公開日 2017/08/03 12:17

公開間近! 4Kレストア・3D版『ターミネーター2』のAVファン的見どころをいち早くチェック

8月11日公開
編集部:永井光晴
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■いち早くチェックした!おススメの見どころ

本作は、オリジナル公開版(137分)の3D化である。『T2』には154分の完全版もあるが、オリジナル版ではサラの夫で、ジョンの父親であるカイル・リースの登場シーンがない。またT-800(シュワルツェネッガー)の手術シーンなどが削除されている。今回は4K・3D化にあたって、より良質な35ミリプリントを選別することが可能なオリジナル版の採用となったようだ。

26年前の素材とは思えない、高画質を体験することができた

アスペクトもオリジナル上映のシネスコ(シネマスコープ)となっている。キャメロン監督は撮影に35mmフィルムを最大限に使う”スーパー35”を使うことが多く、シネスコの上映プリントはスーパー35の原版の上下をカットして作る。よってテレビ放送スタンダードサイズ(4対3)では、シネスコの左右をカットするのではなく、原版から作るのでオリジナルでは映っていない上下の映像が使われていた。

また『タイタニック』の3D時には、IMAX3D上映を意図したため、オリジナルのシネスコではなく、アスペクトがIMAXに近いアメリカンビスタになっていた。『T2』は『タイタニック』より古いため、スーパー35の原版が使えなかったか、存在していないのかもしれない。

ちなみに『タイタニック』の3D化に際しては、映像を改変した部分がある。それは公開後に天文学者から、星の位置が間違っていると指摘されたからだ。指摘を受けたキャメロンは「それなら1912年4月15日午前4時20分ちょうどの正しい星の並びを送ってきたら、映画に反映してやる」とやり返して、結果的に3D版ではそのワンシーンだけオリジナルから変更された。

そんな改変シーンが『T2』にはあるのか。これは既知のポイントになるが、“ロシア問題”がある。オリジナルでは、ターミネーターT800(シュワルツェネッガー)が、“審判の日(1997年8月29日午前2時5分)”を説明する中で、スカイネットが“ソビエト連邦”に核戦争を仕掛けることに触れる。しかし本作の製作年1991年にソビエト連邦が崩壊したため、テレビ放送時の日本語吹替は、”ロシア”に差し替えられた。3D版では字幕はもちろんのこと、さらにシュワルツェネッガーの英語セリフも”Russia”になっている。

より完全なシチュエーション再現を目指しているキャメロン映画では、この程度は朝飯前であろう。

■4Kレストアは高画質だが、シーンによってバラツキ

オリジナル音声は、前方3ch+後方1chのアナログ時代のドルビーSR(4ch=3-1ステレオ)である。当然、今回の音声仕様は疑似サラウンド(5.1ch)になっているが、後方チャンネルにアンビエンス(聴取者を取り巻く周辺音)はほとんどない。サラウンドチャンネルからもっとも聞こえてくるのは、ブラッド・フィーデル作曲の「ターミネーターのテーマ」のシンセドラム音だ。あの、”デデンデンデデン”が、後ろに回り込んでくること。

4Kレストア画質は、おおむねスーパーハイクオリティである(今回の予告編でも、その一端を感じるはずだ)。26年前の素材と考えると驚きを隠せない。

水路、病院での対決シーンからは要注目

しかし全体を“S”クオリティとすると、いくつかのシーンで“A”または“B”がある。それはほとんど序盤のシーンで、映画が進むにつれ、どんどん画質と3D感は上がっていく。オープニングでT-800とT-1000が未来から現代にやってくる、夜のシークエンスに粒子状のザラツキを感じる。ここは何とかしてほしかった。また養父母と暮らしているジョンの荒んだ生活を描いたシーンまでは普通の画質である。

