オーディオマニアの欲望を凝縮、秋葉原の専門ショップ「オーディオみじんこ」。オタクの“聖地”を炭山アキラ氏が探訪!
シークベースの最奥にある “オーディオマニア” の聖地
いつ行っても買い物客と国内外からの観光客でごった返している、家電の聖地・秋葉原。ヨドバシカメラを筆頭に量販店も数ある街だが、世界でもここでしか巡り合うことの叶わない、超の付くマニアックな商品・グッズ類が、ごく当たり前のように並んでいる街でもある。
私たちオーディオマニアにとって、そんな世界級のマニアックさが凝縮したようなお店がある。オーディオみじんこである。
JR秋葉原駅の電気街口を出て右に曲がり、山手線・京浜東北線の高架沿いに歩くと、信号を1本越えて徒歩3 - 4分の高架下に、「シークベース」と呼ばれるモールが見える。南北に長いシークベースの一番奥、隠れ家的に存在する空間が、オーディオみじんこである。
オーディオみじんこは2018年、シークベースよりさらに北へ歩を進めた場所にある「2k540」というモールに誕生した。今年で創業9年になるが、シークベースへ引っ越してからでも、もう7年くらいになろうか。個人的には、徒歩7 - 8分の2k540よりもずっと訪れやすくなったように感じている。
「シークベースは、モールが開発され始めの頃から関わっていました。落ち着いた雰囲気の店にしたかったので、一番奥のスペースを希望したんですよ」と、店主の荒川敬さん。
10坪ほどの決して広大とはいえない空間だが、キョロキョロとどこを見ても楽しそうな製品とガジェットが目に飛び込んでくる、オーディオマニアにとっては天国のようなお店である。
オーディオみじんこの店内ツアー
オーディオみじんこは、大ざっぱに分けて2つのエリアがあり、扉を開けた目の前の空間は、同社のレギュラー商品を中心とした展示スペース、右へ入った奥側は荒川さんと助手のここあさんが商品を開発・製造するデスクと、試聴用のレファレンス機器が並ぶ、いわば職人スペースだ。
荒川さんによると、もう何度も商品をネットで購入され、あるいはケーブルの特注をなさったお客様の中にも、地方へお住まいの人の中には、一度も店舗へ入ったことがない方もおられるとか。そこで今回は、オーディオみじんこ店内のルームツアー的な紹介をしていきたいと思う。
扉を開けてすぐ、向かって左側にあるのはいわゆる仮想アース装置、「SILVER HARMONIZER」および「SILVER BULLET」と呼ばれる商品群だ。
単一型乾電池より大きな円筒に生えた端子と機器をアース線でつなぐオーソドックスなSILVER HARMONIZER ETと、機器の端子へ直接指すことができるタイプもある。
しかも、RCAを筆頭としてBNC、XLR、USB、LAN、HDMI、果てはバナナプラグにYラグまで、もうありとあらゆる端子に対応しているといってよい。
なぜこれほどまでに多くの端子へ対応するようになったのか。それは、お客様からのリクエストを受けて特注・一品製作しているうちに、それらの注文が複数に及び、ならばとレギュラー化されていったのだという。
「当店のレギュラー商品は、そうやって形になったものが多いんですよ」と荒川さん。荒川さんとここあさんの着想に加え、大勢のお客様とのコラボレーションで生み出される商品群というのは、オーディオみじんこならではなのではないか。
SILVER HARMONIZERとSILVER BULLETは、私もその大半をテストして効果を確かめている。音場の見晴らしが一気に向上し、微小域の情報があふれ出すように聴こえてくること、音楽全体が瑞々しくなることが印象的だ。
ならば「最初の一歩」をどの端子の製品で進めばよいか。個人的には最も汎用性の高いRCA端子の付いたSILVER HARMONIZERを購入し、いろいろな機器の空き端子へ挿してみて、一番しっくりする場所へ定めることを薦めたい。
