ボルボとB&W、上質への希求が紡ぐ縁。フラグシップ・クロスオーバー「ES90」のカーオーディオの音に触れる
2026/09/25
9月26日(土)、東京・南青山にあるボルボのブランドスペースVolvo Studio Tokyoで、Bowers & Wilkins(B&W)のスピーカーと、ボルボのカーオーディオのサウンドを楽しめる「Volvo Sound Journey with Bowers & Wilkins」が開催された。
会場にはボルボの最新フラグシップEV「ES90」(クロスオーバースタイル)、「EX90」(SUV)が展示され、さらにその横にB&Wのトールボーイスピーカー「702 S3 Signature」とマランツのストリーミング機能付きプリアンプ「MODEL 40n」を設置、それらのサウンドを聴いてみたいという約30名の来場者が席を埋めていた。
両社は10年以上に渡ってパートナーシップを結んでおり、これまでもボルボの「60」シリーズや「90」シリーズには、プレミアムサウンドシステムとしてB&W製品が搭載されてきた。もちろん、今回展示された「ES90」と「EX90」にも採用されている。
それらの特長やサウンドインプレッションについては、栗原祥光氏が詳しいリポートを届けてくれているのでそちらをご覧いただきたい。
今回のイベントは、両ブランドの魅力や特長が紹介され、さらに実際の音も確認できる興味深い内容となっていた。
解説を担当してくれたのは、ボルボ・カー・ジャパン株式会社 営業本部プロダクト・グループ プロダクトチーム 岡田勝也氏と、株式会社ディーアンドエムホールディングス マーケティング コミュニケーション・PR-Japan デジタルマーケティング-APAC 舘 久美子氏、さらにホームとカーオーディオそれぞれの音に詳しい識者として、PHILEWEBのクリエイティブ・ディレクター・筑井真奈氏も解説に参加していた。
まず司会者からイベント来場のお礼が述べられ、さらに「お家にB&Wのスピーカーがあるという方はいらっしゃいますか?」という質問が出た。すると5〜6名の方が手を上げ、オーディオに興味を持っている方も本イベントに注目していることがうかがえた。
それを受けて岡田氏から、ボルボの音へのこだわりが紹介された。
「イベントをお待ちいただく間も、このスピーカーからいい音が流れていましたが、会場で一番のリスニングポジションはどこでしょうか? 当然真ん中近辺になるわけですね。では、車の中にベストな場所はあるでしょうか? 車のシートは基本的に左右に分かれているので、真ん中で聴くのは難しい。これが、車という特殊な環境が持っている根源的な問題点なんです。
ボルボでは、これを解決する技術を取り入れております。それが『サウンドフォーカス』機能です。7月に日本で発売しましたES90、EX90ではダッシュボード中央にセンタースピーカーがあり、右側にも左側にも同時にセンターイメージを創出し、どの座席に座っていても、目の前にセンターイメージが作られるように設定されています。
そこでは再生アプリで『スタジオ』『ステージ』『アビーロード』といったモードが選べます。『スタジオ』モードは、音楽スタジオで音響エンジニアが聴いている環境を再現したものになります。
『ステージ』モードは、スウェーデンのイェーテボリ・コンサートホールという1300人収容の大きなホールをシミュレーションしました。800箇所以上で測定を行い、ゴールデンシートと呼ばれる577番の座席を再現したモードになります。臨場感のある音響が再現されますので、クラシックだけでなく、ライブ作品などを見るのも楽しいかもしれないですね。
最新モデルに採用されたスピーカーについてお話しますと、B&WにはTweeter-on-Topという思想があります。これなかなかユニークな方式で、車載としては他のメーカーでは使われていないと思います」(岡田氏)
そして、この話を受けて、筑井氏から解説が行われた。
「ダッシュボードのトゥイーターを横から見ると、奥に向かってすぼまっているのが特徴です。ここにあるB&Wのホーム用スピーカーも、トゥイーターを横から見ると同じような形になっています。これはB&W独自のもので、デザインのためではなく、音響的な必然性があって採用されています。その詳細は後ほどお話したいと思います。
またES90とEX90はドルビーアトモスも楽しめます。ドルビーアトモスは、元々映画館向けの音響システムで、『トップガン マーヴェリック』や『F1』などをご覧になった方は分かると思いますけど、天井側の音もしっかり再現しようというところで始まった方式です。それを家庭や車の中でも楽しめるようにしようという取り組みが最近広がってきています」(筑井氏)
そんなドルビーアトモスの効果を余すことなく再現するために、ES90、EX90にはB&Wのスピーカーが最適な位置に配置されている。
「ルーフスピーカーやフロントシートのヘッドレストの中など、全部で25基のスピーカーを備えています。これもフラグシップシリーズだからこそできる、贅沢な構成になっていると思います。低域用にもエアベンチレーテッドサブウーファーを採用し、大きなエンクロージャーを使わずに低域成分を作り出しています。
従来の平面的なサウンドから、今回初めて3Dサラウンドを実現することができたというのが大きな特徴です。是非、車内で素晴らしい音楽をお楽しみいただけたらと思います」(岡田氏)
ここで登壇者が交代し、B&Wのスピーカーについて舘氏から解説が行われた。B&Wは1966年にイギリスで創業され、今年で60周年を迎える。当初はハイファイ用大型スピーカーを手掛けていたが、現在は小型モデルからヘッドホン/イヤホン、サウンドバーまで展開しているハイエンドオーディオブランドだ。
創業者の一人であるジョン・バウワーズ氏が目指したのが、演奏家が目の前で演奏しているかのような、息遣いまで再現できるスピーカーだった。その信念は「True Sound」という言葉に集約され、現在でも受け継がれている。舘氏はスライドを表示しながら、同社スピーカーについて紹介してくれた。
