公開日 2025/06/19 05:00

iPhoneに機能制限の可能性も?「スマホ新法」がもたらす影響とは

今年12月18日に施行予定

アップルが6月上旬に開催した世界開発者会議「WWDC 25」では、今秋に正式リリースされるiPhoneの次期OS「iOS 26」の詳細が発表された。Liquid GlassデザインやApple Intelligenceに関連する新機能が多数盛り込まれているが、今冬以降、これらの主要機能が日本では使えなくなる…ということが起きるかもしれない。

アップルがWWDCで発表したiOS 26の様々な機能の中から、今冬以降に「日本で使えなくなる機能」が出てくる可能性がある

12月に日本で施行される「スマホ新法」とは

「スマホ新法」 をご存じだろうか。正式名称は「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホソフトウェア競争促進法)で、2024年6月に日本の国会で成立・公布され、今年12月18日に施行予定の法律だ。主管は公正取引委員会だが、経済産業省もデジタル市場全体の制度設計を担う役割を果たしている。

この法律の目的は主に2つある。ひとつは、スマートフォンなどモバイル向けの巨大プラットフォームを運営する事業者による寡占状態を是正し、公平な競争を通じて新規事業者の参入を促すこと。もうひとつは、一般ユーザーが多様なアプリやサービスを自由に選べる環境を整え、デベロッパーによる革新的なサービスが生まれやすい土壌を築くことである。

今年3月31日、公正取引委員会はこの法律の対象となる「巨大プラットフォームを運営する事業者」として、アップルとグーグル、そしてアップルの子会社であるiTunes(株)の3社を指定すると発表した。

同日にアップルは以下のような公式声明を発表している。

Appleは、40年以上にわたって日本で事業を展開しており、イノベーション、雇用創出、競争の原動力であることを誇りに思います。iOSアプリ経済は日本国内だけでも数十万の雇用を支えており、規模の大小を問わずすべてのアプリ開発者に、信頼できるプラットフォーム上でユーザーにリーチできる機会を提供しています。

この度の決定により、ユーザーのプライバシー保護と安全の確保に対して私たちと同等のコミットメントを果たしていない他の企業にも、私たちが開発した機能を差し出さざるを得なくなる可能性があることを深く懸念しています。私たちは、スマートフォンソフトウエア競争促進法が日本の消費者の皆さんと、皆さんがiPhoneに期待するユーザー体験にどのような影響を与えるかについて引き続き懸念を有しており、同法の施行に向けて、引き続き日本の公正取引委員会と連携してまいります。

結果としてユーザーのプライバシーと利便性が損なわれる

アップルは、新法の施行により、iPhoneユーザーのセキュリティやプライバシーが損なわれる可能性があることに強い懸念を示している。

例えば、ユーザーがiPhoneにアプリやアプリ内課金コンテンツを導入する際、アップルが管理/運営するApp Store以外のサードパーティ製アプリストアや決済システムの使用が認められれば、マルウェアやフィッシング詐欺のリスクが大幅に高まる。この点はアップルが繰り返し指摘してきたリスクである。

アップルは2024年単年で、App Store上で不正と見なされた取引20億ドル以上を阻止し、リスクの高いアプリの登録を200万件近くブロックしてユーザーに届くことを防いだと発表している

もっとも、法の趣旨がスマートフォン市場の健全な発展と公正な競争の確保にあることには、アップルも一定の理解を示している。公正取引委員会がこれまで開催してきた有識者会議でも、アップルは同社の懸念を表明する一方で、代替策も提案した。その結果、運用指針の案にはアップルの主張の一部が反映されることになった。

しかしながら、本法案の内容とアップルのスタンスとの間には依然として大きな隔たりがある。例えば、本法案は対象事業者に対して、各プラットフォームの基盤となるオペレーティングシステム(OS)へのアクセスを許容することを義務付けようとしている。アクセスの範囲については合理的な基準により決定されるとしているが、それでも悪意ある事業者によってユーザーの個人情報が不正に取得されるリスクは否定できない。

また、本法案はスタートアップを含む中小規模事業者にも競争機会を与えることを目的としているが、実際にはアップルの競合となる他の大手企業に有利に働く可能性もある。

結果として、アップルはiOSやApp Storeで展開する一部の先進機能やサービスを日本国内で提供できなくなるおそれがある。

新法の周知と国民からの意見募集のため、公正取引委員会と経済産業省は2025年5月15日から6月13日までの期間でパブリックコメントを実施した。今後公開されるその結果報告も含め、スマホ新法の行方には引き続き注視が必要だ。

 

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