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【特別企画】真空技術をどう活かすか

サーモスはなぜオーディオに取り組むのか? インタビューで語られた『気持ちいい音』の3本柱

野村ケンジ

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2018年06月29日


「そこで、音質面を重要視しつつ、デスクトップスピーカーとして邪魔にならない、使いやすいサイズを模索していきました。その結果として、SSB-380Sが誕生しました。デスクの上に置いても邪魔にならないサイズでありつつ、デスクからちょっと離れた位置でリラックスしながら音楽を聴いても満足できるサウンドを実現しました」(平松氏)

「SSB-380S」はデスクトップユースを考えたサイズ設計となっている

そのような “理想のデスクトップスピーカー” を作り上げるにあたり、SSA-40からSSB-380Sに一足飛びに到達したわけではない。SSB-380Sのベースとなっているのは、先にプロ用モニターとして開発された「MSA-380S」だ。

MSA-380Sで、音質や表現力について一切妥協することなく、可能なかぎりサイズをコンパクト化するにはどういったことをやっていけば良いのか、様々な検証が行われた。さらに開発の際には、レコーディングエンジニアの方々にも協力をいただいているという。このことが、「音質的にも妥協のない製品に仕上げることができましたし、VECLOSならではのサウンドポリシーである3本の柱を持つこともできました」という平松氏の自信につながっているのだろう。

そういった経緯もあって、SSB-380SはSSA-40とまったく異なるデザインとパーツ構成を持つ製品になっている。「真空構造のステンレス筐体はもちろん、スピーカーユニットも含めすべてが新しいパーツとなっています。ドライバーユニットはSSB-380S(とMSA-380S)用に新開発しましたし、筐体のサイズや長さも、いろいろなタイプを試作しました」と語るように、一から開発が進められることとなった。

特に力が入れられたのは、筐体の長さだ。「3種類から検討していますが、早い段階で長ければ長いほど良いわけではない、ということが分かりました。筐体は、基本的に奥行き方向に余裕がある方が歪み感の少なさや低域の量感やメリットが高い場合が多いといわれることがありますが、今回試した印象ですと、長いバージョンでは余計な響きが発生したりスピード感が落ちてしまったりと、デメリットも生じてしまったんです。逆に、いまより25mm短いバージョンでは低音がまったく出ず、こちらも候補から外すことに。結果としてベストなサイズを見つけ出すことができました」と語る。

実は、この長さには思わぬ恩恵もある。「SSB-380Sの台座部分にはデジタルパートやパワーアンプ部がレイアウトされているのですが、この基板がギリギリ収まるサイズだったんです。コンパクトを追求して短いもので調整を進めていったら、ベース部に基板が入らず、困ってしまうところでした(笑)」と、開発においては「運が味方した」ことが度々語られた。

筐体は音質的にベストな長さが、ベース部のサイズと一致したという

そして、アナログ入力のみであるMSA-380Sに対して、SSB-380SはUSBとBluetooth、2系統のデジタル入力のみになっている。これは、デスクトップスピーカーである製品性を最優先して、徹底的に検討した結果のチョイスという。

「アナログ入力があれば便利ですし、光デジタル入力が欲しいという人もいるかと思いますが、それらを組み合わせると、このサイズでは収まらなくなってしまいます。またパソコンの横に置くという使用シーンも踏まえ、優先の入力はデジタル、しかもUSB入力のみで大丈夫だろう、と割り切りました。また、Bluetoothにおいてはハイレゾ相当のコーデック対応がマストと早い段階から考えており、LDACコーデック対応のBluetooth入力を用意しました」(平松氏)

結果として「満足度の高い製品ができた」と語られた

ちなみに、SSB-380Sでは左右アンプ基板を右ch側の台座に搭載しているが、左右をつなぐケーブルにMOGAMI製の4芯構造ケーブルを採用。ベース部とスピーカーをつなぐのはベルデン製ケーブルなど、細かなパーツにまで気が使われている。

最後に、サーモスのオーディオブランドとして目指す方向性を聞いた。「少なくとも中期的には、いわゆる総合オーディオメーカーになるつもりはありません。我々の真空技術は、音を出す振動体と組み合わせることで初めて活かされると考えているので、当面は “音を出すもの” がメインとなります。とは言え、その中でも例えばスマートスピーカーやアウトドアタイプのBluetoothスピーカー、ネックスピーカーなど様々な製品があります。まだまだやれることは多いでしょうし、場合によっては『新しいカテゴリーを自ら作り出すこともできるのでは?』とも思っています」

今後、さらなるオーディオ製品の登場が期待されるサーモスだが、あくまでもサーモスらしさを大切にしていきたいと考えているという。その取り組みには大企業が行うただの1サービスではなく、オーディオブランドとしての真摯な姿勢が見て取れる。これからのサーモスにも注目していきたい。

(特別企画 協力:サーモス株式会社)

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