また、これらの機器群は複数使うのも効果的で、あまりたくさん使うと少し音楽が痩せ気味になることもあるが、どの口金を、何本、どこに使うかで、音は千変万化するから、いろいろ実験して損のないグッズだと考えている。
SILVER HARMONIZERには、新作のF接栓(アンテナ入力端子)用も登場した。テレビの背面に、BS/CS用のアンテナ入力が使われていない、あるいはケーブルテレビや光テレビ、各社のTVスティックを利用するなどして、アンテナ端子自体が余ってしまっているという人にとって、朗報というべき商品であろう。荒川さんによると画質・音質とも大幅に向上するという。
グレースなど “特殊端子” フォノケーブルにも対応
仮想アース装置のコーナーから壁沿いに右隣は、インターコネクトケーブルやフォノケーブルが大量に展示されている。
いくつかのグレードがあるのもそうだが、そこはオーディオみじんこだ。長いアナログの歴史で、トーンアームの出力端子は5ピンDINとRCAジャックの二択へ収斂していったが、そこへたどり着く前まで、いくつかの社が独自の端子を用いたり、また同じ端子でも現在とは違う使い方をしたりしていた。
そしてそれらメーカーのアーム群は、数十年の歴史を経てその大半にフォノケーブルの劣化が進み、しかし現行製品を取り付けることができない。
「それで困り果てたお客様が当店へたどり着かれて、ご注文いただくことが度重なり、そこから一部のものがレギュラー品へ昇格しました」と荒川さん。
特にグレース品川無線のトーンアームは、現行のDINと端子自体は同じなのだが、何とアームとケーブルで端子のオス/メスが逆転しており、アームそのものはシンプルでメンテナンスの容易な製品が多いのに、メーカー自体が活動を停止してしまっている現在、ケーブルがダメになって死蔵されている個体が少なくなかったとか。
そういう個体をお持ちの人も、オーディオみじんこにはレギュラー商品にグレース用があるから、まず一度問い合わせてみてほしい。
その他にも、5ピンDINだがサイズの大きなオルトフォンなど、古いトーンアームをお使いの人はフォノケーブルを特注することが可能だ。
「ケーブルに困ったら、まずオーディオみじんこ」と、頭の片隅へ置いておこう。
「ケーブルで一番音が変わるのは、電源」
さらに奥へ進むと、電源ケーブルの棚が控えている。「当店で一番たくさんのレギュラー商品がラインアップされているのは、仮想アースと、電源ケーブルです」と荒川さんが解説してくれる。
レギュラー品の中には、ビギナーが電源ケーブル着脱可能なコンポーネントを購入した時、最初の交換候補となる比較的廉価な製品、あるいは半世紀以上前のヴィンテージ・コンポーネンツにより親和性の高い再生音を持つ製品群、さらにケーブルスタビライザーと仮想アースの効果を極太の被覆へ収めたおなじみ「大蛇」(おろち)といった、キャラの立ちまくったレギュラー製品群が並ぶ。
「ケーブルで一番音が変わるのは、電源だと思うんですよ」という荒川さんの言葉に、思わず私もうなずいてしまう。
そんな電源ケーブルの中でもオーディオみじんこが他の追随を許さないのは、ヴィンテージ・コンポーネンツ用の電源ケーブルであろう。
他でもない、1970年代くらいまでの国内外のハイエンド・コンポーネンツは、その多くが現在のIEC3ピンのジャックではなく、独自規格の端子を設けていた。それらの端子類に適合させつつ、各メーカーの機器それぞれに相性の良い音質の電源ケーブルを開発することに、荒川さんは取り組まれている。
マッキントッシュの「MC2500」といえば、1980年代を代表する同社の大出力ソリッドステート・パワーアンプだが、当時はまだ電源ケーブルに今ほどの注目が集まっておらず、ごく普通の純正ケーブルが付属されていた。
端子は少し奥まったところにコンセント・プラグそのものが付いているという感じで、そんな端子に適合する高品質のプラグがあるのかと思ったら、それを探し出すのが荒川さんだ。
ただいま開発中で完成間近のMC2500用電源ケーブルを聴かせてもらったが、純正でごく何事もなく鳴っていたMC2500が、圧倒的なパワーと厚み、豊かさで朗々と歌い始めたではないか。そうそう、マッキントッシュはこうでなくちゃね、と思わず膝を叩いた。
