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公開日 2019/05/17 10:11
妥協なき物量投入、圧倒的な音質差を実感

CDリッピングの音質は“電源”と“制振”が効果あり!ラトックの光学ドライブ用ケース&強化電源を試す

鈴木 裕
以前からCDリッピングの音質に焦点を当て、光ディスクドライブ用の制振ケースを作ってきたラトックが、1月に怪物的な製品を2つ発売した。ひとつは、発売中のラトックの制振強化リッピングケース「RP-EC5-U3AI」の音質をさらに高める強化電源キット「RAL-PS0512P」、もうひとつは、専用設計の電源と制振を強化した新しい超弩級ドライブケース「RAL-EC5U3P」である。本記事では2製品を試聴レビュー、それぞれの効果を紹介する。

左:RP-EC5-U3AI用電源キット「RAL-PS0512P」価格¥148,000(税抜)、右:制振ケース「RP-EC5-U3AI」直販サイト価格¥21,112(税抜/装着したPIONEER製ディスクドライブ「BDR-S12J-X」は予想実売価格¥35,000前後、合計¥204,112前後)

光学ドライブケース「RAL-EC5U3P」価格:¥168,000(税抜/装着したPIONEER製ディスクドライブ「BDR-S12J-X」は予想実売価格¥35,000前後、合計¥203,000前後※楽天の直販サイトでは組み立てセット価格¥197,223・税抜)

CDリッパーに強化電源「RAL-PS0512P」。どれほどの効果があるか?

ラトックではより良いCDリッピングのために、市販のSATA接続光学ドライブに装着して使用するケースタイプの製品をリリースしてきた。新たに登場したのが、そのCDリッパーに付加して使う強化電源部「RAL-PS0512P」だ。さらに、重量級のボディと強化された電源部を装備した弩級の新製品「RAL-EC5U3P」も登場させた。

まず、従来からラインナップされ、定評を獲得してきた制振ケースが「RP-EC5-U3AI」。光学系・回転系のドライブ機器はドライブ自身から振動を発生するが、本モデルではこれに対してケース内部の上下にシートタイプのインシュレーター(セル構造の発泡ウレタンエラストマー、イノアック製セルダンパー)を配置している。

光ディスクドライブを組み込んで使うラトックの制振ドライブケース(写真はRP-EC5-U3AI)

そして筐体自体も比重の大きい1.6mm厚の鋼板を採用。インシュレーター(脚)の存在と共に共振を防止している。メカドライブとして組み合わせが推奨されているパイオニア「BDR-S12J-X」を装着し、まずは強化電源部なしの状態で試聴した。

音質は緻密でありつつ、エネルギー感が高い。サウンドステージは左右に広く展開し、音像自体は小さめにフォーカスする。抑圧された感じがなく、高域が伸びやかにきれいに伸びつつ、低域は締まりながら馬力がある。ノイズフロアが下がった感覚があり、繊細感が出てくるし、音像自体も明確に定位しており、安定感のあるきちんとした再生音だ。

このRP-EC5-U3AIをグレードアップする電源キットが、「RAL-PS0512P」だ。3系統の出力端子を持っているが、内部にはDC+12V、DC+5Vの独立したカットコアトランス(60VA/40VA)を搭載。ノイズの少ない安定した電源を供給する。ちなみにこの電源キットは、RP-EC5-U3AI用に作られたものであるが、DELAやSoundgenicのミュージックサーバーや、規格の合うUSB DACにも使えるという。

RAL-PS0512P、後述のRAL-EC5U3PともにDC+12V, DC+5Vの独立した大容量のカットコアトランス(60VA 40VA)を搭載

なお、RP-EC5-U3AIとの接続はRP-PS0512SというDC+12V/+5V出力両対応の専用ケーブルがオプションで準備されている。他にもオプションケーブルとしてDC+12V用が1種、DC+5V用が2種類ある。くわしくは製品ページにて確認されたい。

どれくらい効果があるものなのか。とにかく本体に装着して聴き出してみると、すぐに納得した。いや、感服したと言ってもいい。オーディオはやっぱり電源だ。リッピングした音楽の良さがディープに感じられるのだ。

音には厚みがあり、音の色彩感が濃い。ただし空間の透明度が素晴らしく、音の立ち上がりとしゃがみも速い。音はよくほぐれ、音像同士の間に空間がある。低域の馬力も高まるが、俊敏な低音なのだ。微小領域の再現性にも優れている。これは聴いたら後戻りできない領域だ。

妥協を許さない物量投入型の新モデル「RAL-EC5U3P」。完成度の高さは圧倒的

そして、制振強化リッピングケースとして新たに登場したのが「RAL-EC5U3P」。上記のパイオニアのドライブを装着した状態で13kg弱という重量だが、実際に持った際の剛性感や、ダンピングが効きまくっている感じはその重量以上。こういう、いい意味で過剰な製品に接するとワクワクしてくる。2mm厚の鋼板のシャーシは底板にクロスリブが入り、内部の左右にはDC+12V、DC+5Vのカットコアトランス(60VA/40VA)を搭載。入念な作りだ。

RAL-EC5U3Pの底面。ゆがみやズレから守るクロスリブを採用

RAL-EC5U3Pの背面。USB端子と電源端子を装備。ファンはオン/オフが切り換えられる

当然、RP-EC5-U3AIにRAL-PS0512Pを組み合わせた場合との音の比較を知りたいところだろう。値段としてはやや下回る。しかし、さすがにメーカーがきちんとアッセンブルした製品だ。さらに分解能が高く、サウンドステージの奥行きの深さや立体感が素晴らしい。最低域にもしっかりとした音像感があり、密度の高さもなかなか聴けない領域である。

そして特徴的なのは、音楽に近い感覚が横溢している点だ。サウンドステージの枠は広く、そこに近い位置で聴いている感覚があり、音像自体も大きい。音楽の推進力やグルーヴ感が色濃く出てくるのも素晴らしい。彫りの深い再現力なのだ。

ラトックの製品たちは、いずれも物量投入型でオーディオマインドに溢れてる。CDに記録された音楽はまだまだ読み取り切っていなかったと思わせられた。

(鈴木 裕)



本記事は季刊・Net Audio vol.34 Summerからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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