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ティアック/ソニー/テクニクス/デノン/オーディオテクニカ

新生活にピッタリ!“お手頃”価格帯レコードプレーヤー5選。人気メーカー聴き比べレビュー

公開日 2026/04/16 06:30 炭山アキラ
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この季節といえば、始まったばかりの新生活へ期待を膨らませつつ、慌ただしく過ごす人も多いのではないか。そんな人たちの、中でも特に若い人へ向けて、入門用のレコードプレーヤーをいくつか紹介できないか。編集子からこう持ちかけられ、私は二つ返事でその企画へ乗らせてもらった。

CDの台頭により、1990年代に滅亡寸前まで追い込まれたレコード再生の世界だが、若者たちがその魅力を再発見し、アナログが復活の軌道に乗って、もう10年以上が経過した。

しかしこの21世紀、レコードプレーヤーの世界は二極分化が進んでいるように見えなくもない。一つは、レコード店のレジ横に置いてあるようなお気軽プレーヤーと、もう一つは6,000万円超という途方もない頂きを持つ、マニアックなピュアオーディオ用プレーヤーである。

今回取り上げるのは、そのちょうど中間から若干後者に属するところまで、という格好の製品群である。とはいえ、そのうち3機種はBluetoothにも対応しているから、スマホやDAPと同じように、愛用のヘッドホン/イヤホンで音楽が聴けるのが嬉しいではないか。

今回取り上げた5モデルの中には、箱から出してセットしたらすぐいい音で鳴るタイプと、再生音を自分色に染めることができるよう、あえて伸びしろを残しているタイプがあったように感ずる。

プレーヤーを買ったら、ひとまず機材のことは忘れてレコードの音に浸りたいという人は前者、これから少し頑張って "オーディオ沼" へ乗り出していこうかな、という人には後者の製品群をぜひ薦めたい。

オーディオ機器というのはある程度何でもそうだが、そんな中でもアナログはとりわけ、自分の腕前次第でいくらでも音を良くしていけるものである。つまり、長く楽しんでいける趣味ということだ。

これをステップボードとして、オーディオの楽しさに目覚めてくれる人が出てきてくれることを、心より祈る。

エントリーから定番モデルまで評論家・炭山アキラ先生による聴き比べを行った

なお、以降の記事中で製品の税込価格は直販サイトから引用。直販サイトの展開が無い場合は記事執筆時点でのAmazonの価格を記載している。

ティアック:「TN-180BT」(直販価格27,280円)

メーカー:ティアック/製品名:TN-180BT/カラー:チェリー、ブラック、ホワイト/※ティアックストア限定販売

キャビネットはしっかりした木質素材で鳴きは少なく、トーンアームは華奢に見えるが、見た目より強度は高そうだ。プラッターは樹脂製で、上級製品にも用いられている薄手のゴムシートが載る。とてもよくまとめられた製品という印象だ。

ビートルズは低音の方こそやや軽めの質感になるが、ボーカルは鮮明でジョンの声質や節回しをよく表現し、定位も大きくは揺らがない。低音は量感があっさりめの代わりに、スパーンと切れ味良く軽快に音楽を進める。

TOTOはジェフ・ポーカロのドラムスがそこそこしっかりしたタメを伴ってよく響き、声は少々淡彩になるが、定位が揺らいだり存在感が痩せたりすることはない。

全体にややこぢんまりまとまる感もあるが、これはもっと高級なプレーヤーで聴き慣れている私の耳の問題だ。どこか特定の帯域が強調されたり引っ込んだりすることなく、バランスの良い再生音を聴かせてくれた。

クラシックはホールに響く残響の奥行き感をそこそこ出してくる。オケは少し前へ寄る感じだが、それで聴き心地が損なわれるようなことはない。情報量はそう多い方ではないが、真っ当なバランスの音だ。

ジャズはややソフトな質感で、しっかりとピアノ、ウッドベース、ドラムスの大きな音像をそこそこのレベルで描き出すのが好ましい。この価格ということを考えると、十分楽しめるサウンドといってよいだろう。

【スペック駆動方式:ベルトドライブ/駆動モーター:DCモーター/回転数:33-1/3回転、45回転、78回転/操作系統:セミオート/プラッター材質:プラスチック製、直径300mm/ワウフラッター:0.25%/トーンアーム形式:スタティックバランス型ストレート・トーンアーム/主な入出力:RCAピンジャック(フォノ/ライン切替式)、Bluetooth(SBC)/ヘッドシェル交換:非対応/付属カートリッジタイプ:VM型/付属カートリッジ針圧:3.5g/適用カートリッジ:-/消費電力:1.5W/外形寸法:420W×105H×356Dmm/質量:約4.9kg

ソニー:「PS-LX3BT」(直販価格40,700円)

メーカー:ソニー/製品名:PS-LX3BT/カラー:ブラック

キャビネットは樹脂製だがそう鳴きは大きくない。アームのガタツキは極めて小さい方。プラッターはアルミでシートは非常にきめ細かく柔らかい、上質のフエルトだ。限られたコストでどこに重点を置くべきか、よく理解している作りと見た。