他にも往年のクォード、JBL、マークレビンソン、アキュフェーズ、ラックスマンなどで専用ケーブルの開発が進み、一部は既に商品化されている。わざわざ現物を購入し、音を聴きながら開発を進めておられるのだから、相性の良さは折り紙付きだ。
ヴィンテージ製品のケーブルが傷んで困っている人はもちろん、愛機の表現をより向上させたい人も、一度相談してみることを薦めたい。
QBTのエージング・マシンの絶大な効果
電源ケーブルコーナーのすぐ右側には、台湾TELOS社のQBTエージング・マシンが設置されている。
QBTの何がすごいといえば、いうまでもなくその効果である。私が2年間使いまくってエージングがすっかりできたつもりになっていた自作電源ケーブルと、まったく同じ素材と構造のものをもう1本作り、そちらは音を出す前にQBT処理をして両者の音を聴き比べたら、もう“我流エージング”は完敗、まさに鎧袖一触の体だった。言い替えれば、長年使い込んだケーブル類にも大きな効果が見込める、ということである。
QBT処理が可能なケーブルのジャンルは電源、RCA、BNC、XLR、LAN、USB、スピーカー、アース、コンセント・電源タップに、果てはイヤホンケーブルまでというから、世のオーディオケーブルで処理できないのは光デジタルケーブルくらいのものではないか。さらにオーディオみじんこでは、QBTへの取り付け治具を多種類自作し、HDMI、アンテナケーブル、DCケーブルなども処理できるという。
オーディオみじんこでは各ケーブルに最適の処理時間を見定め、個別に処理してくれる。料金は5本まで一式8,800円で処理してくれるというからお得である。持ち込みの場合、基本的には当日中に処理して引き渡してくれる。
店の入口の入って右側の棚、ここにはデジタル系のケーブルが展示されており、同軸デジタルにUSB、LANケーブルなどが並ぶ。同店のデジタルケーブルというと、先日聴かせてもらった「妖刀USB」には肝を潰した。迸るような艶とむせ返るような音場の濃密さに乗って、生命感漲る音像から音楽が噴出してくる、そんなイメージの再生音である。
「妖刀USB」はここあさんの力作で、とてつもなく製作に時間がかかるため価格も相当のものだが、作るそばから羽が生えたように売れていくそうで、バックオーダーが絶えないとか。
デジタルケーブルの類縁としてもう一つ、50Ωの10MHzクロック用ケーブルがある。こちらも「クロックの付属ケーブルから最初に交換する」ためのものから、極太の銀線で製作されたハイエンド品までがそろう。
ここにそれほどのコストをかける価値があるのか、疑問に思われる人もおいでだろうが、一度音を聴けば、ちょっと信じられないくらいの品位向上に仰天されることであろう。
ポータブルオーディオ関連アイテムも充実
ここまで、オーディオみじんこへ入店してすぐのスペースをぐるっと壁沿いに見てきたが、その中心にポッカリとオーディオラックの島がある。
前述の電源ケーブル開発用ヴィンテージ・コンポーネンツが収納されたラックなのだが、最上段は高級ヘッドホンのリケーブル、そしてそれらのアクセサリーが展示されており、試聴可能になっている。
ここの島はここあさん製作の製品群で、一番の注目点はリケーブルの「Nocturne」であろう。
完成して間もなくの頃にたまたま訪問して聴かせてもらったことがあるが、音像のすき間がたっぷりの潤いを湛える音場で埋め尽くされた、何とも芳醇で香しい超高品位サウンドを体験することができた。
ノクターン・シリーズはインコネもあり、先日XLRケーブルを体験させてもらったが、こちらもほぼ同様の音質傾向を聴き取ることができた。
つまり、これはここあさんの確固たるレファレンス・サウンドであり、同時にそれをリケーブルとインコネという異ジャンルのケーブルで、ともに実現するだけのスキルとノウハウを、ここあさんがお持ちであることの証明に他ならない。
