SilentPowerの光絶縁アクセサリー「OMNI LAN」「OMNI USB」が音楽本来の表現力を取り戻す!
山之内 正イギリス・iFi audioが始動したアクセサリーブランドSilentPower(サイレントパワー)より、LANやUSBの伝統経路に介在させてノイズを除去するアイテムが登場した。ハイレゾ・ストリーミングが普及してきた今、ネットワークや周辺機器のノイズ除去に焦点を当てた注目のアクセサリー。光LANアイソレーターは今ホットなジャンルであるが、USBの光アイソレーターは聞いたことがない人も多いだろう。早速ハンドリングしてみた。
ネットワークの音質改善に新提案
登場からほぼ10年が経過した頃、CDの音が劇的に改善した時期があった。最初はプレーヤーで音が変わることはないと言われていたのに、メカドライブの振動対策やD/A変換技術の進化など、複数の技術が相乗効果を発揮し、音質改善が進んだのだ。
当初は見落としていた音質劣化の要因が次第に明らかになり、その対策が進むという状況はCDから約30年を経てネットワークオーディオにも広く浸透し始めている。草創期は音質対策以前の課題が山積していたが、それが解決した後は周辺機器やネットワークの伝送経路にも音質劣化の要因が潜んでいることが明らかになり、課題を解消する技術の提案が進んだ。オーディオ向けのサーバー、ネットワークスイッチ、ルーターなど、着実な成果を上げて現在に至っている。
一方、伝送経路が媒介するノイズへの対策は試行錯誤の域にとどまるものが多く、決定的な音質改善効果をいまひとつ実感しにくい状況が続いていたが、この数年、劇的な効果を発揮する対策が形を表すようになった。電気信号の伝送経路を光や磁気で絶縁してノイズを遮断する対策はその代表的な例だ。
CDの音質改善はオーディオメーカーとデバイスメーカーが担うことが多かったが、ネットワークオーディオの音質改善を実現するためにはネットワークとコンピューターに関連する技術が必須となるため、その分野に実績を持つ企業が重要な役割を担う。
本記事で紹介するSilentPowerは、iFi audioを傘下に置くAMRにおいて電源から信号経路までノイズ対策の技術とノウハウを積み重ねてきた経験を有し、音質改善効果が著しいオーディオ用途のパワーサプライやUSBノイズフィルターなど、多くの成果を上げてきた。検出したノイズ成分を逆位相の信号で打ち消すアクティブノイズキャンセリング(ANC)は同社を代表する技術のひとつで、多くの製品に採用されている。
その知見を活用することを目的にiFi audioはSilentPowerを独立したブランドとして立ち上げることを決断。既存の製品群に加えて、ネットワーク再生の音質改善に向けた新たな提案を続々と行っている。今回はSilentPowerの豊富なラインアップのなかから、LANコンディショナー「OMNI LAN」とUSBコンディショナー「OMNI USB」を紹介しよう。
OMNI LAN -本来のなめらかさを取り戻す
サーバーとネットワークプレーヤー間などのLAN伝送路上のネットワークスイッチの代わりにOMNI LANを使用すると、絶縁トランス→光変換→絶縁トランスという3段階のノイズ遮断プロセスと、内蔵フェムト・クロックによるリクロッキングを組み合わせたノイズフリーの伝送を実現することができるというのがメーカーの主張だ。
LAN伝送にまとわりつく外来ノイズの遮断に効果を発揮することが期待できる。本体前面には帯域幅などデータ解析情報がリアルタイムで表示され、安心感に繋がる。
ルーターとラックスマン「NT-07」の間にOMNI LANを接続し、未使用の状態で聴いた再生音との違いを確認した。セリア「God's Mistake」(女性ヴォーカル)はノイズフロアが下がって見通しが改善し、3本のギターの音像定位と各楽器の音色の違いをより正確に聴き取れるようになった。
アリソン・バルサムによるヘンデルの合奏協奏曲は独奏トランペットのフォーカスが改善し、通奏低音の低弦の音形までが立体的に浮かび上がる効果を確認。演奏の躍動感が格段に伝わりやすくなった印象で、接続を切り替えて繰り返し聴いても確実な再現性があった。
リッキー・リー・ジョーンズ「ショウビズ・キッズ」はパーカッションの質感やヴォーカルの発音を聴き比べると変化が分かりやすい。いずれもOMNI LANを接続することで硬質感や子音のきつさが緩和され、本来の素直な質感となめらかな発音を取り戻す。普段聴いているネットワーク再生の音に硬さを感じていたり、平面的な表現に不満を持っているなら、LANの伝送経路にOMNI LANを加えることを強くお薦めする。