「こちらがB&Wの代表的なスピーカー『Nautilus』です。見た目がオーム貝のようなので、デザインから着想を得て作ったと思われがちですが、実はそうではなく、音作りを追求した結果生まれた形状になります。
先ほど、Tweeter-on-Topのお話ありましたが、このスピーカーでも後ろに3本の角のようなものが写っています。ノーチラスチューブと呼んでいますが、決してデザインのためではありません。ドライバーは音を出す際に振動板が前後に動きます。その際、前だけでなく、後ろにも音が出るんです。
でも、後ろへの音は聴こえて欲しくないので、ドライバーの後ろ側を伸ばして、その中で消音しようと考えたわけです。その発想は、先程聴いていただいた700シリーズにも搭載されていますし、ES90、EX90に搭載されたドライバーも同様です」(舘氏)
そんなB&Wのスピーカーが音楽制作スタジオでも採用されていることは、オーディオファンの間ではよく知られている。先ほど岡田氏から説明のあった再生アプリに今回新搭載された「アビーロード」モードはその経験を活かした機能となる。
「B&Wは、ビートルズで有名なイギリスのアビーロードスタジオともパートナーシップを結んでおります。1980年にジョン・バウワーズが当時のフラグシップスピーカー『801』をスタジオに持ち込んだことが始まりで、音を聴いたスタジオエンジニアがその精度に驚いて採用に至ったという経緯があります。それから46年経った今でも、フラグシップの800シリーズをお使いいただいており、最新の『801 D5』も導入いただく予定です」(舘氏)
ここから「702 S3 Signature」と「MODEL 40n」による試聴がスタートした。音楽ストリーミングサービスのQobuzから、ビートルズ「Got to Get You into My Life(Remastered 2009)」や、ジョン・ウィリアムズ/ロンドン交響楽団「スター・ウォーズのテーマ」、カーペンターズ・ウィズ・ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団「トップ・オブ・ザ・ワールド」が再生され、来場者の皆さんもその音に聴きいっていた。
試聴後には岡田氏から、「どうですか、目の前でカレンさんが歌っている感じがする、素敵な音でしたね。ここで、ボルボがどうしてB&Wとコラボレーションをしているのかという話をしたいんですが、そこには先ほどお話のあった『True Sound』というものがあります。これは原音に忠実ということだと思うんですが、そのメリットを筑井さんに教えてもらいましょう」という話になった。
それを受けて筑井氏は、「録音スタジオでは、ミュージシャンが演奏した音がスピーカーから正しく再生されないと変な音になってしまいます。B&Wのスピーカーがアビーロード・スタジオで使われているのは、それだけ信頼性が高いということですね。スタジオで録られた音を正しく再現しようという思想を持ったスピーカーで、その思想がボルボさんの上質な車という考えと響き合ったんじゃないかなと私は考えています」と解説していた。
なお再生アプリの「アビーロード」モードには、4つのプリセットも準備されている。加えて「プロデューサー」プリセットも選択でき、任意のポジションを選ぶことで、空間の広さやL/Rスピーカーの間隔を切り替えられる。ポジションに連動してアプリ画面のスピーカー形状や楽器の数、コンソールの構成を示すグラフィックが変化するなどの工夫もあり、視覚的にもかなり遊べる内容になっている。
最後に筑井氏から音元出版やファイルウェブについても紹介が行われた。
「弊社はオーディオ媒体を運営しており、アンプやスピーカー、アナログプレーヤーといった製品のクオリティチェックを行って、読者にお届けしています。私たちのメインの試聴室では、スピーカーにB&Wの『802 D4』を使っています。
いい音とは何かというのは、すごく難しい問題です。大事なことは、帯域のバランスが優れていることです。低域から高域までどの音も正しいバランスで出ているという点が、B&Wのスピーカーが信頼できるところだと思っております。
もう1つサウンドステージという言葉があります。ステレオのスピーカーで音楽を聴く時にも、左右の空間が広ければいいっていうものでもなくて、例えば大きなコンサートホールなら広がり感を、小さなジャズクラブの演奏なら近い距離感を楽しんで欲しい。音楽を作っている人たちがどういう狙いを持っているのか、それをスピーカーを通して感じることができると、より深く音楽を味わってもらえるのではないでしょうか」(筑井氏)
以上で試聴会が終了となり、その後はES90やEX90を使った実車での体験が行われた。3名ずつ乗車し、助手席に座ったナビゲーターの操作で曲を聴かせてもらう。
女性ボーカルや電子楽器を多用したサラウンドの楽曲を試聴したが、その音の自然さに驚いた。今回は後列左側のシートに座ったけど(座り心地も最高!)、前方にしっかりしたステレオイメージが展開され、ドルビーアトモスの移動感も途切れがなくスムーズだ。25基のユニットを使って、ここまで整った音場を再現できるのはさすが。
B&Wのスタッフによると、音決めの際にはサウンドエンジニアが実際に車のシートに座ってチェックを行い、修正点を細かく検証のうえ、アプリを含めた修正を追い込んでいったそうだ。その取り組みが納得できる音といっていいだろう。「アビーロード」モードのプリセットによる音場の違い、「プロデューサー」モードでの変化もしっかり確認できた。
これだけ上質な音が楽しめるのなら、音楽を楽しむ空間として車はますます重要になっていくだろう。あるいは車載のB&Wの音が気に入ったから、リビングでもこの音が聴きたいといったきっかけでオーディオを趣味にする人も出てくるのではないか、そんな可能性まで感じさせてくれる楽しいイベントだった。