近年、日本国内でも光通信による10Gbpsの固定インターネット回線サービスの提供がいくつかのサービスプロバイダで始まっており、2020年には次世代高速通信 5Gの本格商用化が予定されている。こうした高速回線と共に、より大容量のデータを扱える音楽ストリーミングサービスが普及すれば、その頃には360 Reality Audioのコンテンツがさらに多様化することだろう。

例えばステージの真ん中に立って、乃木坂46のメンバーにぐるりと囲まれて歌を聴くといった感じの、現実にはあり得ない音楽の聴き方が可能になるかもしれない。360 Reality Audioは足もとの下方向にもオブジェクトを配置できるので、水上スキーで駆け抜けたり、飛空挺で空を駆け抜けるダイナミックな体験も実現できそうだ。

音楽の楽しみ方には無限の可能性があることを改めて実感させてくれた360 Reality Audioが、実際にいつ、どのように楽しめるようになるのか首を長くして待ちたい。今後の展開に要注目だ。

(山本 敦)

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