OMNI USB -空間、音像表現まで向上させる
2つの筐体で構成されるUSBコンディショナーOMNI USBは、アダプターから供給する外部電源のほか、内蔵バッテリーで駆動できる点に新しさがある。電源ラインから混入するノイズを回避するうえでバッテリー駆動が最適なソリューションになることはいうまでもない。バッテリー容量は8000mAhと余裕があり、充電なしで数日は稼働する。
USB伝送のノイズ遮断は前述のANCと光絶縁が担う仕組みで、2つの筐体間をつなぐ光ファイバーが付属する。パソコンやトランスポートなどソース機器のUSB出力を、OPT LINKと呼ぶ入力インターフェースに繋ぎ、OPT LINKで光絶縁された信号を光ファイバーを用いてOMNI USB本体に伝送。ノイズを除去したUSB出力を取り出し、DACに受け渡すという流れだ。
本体はバスパワー対応のUSB端子を5系統装備し、ピュアオーディオ仕様のUSBハブとして利用することも可能だ。その場合も複数のUSB端子間での干渉が起こらないように万全なノイズ対策が行われているので不安はない。入力側はUSB Type-C、出力側はUSB Type-C×1、USB Type-A×4系統の端子が備わる。付属の光ファイバーをSFP端子につなぐ際はコネクターの向きを確認することを忘れないようにしよう。
筆者の試聴室でラックスマンNT-07とエソテリック「Grandioso K1X SE」(DACとして利用)の間にOMNI USBを接続し、Qobuzの音源を再生してコンディショナー未使用の状態と音の違いを確認した。
一番分かりやすい変化はコロラトゥーラソプラノの最高音域でごく僅かに聴き取れるヒリヒリとした感触がほぼ解消したことで、音量の大小にかかわらずOMNI USB接続後はなめらかな声を取り戻した。普段聴いている「KLIMAX DSM/3」でのストリーミング再生時はまったく起こらない現象なので、おそらくUSB伝送に課題があるものと思われる。
ポッジャー&ブレコンバロックのゴルトベルク変奏曲では空間再現の広がりが左右と奥行き方向にそれぞれ拡大する効果があり、Sob & the Czyks「クール・ストラッティン」では楽器イメージのフォーカスが改善することを確認。音場の広さや音像定位の精度は微小信号の再現性に大きく左右されるので、これらの変化の大半は伝送経路上のノイズを遮断した効果とみて間違いないだろう。
2台併用するとさらに効果が向上
OMNI USBの効果を確認したあと、ネットワークスイッチとNT-07の間にOMNI LANを接続し、USBとLANのコンディショナーを併用する効果を検証した。
すでにノイズ対策を行った状態での試みということもあり、顕著な音の変化はないが、ステージの奥行き表現については明らかにOMNI LANを追加する効果を確認することができた。ノイズ遮断対策を未導入の環境ではさらに大きな効果が期待できそうだ。
Pulser USB コンディショナー機能つきUSBケーブルもテスト
絶縁トランスによるノイズ遮断効果と電源と信号ラインの干渉を抑える対策によってUSB伝送の音質改善を狙ったオーディオグレードのUSBケーブル、「Pulser USB」を試聴した。
パソコンをファイルやストリーミングの再生装置として使用すると、オーディオ機器とは桁違いの有害なノイズで音質が著しく劣化することがあり、その一部はUSBケーブルを介してDACに影響を及ぼす恐れがある。その対策として電源と信号の経路を分けるなどの対策を行ったUSBケーブルが開発され、一定の成果を上げているが、SilentPowerのPulser USBはそこからさらに一歩踏み込み、絶縁トランスを利用したノイズ遮断を行う。
パソコンでは顕著な効果が期待できるが、DAPからDACへの伝送経路に用いてもノイズフロアの低下や空間再現の精度向上など、確実な音質改善効果を聴き取ることができた。電気信号の伝送経路におけるノイズ遮断効果をUSBケーブルだけで手軽に実感できる製品として注目に値する。
(提供:エミライ)
※本記事は『季刊・Audio Accessory vol.198』からの転載です
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