公開日 2016/04/15 10:00

始めよう!アナログレコード入門:プレーヤーのセッティングから再生までの手順とは?


■「ゼロバランス」をとって「針圧調整」をしよう

次はトーンアームの調整です。アームはカートリッジを保持するだけでなく、適正な針圧をかけたり、音溝を正しくトレースするための様々な工夫が盛り込まれています。

アーム調整の手順ですが、まずアーム全体の高さ調整をしたのち、カートリッジを装着した状態で「ゼロバランス」をとり、次に「針圧」をかけましょう。

ゼロバランスをとって針圧調整をする手順

ポイントは「ゼロバランス」「針圧かけ」のふたつです。この仕組みはシーソーのようなもの。ゼロバランスというのは、カートリッジ側に荷重(針圧)をかける前に、シーソーが水平になるようにしておく作業です。水平バランスとも呼ぶのですが、ウエイトを前後に動かし、釣り合ったところで針圧調整リングの目盛りをリセットしてゼロにしておくというもの。

このニュートラルな状態から、ゆっくりとリングをまわしてカートリッジ側に針圧をかけていくのですが、カートリッジには「適正針圧」というものがあります。

例えばデノンのDL-103だと2.5グラムです。これは推奨値なので、コンマ1グラムでも違ったらダメ!というものではありません。カタログには「2.5±0.3グラム」というようにある程度の許容幅をもたせて記載しているのが普通です。この範囲であればOKなので、ここでは2.5グラムとしましょう(重めにかけた方が盤面から針が浮かないので、重めにかけるマニアもいます。ただ、重すぎると盤面が削れてしまうので注意!)。

カートリッジには針圧値のほかに、「自重」も表記されていますが、これはカートリッジのボディの重さで、DL103では8.5グラムとなっています。製品によって重い/軽いがあり、自重の特に重い代表はオルトフォンのSPU(31.5グラム)。これは一般的なアームの調整範囲を越えてしまいます!SPUを使うには、それなりの対応トーンアームが必要なのです。購入前に調べておきましょう。

さて、以上のようにお話ししたのは、一般的な「スタティックバランス型」というタイプのアームですが、このように錘を用いるのではなくバネの力によって針圧をかけるタイプの「ダイナミックバランス型」トーンアームもありますよ。ポピュラーなのはこのふたつですが、トーンアームの機構上、オフセットやオーバーハング、インサイドフォースキャンセラーなどさまざまな調整機能があります。ただ「入門編」ではそこまでは知らなくても問題はないでしょう。

■トーンアームのかたちの意味って?

アームのかたちについて「Jの字やS字になってるなア。何でこんな曲がったかたちなのだろう」と不思議に思う人もいるかも知れません。実はこれはただのデザインじゃなく、音が良くなる(歪みが最小となる)ための機構的な理由がちゃんとあるのです。

TEACのTN-570(左)はS字アームでシェル付け替えが可能なユニバーサルタイプ。Pro-Jectの「Elemental Esprit」(右)はストレート型アームで、シェル一体型だ

トーンアームの先端は円を描いてトレースしますね。直線ではなく円というのが録音時(カッティングマシン)との違い。刻まれている溝(カッターライン)と、トレースする針の動きの誤差を補正するための機構が、「オフセット」と「オーバーハング」です。アームの首をわざと内側に振って角度をつけるのがオフセット。またアーム長を少しのばしてレコードのセンターよりも少し先に針位置をセットするのがオーバーハングです。オーバーハングはシェルのネジで調整ができます。アームによって異なりますが、普通は12〜15ミリでOK。

またレコードを再生すると、針は内側に向かう力を受けます(「インサイドフォース」というもの)。これを打ち消すために糸や錘がついていたら、それが「インサイドフォースキャンセラー」です。

では調整も済み、いよいよ待望の音出しです。ターンターブルのゆっくりとした回転をみながらそっと針を下ろす仕草も楽しいアナログ再生。よい音をじっくりと楽しんでください。

次回はプレーヤー、カートリッジまわりのメンテナンスや盤面をきれいに保つためのノウハウを紹介しましょう。

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