4K UHD BD『もののけ姫』、豊かな色彩と広レンジ音声。公開当時の体験が蘇る記念碑的ディスク
伊尾喜大祐4K Ultra HD Blu-rayの注目タイトルをプロの評論家が画質と音質の評価チャート付きで紹介する連載企画。今回のタイトルは現在発売中の『もののけ姫』。画質と音質の見どころを、伊尾喜大祐氏が自宅のホームシアターで徹底的にチェックした。
『もののけ姫』
STORY
荒ぶる神々と人間の文明の衝突が招く悲劇を、サンとアシタカの目線で描く宮?駿監督作の鬼気迫る意欲作。宮?作品初のデジタル作画・5.1ch音響の採用タイトルでもある。人体損壊などのバイオレンス描写さえ辞さぬ、痛烈なメッセージ性は宮?アニメ随一と言えよう。
そのインパクトを大自然の緑系色のグラデーションが優しく包み込む。IMAXスクリーンをも席巻した4Kデジタルリマスター映像と、劇場公開当時のワイドレンジな5.1ch音声を余すところなく封じ込めた、まさにジブリ史に残る記念碑的な1枚だ。
Dolby Visionで甦るフィルムの息吹と1997年の色
精細感やHDR感を誇示しない、フィルムの情報を丹念に写し取る映像哲学が貫かれたUHD BD盤。Dolby Visionの豊かな色域が、緑系色のグラデーションで描かれる大自然の奥深さを際立てる。デジタル合成とセル作画カットの差異も巧みなグレーディングで最小化され、「初号試写の映像を目指す」コンセプトが確かに実現されている。
5.1ch音声には劇場公開当時のワイドレンジなマスターを使用。森の息吹、タタリ神の足音、矢の風切り音、コダマのカラカラ音などが鮮明に際立ち、臨場感が大きく増した。なお本編UHD BD・同梱BDともにデフォルト音声は2.0ch設定のため、5.1chユーザーはご注意を。またBDは2013年版同様にMGVC(マスターグレードビデオコーディング)仕様で、対応機器なら高品位な映像が楽しめる。
CH2タタリ神の襲撃では触手の立体感が際立つ。アシタカの瞳の、黒と濃い青の塗り分けも鮮明だ。CH5豪雨の中でサンたちを狙う石火矢の赤い炎と着弾の青白い閃光にHDRが真価を発揮。CH6音場を満たすコダマのカラカラ音。CH13ディダラボッチの半透明の巨体と体内に輝く粒子。
注目したいのはCH17のアシタカとモロの対話シーン。広レンジゆえに美輪明宏演じるモロのセリフの緩急と抑揚が圧巻。「黙れ小僧!」の一喝に身体が震えることだろう。そしてCH24「命とは何か?」と観客に問いかける、怒涛のスペクタクルが筆舌に尽くし難い迫力だ。
最後になるが、本作でモロ役を演じた美輪明宏氏が去る6月20日に逝去された。母性と凶暴性をあわせもつ神のごときキャラクターに命を吹き込んだ美輪氏のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
SPEC
●製作:1997年/日 ●ジャンル:邦画アニメ ●監督:宮?駿 ●声の出演:松田洋治、石田ゆり子 ●本編ディスク:約133分、16:9/ワイドスクリーン、Dolby Vision ●本編音声:日本語リニアPCM2.0ch、日本語Dolby TrueHD5.1ch、日本語音声ガイドDolby Digital2.0ch ●字幕:日本語、バリアフリー日本語 ●同梱のBD特典:『もののけ姫』4K デジタルリマスターIMAXプレミア試写会舞台挨拶、予告編集、告知映像(4K デジタルリマスターIMAX上映)、予告編(4K デジタルリマスターIMAX上映)、予告編(4K デジタルリマスター拡大上映)
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