ビートルズはしっかりした再現で、ほんの僅かに耳へ優しい表現になるのが好ましい。ドラムスはアタック鮮明で、声は若干線が細いかと思ったが、それは定位がしっかりと決まっているせいであることが分かる。

TOTOは澄み切った演奏空間の空気が目覚ましく、そこに腕利きのミュージシャンが集い、余裕たっぷりに演奏を組み立てていくさまが眼前に展開する。失礼ながら、見た目を遥かに上回る再生音である。

クラシックはオケのスケールが一気に増大し、音場感豊かなレコードなのだが、それをかなりしっかりしたレベルで再現する。弦楽器はザラつきを感じさせず、抜けの良いハイファイとほんの僅かな緩さを結構高次元で両立するのだから、このプレーヤーは見た目の玩具っぽさに騙されてはならない。

ジャズは70年近く前のライブ会場のざわめきが鮮明に聴き取れる。ピアノは流麗に旋律を奏で、ウッドベースは若干軽い質感ながらメロディをしっかりと支える。ドラムスは実直に刻み、何よりトリオが混濁しないのが素晴らしい。

本質的に器の大きなプレーヤーといって良さそうである。

【スペック駆動方式:ベルトドライブ/駆動モーター:DCモーター/回転数:33 1/3回転, 45回転/操作系統:オート/プラッター材質:φ296mmアルミダイキャスト/ワウフラッター:0.10%/トーンアーム形式:J字型/主な入出力:ライン、フォノ、Bluetooth(SBC/aptX/aptX Adaptive)、USB/ヘッドシェル交換:非対応/付属カートリッジタイプ:MM/付属カートリッジ針圧:3.5±0.5g/消費電力:1.8W/外形寸法:430W×117H×366Dmm/質量:約3.5kg

テクニクス:「SL-50C」(直販価格99,000円)

メーカー:テクニクス/製品名:SL-1500C/カラー:テラコッタブラウン、ブラック、グレー

キャビネットは叩いてもあまり鳴かず、トーンアームのガタも少なく、とてもしっかりしている。プラッターはアルミ製で、ターンテーブルシートはかなり固いフエルト製だ。インシュレーターはかなり堅め。

ビートルズは情報量が激増、中高域が若干明るめで、それが声の帯域やスネアドラムなどをグッと前へ引き立てるような鳴り方だ。ベースとドラムスは若干軽めだが、その分軽快で活気ある音楽の進行という感じだ。

TOTOはやはりやや明るめの表現で、ドラムスはスネアやテナータムが軽快に張りのある音で吹っ飛んでくる感じ、エレキベースはやや軽めだがエレキギターは強く歪ませた音がガンガン飛んでくる。ボーカルもしっかり前へ出るタイプだ。

ジャズはピアノとウッドベースが大きな音像を表現しつつ僅かに奥へ定位、ドラムスのブラシとシンバルは生き生きと立ち上がり、演奏を巧みにリードする。ライブ会場の聴衆の喧騒も結構上手く描き出す方だ。

クラシックはバイオリンの特殊奏法コル・レーニョが鋭く聴こえ、管楽器や打楽器がグッとステージの奥へ定位する。全体にアップライトな質感だが、これはターンテーブルシートの材質と固さが影響しているものと推測される。

このプレーヤーは、アクセサリー類を活用して自分好みに仕立て上げるという、マニアックな楽しみを受け付ける。懐が深い、ある意味上級者向けのプレーヤーである。

【スペック駆動方式:ダイレクトドライブ/駆動モーター:ブラシレスDCモーター/回転数:33 1/3, 45, 78回転/操作系統:マニュアル/プラッター材質:アルミダイカスト/ワウフラッター:0.03%/トーンアーム形式:ユニバーサルS字形トーンアーム(スタティックバランス型)/主な入出力:PHONO出力、LINE出力/ヘッドシェル交換:対応/付属カートリッジタイプ:ortofon 2M Red/付属カートリッジ針圧:1.8g/適用カートリッジ:5.6 - 12.0g/消費電力:4W/外形寸法:430W×128H×353Dmm/質量:約7.1kg

デノン:「DP-500BT」(Amazon価格105,930円)

メーカー:デノン/製品名:DP-500BT/カラー:ブラック

キャビネットは薄手だが丈夫で鳴きにくく、アームのガタはほぼ完全にゼロ、高級機並みの精度だ。プラッターはアルミ製、シートはやや堅めでかなり厚手のゴム製だ。インシュレーターは中庸の固さ。手慣れた作りである。

ビートルズはわずかに高域方向をロールオフさせ、耳当たりの良い音を実現している。声は少し遠くに定位するが、実体感を損なうことはない。ドラムスは音楽の活気を伝えつつ、少しシンバルが大人しくなる。

