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開発陣にインタビュー

「すべてやり切った」。パナソニック渾身の最上位プレーヤー「UB9000(Japan Limited)」はこうして生まれた

2018/12/08 インタビュー・構成:秋山 真
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−− が、ガチで持ち上げるのがシンドイです……。

Japan Limitedの底板を持つ秋山氏

神園 欧州仕様はシャーシ部分と1.6mm厚の鋼板プレート1枚で構成されていますが、日本仕様はシャーシとプレート×3の4層構造です。底板だけで総重量5.6kgもあります(笑)。黒い塗装も家電製品では珍しい、カチオン電着という方法でやっています。

シャーシとプレート×3の4層構造の底板

−− 高級なオーディオボードを下に敷いているようなものですね。

神園 インシュレーターはハイカーボン鋳鉄のTAOC製ですが、中央に貼ってある滑り止めのゴム素材も特殊です。これはUB9000に合わせて音質的に吟味したものになります。

インシュレーターはハイカーボン鋳鉄のTAOC製

濱野 トップパネルも特徴的です。薄い1枚板では叩いた時にバンバン鳴いてしまって音質に悪影響を及ぼします。ところが天板を厚くし過ぎると、今度は詰まったような音になってしまうのです。そこでUB9000では強度と薄さを併せ持った2層構造を採用しました。このあたりの設計思想はDVD-H2000の頃と変わっていますね。

−− 見た目からは分かりづらいのですが、ドライブを支えるシャーシ部分だけでもメチャクチャ重いですよね。

神園 Japan Limitedでは3層仕様になっているのですが、欧州向けには上下の板金がありません。

濱野 梁の部分も、ただ単にフロントとリアに締結しているだけではダメなんです。下に横方向のベース部分がないと、ねじれに対する剛性が上がりません。

岡崎 こうした細かな積み重ねが最終的にはコストに大きく影響してきます。実は当初、日本仕様と欧州仕様の発売は同時で考えていました。しかしUBZ1の画質・音質を超えるべく各部門が試行錯誤を重ねた結果、発売が年末までずれ込んでしまったというわけです。というか、今も発売に向けて最終追い込みの真っ最中です(汗)。

−− BZT9000以降、プレミアムDIGAの画質が良すぎたが故に、製品ラインナップの上下関係においてもレコーダーとプレーヤーの間でねじれが発生していましたよね。それが今回のUB9000 Japan Limitedでようやく解消したと思います。個人的にも長年パナソニックのフラグシッププレーヤーの登場を待ちわびていたので、今はただただ胸熱です。

濱野宮本 技術チームとしてもやりたいという思いがずっとありました!!

村上 レコーダーとして設計すると、特に音質面で、どうしても構造上の制約が出てしまいます。しかし当社の音響設計チームが最初から専用プレーヤーを作れば、他社製品には絶対負けないというプライドもありました。今回それがようやく証明できたと思います。

−− 小さなUSBパワーコンディショナーひとつとっても、驚くべき効果だったので、あの技術力がフルサイズ機で発揮されるとなると、なおさら凄いですよね。

各種パーツの選定から電源回路の設計まで徹底的に追い込んだ音質

村上 今日はこれまでの試作機を全部お持ちしました。(台車には山積みの試作機が)

岡崎 これが最初の欧州向けの試作機です。アルマイト処理はしていませんが、この時点でもフロントとサイドパネルはアルミです。自分たちのやろうとしていることが、このサイズに全て収まるのか検証するのに使いました。ちゃんと画も音も出るんですよ。

これが最初の試作機。ここからUB9000がスタートした!

ウデーニ そして、これが音質評価用の実験システムです。(巨大な建造物がドーン!)

詳細は見せられませんが、これが音質評価用実験システム

−− うわッ、これは大規模ですね!

宮本 Japan Limitedの開発規模がどんどん大きくなってしまったので、途中から電源周りのスペシャリストであるウデーニにもチームに参加してもらいました。実は社内にはUB9000開発以前から、半ば趣味でやっているオーディオクラブというのがありまして、彼はそこのメンバーだったのです。UBZ1を改造してみたり、いわば “ハイエンドBDプレーヤーを作りたい会” といった感じのクラブ活動ですね(笑)。

電気設計を担当したサンガッカーラ・ウデーニ氏

音質設計を担当した宮本真吾氏

ウデーニ これまではサウンドバーなどの開発に携わってきましたが、Japan Limitedの企画を聞いて燃えましたよ! そこで、この巨大な三階建ての評価用基板を使って、各種パーツの選定から電源回路の設計まで徹底的に追い込んでいったのです。

宮本 (ガサゴソと袋の中から何やら取り出して)これも掲載NGで申し訳ないんですけど、DACチップに関しても、このように各社のものを検討しました。最終的に採用したのは旭化成エレクトロニクス製のチップですが、最初からこれを使うことが決まっていたわけではありません。各社ともにそれぞれ良い部分がありましたが、旭化成の滑らかな階調表現力と細かいニュアンスの再現性が、我々の目指すサウンドに一番合っていると判断しました。

2ch用に現時点で最上位のAK4497を採用

−− Japan Limitedで、オーディオ周りの一番のサプライズは、2ch用DACチップに現時点で最上位のAK4497を採用したことだったかもしれません。

次ページUBZ1と見比べると、驚くほどの画質向上

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