それが、水路を逃走するジョンのバイクと、T-1000のトラックでの追跡シーンからぐっと画質・音質ともよくなる。サラ・コナーを病院からの救出するシーンにおけるT-1000との死闘も重要なシーンだけあって、丁寧にレストアと3D変換を行っている。廊下の奥行きなどにそれを見ることができる。

3D感が素晴らしいと感じるのは、まず中盤のメキシコでの武器調達シーン。サラ・コナーの背景の荒野と彼女をフォーカスした映像。またサイバーダイン社のマイルス邸を襲撃するとき、金網の向こうから銃でダイソンを狙うサラ。そして何といっても、サラが見る悪夢、“審判の日に核爆弾によって消え去る、母親と子供たち、遊具”のシーンの4K映像である。音声も含めて最大の見どころ、聴きどころである。

ちょっとしたトリビアであるが、サラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトンには、一卵性双生児の妹・レスリーがいる。『T2』では、そのレスリーとリンダが共演するシーンがある。クライマックスの製鋼所でジョンの前に、サラと、サラに擬態したT-1000が出てくるところがそれだ。あらためて注目してみると面白い。

■フルCGでないからこそ実在感がある

全編を通して、CG時代でないところが、逆に凄い映画だ。最新の「アベンジャーズ」シリーズなどでは、銃撃戦や爆発シーンはほとんどCGであり、それに見慣れてしまっているが、実際にトラックが突っ込む、ビルを爆破破壊する、本物のヘリコプターを飛ばす。その実存感がCGとは違うということに気がつくはずだ。

いまどきのフルCGとの比較をしてみるのも面白い

CGは功罪相半ばである。何でもできるが、それはホンモノではない。ターミネーターのエンドスケルトン姿(金属骨格むきだしの状態)は、いまならフルCGになってしまうが、この時代はアニマトロニクス(animatronics)を使っている。生物を模したロボットを使って撮影するSFX技術だ。いまさら映画がアナログ時代の製作方法に戻れるわけはないので、あらためて『T2』の映像価値は再評価に値する。

エンディングで、身を呈して目的完遂をつらぬくT-800の正義。ストーリーとしても美しい。みんな気付いているけど、だれも言わないこと。それは「ターミネーターシリーズは、T2で完結している」。実はこれが真理である。



「ターミネーター2 3D」オフィシャルトレーラー
https://youtu.be/uOp1Cn8Eidg

(C) 1991 - STUDIOCANAL - Tous Droits Reserves
2017年/アメリカ映画/137分/シネマスコープ/英語音声/字幕:戸田奈津子/PG-12/配給:キノフィルムズ/木下グループ

「ターミネーター2 3D」 公式サイト
http://t2-3d.jp/


【評論家・林正儀氏からのコメント】


■「ターミネーター2 3D」がまた劇場で観られる感動

『T2』は、レーザーディスク(LD)での視聴テストで一番見ていたソフトのひとつである。当時はリバラン(「リバー・ランズ・スルー・イット」)や「クリフ・ハンガー」などがレファレンスだった。とくにT-800、T-1000の登場シーンは感慨深い。まさかこれが劇場でまた観られるなんて。

『アビス』(1989年/The Abyss)でキャメロン監督が実験的に使用したCG技術を使ったT-1000は、本格的なCG時代の幕開けを体感した気がする。

今回一足早く3D版を試写で観る機会を得たが、3D変換の破綻を見つけようと、粗を探すがほとんどない。とても26年前の素材とはオモエナイ。

エンドスケルトンとの最終戦争シーンの吸い込まれるような奥行き感や、ヘリコプターのシーンの上下の高さ感は超リアルで、2D - 3D変換とは思えない。3Dで撮影していないわけだから、キャメロンの”自信を持って”との意味がわかる。

リンダ・ハミルトンも若く逞しい。だからキャメロンも結婚したのか!(4番目の妻)惚れ惚れした。

当然、3D版は半年後にはBlu-rayになって発売されるのだろうが、やっぱりホームシアターファンは劇場で確認すべきだろう。

(林 正儀)

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