ケーブルの他にも、この島はいろいろなグッズが展示されている。一番目を惹くのは、2cm角で長さ14cmのウォルナットではないか。
SILVER FORESTと名付けられたこのグッズは、内部に純銀の帯状導体が螺旋となって仕込まれており、ポタアンとヘッドホンの間に挿入することで、情報量が増し空間表現が豊かになるという。
また、オーディオみじんこと協力関係にある、サウンドラボ・エイムスの手になる両端USB-CのOTGケーブルなど、さまざまなヘッドホン/イヤホン関連のケーブル・グッズ類が、スペースを埋め尽くしている。ご自分のポータブル・オーディオ環境を一段と充実させたいなら、一度相談してみて損はないだろう。
YGとMAGICOが並ぶ試聴スペース
レギュラー商品の展示コーナーを抜け、奥へ入ると右側に、オーディオみじんこの豪壮なレファレンス・システムがセットされている。YG AcousticsとMAGICOが並ぶその光景は、圧巻の一言だ。
土台からコンクリート直打ちの床だから、どんな重量級の装置を置こうとビクともせず、難物スピーカー群から、どちらかというと精神を落ち着かせる傾向の高品位サウンドが流れ出してくる。
今回の取材では、せっかくだからと私もまだ体験できていない、新世代のXLR対応SILVER HARMONIZER XLR ADVANCEを試させてもらった。
エソテリックのSACDから最新の『バッハ:ブランデンブルク協奏曲』を聴きながら、CDプレーヤーからプリアンプへと接続する部分を変え、また本数を増減させていくと、音質傾向が面白いように変わっていく。
一番大きな違いになるのは、何といってもデフォルトから1本挿した時だ。2本挿しにすると、もちろんさらに空間表現は豊かに、かつ透明になり、アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの楽員一人ひとりが、十分な距離を取りつつくっきり見えてくるような表現となっていくが、0本と1本で聴かれる違いはやはり圧倒的だなと、改めて感じ入る。
ここで編集子から、「最初の1本はどの装置に挿すのがお薦めでしょうか」という質問が、私と荒川さん両方に飛んだ。ファイルウェブ読者から、よく問い合わせがあるのだという。
私から回答した。まず最初の1本をできるだけ効果的に使うなら、ディスクプレーヤーやフォノイコなどの上流機器がお薦め。中でも、ディスクプレーヤーの同軸デジタル出力が余っていたら、アナログ端子よりも効くことが多い。
その一方で、左右で2本必要になってしまうが、スピーカーのマイナス端子へのSILVER BULLET SPも大変な効き目を示す。といった内容だ。
「それではみじんこさんは?」と編集子が水を向けたら、「いやぁ、炭山さんに全部言われちゃいました」と、荒川さんは苦笑いされている。実のところ、開発者と意見が相違せず、こっそり胸をなでおろしていたのは私の方だった。
オーディオみじんこの店舗未体験の人へ向けた「ルームツアー」でもやってみようかと、気軽に書き始めたと思ったら、とんでもない文字数になってしまった。これでもまだ端折った部分がある。
ということはつまり、この決して広いというわけではないオーディオみじんこの店内に、私たちアクセサリー好きのオーディオマニアがどれほど心臓を打ち抜かれるか、ワクワクが止まらなくなるかということを示すことができたのではないかと思う。
秋葉原は東京駅からも近いし、なかなか訪問する機会のないみじんこファンの諸賢も、出張などで東京都心へお出かけの際は、一度足を伸ばしてみられることを薦めるものである。
■オーディオみじんこ Information
〒101-0022
東京都千代田区神田練塀町13-1 SEEKBASE 1-7
TEL:03-6284-2927
営業時間:11:00 - 20:00
定休日:水曜日
(提供:オーディオみじんこ)





