TOTOはボーカルをコクたっぷりに表現することに好感を持つ。中低域は若干弾力的で、それが音楽を分厚く活気ある表現に仕立て上げるような印象がある。

ジャズはピアノが優しい風合いを持ち、ウッドベースも殊更に自らを誇示することなく、メロディラインを実直に支える。ドラムスもソフトタッチだが、質感を鈍らせるようなことはなく、演奏をしっかりとリードする。

クラシックはステージの照明が少し落とされたような落ち着いた質感を持ち、オケの音像は割合前へ出るが、残響はしっかり奥への広がりを表現するのが面白い。1980年代によくあった、中高域がキツい音のクラシックレコードを、耳へ優しい音へ巧みに仕立ててくれそうな表現である。

このプレーヤーも、いろいろなアクセサリーを使ってより自分好みの音に整えやすい。特にアームの素性が素晴らしく、かなり高いレベルへ押し上げることが可能ではないか。

【スペック駆動方式:ベルトドライブ/駆動モーター:DCサーボモーター/回転数:33-1/3、45、78回転/操作系統:セミオート/プラッター材質:アルミダイキャスト/ワウフラッター:0.10%/トーンアーム形式:S字型スタティックバランス/主な入出力:ライン、フォノ、Bluetooth(SBC/aptX/aptX HD/aptX Adaptive)/ヘッドシェル交換:対応/付属カートリッジタイプ:MM型/付属カートリッジ針圧:2.0g/適用カートリッジ:5.0 - 13.0g/消費電力:10W/外形寸法:414W×132H×342Dmm/質量:約5.8kg

オーディオテクニカ:「AT-LP7X」(直販価格132,000円)

メーカー:オーディオテクニカ/製品名:AT-LP7X/カラー:ブラック

キャビネットは分厚い木質でまったく鳴かない。アームは相当精度高く、今回テストの中で本機のみ高さ調整が可能だ。プラッターはアクリル製でシートはなし。インシュレーターはやや堅め。隙のない作りに驚く。

ビートルズは、エンジニアが目論んだ楽器とボーカルの配置はきっとこうだったに違いない、という安心感を持って聴き続けることができる。若干優しめの表現だが、この音を好まれる人は多いだろう。高度なハイファイとくつろぎサウンドの巧みな融合である。

TOTOはジェフ・ポーカロのドラムスが彼本来のタメの深さと躍動感で鳴ってくれた。ボーカルは抜けが良く伸びやか、強く歪ませたギターもスッキリと切れ上がる。

ジャズはよく聴き慣れた盤なのだが、いつも自宅で聴き慣れたバランスに本機が一番近い。ピアノはわずかにソフトめだが闊達によく歌い、ウッドベースもよく弾んでメロディを支える。ドラムスはキリッと引き締まり、やや線が細く感じるが、それはにじみが少ないからそう聴こえるのだと分かる。

クラシックは広大なホールの空気容量が見えてきた。オケはコンサートホールのS席で聴くような位置に定位、弦よりも管、打が奥へ位置していることも克明に分かる。

アナログはノウハウ次第でどんどん音質を向上させられるものだが、買ってきてすぐのポン置きでここまでの再現が得られるのは、このクラスでは本機が最右翼だろう。

【スペック駆動方式:ベルトドライブ/駆動モーター:DCサーボモーター/回転数:33-1/3, 45回転/操作系統:マニュアル/プラッター材質:20mm厚アクリル製/ワウフラッター:0.1%未満 (WTD)/トーンアーム形式:スタティックバランス式J字型/主な入出力:ライン、フォノ (MM/MC切替)/ヘッドシェル交換:対応/付属カートリッジタイプ:VM (AT-VM95E BK)/付属カートリッジ針圧:2.0g (標準値)/適用カートリッジ:14.0〜19.5g/消費電力:5.5W/外形寸法:450W×157H×352Dmm/質量:約7.6kg

試聴を通して「損をしたように感じさせる製品がない」

アナログ全盛期の1970年代、日本は「世界の工場」として最盛期にあった。日本のオーディオメーカー、そして大手家電メーカーが膨大な数のレコードプレーヤーを生産し、世界へ供給することで、アナログ文化は世界で成立していた、という側面がある。

今回、改めて入手しやすいクラスのプレーヤーを聴くことで、その当時から蓄積された日本オーディオ業界のアナログに関するノウハウは錆びていないな、この価格でここまで素晴らしいアナログ再生が味わえるんだなと感激した。

もちろん、この5機種はかなり製品間の価格差もあるから、すべて同列で「いい音」とするわけにもいかないが、少なくない金額を支払ってご自宅へ迎えた結果、損をしたように感じさせる製品がないことには、太鼓判を捺してよいだろう。

私自身ならどうするかというと、限界を突破した驚異的な価格のティアック、ポン置きで使っていい音が得られるソニーとオーディオテクニカ、いろいろなノウハウを投入することで大幅なチューニングが可能なデノンとテクニクス、というところへ注目して選ぶだろう。特にテクニクスは、「私ならこうやってやるだろう」というロードマップが見えており、ちょっと"育てて"やりたくなった。

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