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「2500シリーズ」連続インタビュー第1回

【開発者インタビュー】デノン「DNP-2500NE」に込められた音へのこだわり

公開日 2016/04/20 11:00 構成:編集部 小澤貴信
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多様なヘッドホンに対応できるダンピングファクター/ゲイン切り替え

ーー DNP-2500NEのヘッドホンアンプは、ゲインとダンピングファクターを細かく切り替えられることも特徴です。

飯原氏 ダンピングファクターがここまで細かく切り替えられるヘッドホンアンプは珍しいと思います。さらに、市場の製品の中では切り替え幅が小さく、音の変化があまり感じられないものもありますが、本機では、出力インピーダンスでみると0.1Ωから100Ωまで4段階の切り替えができます。

ヘッドホンアンプのダンピングファクターは、High(出力インピーダンス:0.1Ω)、Upper Mid(33Ω)、Lower Mid(47Ω)、Low(100Ω)の4段階で切り替え可能。また3段階でのGAIN切り替えも備える

ーー ユーザーも音色の変化を楽しめます。

飯原氏 出力インピーダンスが固定されたヘッドホンアンプだと、個々のヘッドホンとの相性が生まれます。複数のヘッドホンやイヤホンを使い分けているユーザーは多いですから、本機のダンピングファクターとゲインの切り替え機能は重宝するはずです。

ーー 開発時には、どのようなヘッドホンでテストを行われたのでしょうか。

飯原氏 ゼンハイザーの「HD800」やベイヤーダイナミックの「T1」をはじめ、様々なヘッドホンをテストに使いました。もちろんデノンのヘッドホンも使っています。サウンドマネージャーの山内(山内慎一氏)は、デノンの旧世代のフラグシップモデルである「AH-D7000」と、その下位モデルの「AH-D2000」を音決めに使っていました。

ーー 先ほどのノイズ対策もそうですが、とにかく音質に影響を与える可能性があるところに徹底した対策を施しているという印象を受けました。

飯原氏 ライン出力とヘッドホン出力を排他的に使用する仕様になったのも、音質を追求した結果です。ライン出力に切り替えると、ヘッドホンアンプ部は電源まで全てオフになります。ソフト制御の必要なDACやDDFAなどのICは、スタンバイ状態にしておけば切り替えは早いのですが、音質に影響を与えてしまう可能性があります。

影響が数字に現れるかどうかではなく、影響が出る可能性のあるところには全て対処しようという姿勢で挑んでいます。そのためにはコストもかけます。ユーザーの精神衛生上という面でも大事なことです。

フルデジタル・プロセッシング・ヘッドホンアンプの開発には、サウンドマネージャーの山内氏と共に長い時間をかけたとのこと

ーー 改めて伺いたいのですが、フルデジタル・プロセッシング・ヘッドホンのメリットはどのようなところにありますか。

飯原氏 余計なアナログ領域の処理が入らないということです。ノイズが入らないデジタル領域でボリューム処理をして、それを任意の出力先にダイレクトに出力できるので、鮮度、情報量が失われません。

どんなに良いDACを使っていても、DACの出す信号レベルは基本的に音量固定ですから、それをアナログの電子ボリュームや半固定抵抗でゲイン調整してパワーアンプに出力するとなると、その過程でS/Nを犠牲にしたり、本来不要なバッファーを通過させたり、ハイインピーダンスのラインにノイズが飛び込んだりと、様々なかたちでロスが現れます。

さらには能動素子や受動素子を通れば音は変化してしまいますが、DDFAはフルデジタルで処理が行われるので、通過する素子は最小限に抑えられます。DDFAは、独自のフィードバックシステムによってDCオフセットを抑え込めるので、DCオフセット対策に必要なカップリングコンデンサーも排除でき、音に余計な色が付きません。通過する素子が最小なので、鮮度を保つことができるのです。

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