アンプ内蔵ネットワークプレーヤー5機種一斉試聴。デノン/マランツ/ROKSAN/ARCAM/HEGELの注目機をチェック!
再生クオリティとシステムのシンプルさを両立
ネットワークオーディオ強化月間の巻頭言にて、システム構築という点でも様々な可能性があると紹介し、その一例として「ネットワーク/ストリーミング対応アンプ」を挙げた。この記事では、ネットワーク対応アンプの中でも特に「フルサイズ」かつ「ミドルクラス」の5製品に焦点を当てる。
ネットワーク対応アンプと一言で括っても幅広く、デノン「DENON Home Amp」やマランツ「MODEL M1」など、ハーフサイズ前後のコンパクトな製品も色々とある。そんななかで、あえてフルサイズのモデルを選ぶとすれば、それは「サイズ」やそこから生じる「設置性」よりも「本格オーディオとしての佇まい」や「再生音のクオリティ」を求めてのことだろう。
それでいてネットワーク対応アンプは本体でストリーミングサービスに対応するので、ストリーミングをメインの音楽ソースとするなら、他に再生機器を用意する必要がなくなる。つまり「あとはスピーカーを繋ぐだけ」。これは複雑化しがちなネットワークオーディオにおいて、再生クオリティとシステムのシンプルさが両立する「賢い」選択肢となり得る。
今回は「フルサイズ」かつ「ミドルクラス」のネットワーク対応アンプの中から5モデルを取り上げ、各製品の特徴や音質を紹介していきたい。なお、製品テストや音質検証は本誌試聴室でParadigmのブックシェルフスピーカー「Persona B」を組み合わせ、ソースには共通してQobuzを用いた。
今回ご紹介するプリメインアンプ機能内蔵ネットワークプレーヤ−
DENON「PMA-900HNE」132,000円(税込)
MARANTZ「MODEL 60n」242,000円(税込)
ROKSAN「Attessa Streaming Amplifier」434,500円(税込)
ARCAM「SA35」495,000円(税込)
HEGEL「H150」627,000円(税込)
デノン「PMA-900HNE」 -色彩感と躍動感で聴かせる
トップバッターはデノン「PMA-900HNE」。 デノン初のネットワーク対応フルサイズHi-Fiプリメインアンプで、価格は税込132,000円。「デノン初」というのは少々意外なところで、この点で先行するマランツとは製品戦略の違いが見て取れる。いずれにせよ、本機の登場は特にデノンファンにとって朗報だろう。
ネットワーク再生にはD&Mのプラットフォーム「HEOS」を搭載。Qobuzとの組み合わせにおいては「Qobuz Connect」にも対応する。HEOSアプリも時間をかけて改良されてきたが、Qobuz ConnectはQobuz純正アプリをそのまま使えるため、「従来のアプリの使用感とオーディオ機器のシームレスな統合」という点を重視するなら、Qobuz Connectを使うのが理に適っている。
再生音はデノンらしい厚みやふくよかさを予想していたが良い意味で裏切られた。中低域の厚みは十分に確保されつつもむしろ躍動感で聴かせるタイプであり、色彩感に富む。大味なところはなくS/N感に優れ、静寂の表現に長ける。空間の広さとそれに負けない情報量があり、トランジェントも良好。総じて「フルサイズのHi-Fiアンプ」に求められる高度なオーディオ性能を存分に備えているという印象だ。
マランツ「MODEL 60n」 -王道にしてアンプの完成度も高い
続いてマランツ「MODEL 60n」。おそらく日本のオーディオメーカーとしては最もネットワーク対応アンプに注力し、市場を切り開いてきたマランツの中核モデルで、価格は税込242,000円。本機はHDMI ARCにも対応するため、リビングの中核機としての役割も果たせる。
PMA-900HNEと同じく、プラットフォームには「HEOS」を搭載。使い勝手や機能はD&M製品全体で共通する。今回はテストにQobuzを使用したが、HEOSはAmazon MusicやRoon Ready、また手持ちの音源の再生にも対応しており、ユーザーの使い方に合わせられる柔軟性も備えている。
再生音は全体として厚みと解像感が両立し、空間表現はスムーズかつ奥行き方向への広がりが印象的。ボーカルは透明感があってニュートラル、それでいて素っ気ないわけではなくほのかな色艶もあって好ましい。パーカッションやベースは輪郭描写が非常に明快で、重量感もしっかりと表現する。端的に言ってHi-Fiの王道にして「リファレンス」的な再生音であり、アンプとしての完成度の高さが感じられた。
ROKSAN「Attessa」 -透明感や輪郭の切れ味が際立つ
続いてROKSAN「Attessa」。レトロSFを思わせるデザインが素敵なアンプで、価格は税込434,500円。ちなみにAttessaにはネットワーク機能の搭載・非搭載が選択可能で、今回紹介するのはネットワーク機能を搭載する「Attessa Streaming Amplifier」である。
ネットワーク再生にはBLUESOUNDのプラットフォーム「BluOS」を搭載。 BLUESOUND自体がオーディオメーカーであり、同社の基幹プラットフォームを他社であるROKSANが搭載するのは意外と思われるかもしれないが、これはBluOSの完成度を高く評価するROKSANと、インストールベースを増やしたいBLUESOUNDの方向性が一致した結果である。現にそのおかげで、本機の使い勝手は非常に優秀だ。
再生音は輪郭をはっきりと主張するタイプで、解像感は高く保たれ音数が多い局面でもごちゃつかず、トランジェント良く描き切るのは聴いていて爽快。いうなれば強い音であり、ピアノとボーカルのシンプルな構成の曲を聴いても、透明感や輪郭の切れ味が際立つ。一方で左右・奥行方向の空間の広がりは欲張っておらず、箱庭的な精緻さが印象に残った。
ARCAM「SA35」 -充実した低域で音楽の熱を伝える
続いてARCAM「SA35」。ハーマングループのミドルクラス・ブランドとして再構築された感のあるARCAMの象徴ともいえるモデルで、価格は税込495,000円。MODEL 60n同様HDMI ARCに対応しており、リビングユースにも適する。ESSのDACチップ「ES9027 PRO」を採用した本格的なデジタル・セクションにも注目だ。
ネットワーク再生用に純正アプリ「Radia」が用意されているが、今回のテストで使った限りではアプリからQobuzを再生することはできず、Qobuz Connectを使用した。ちなみに本機は6.5インチのカラーディスプレイを搭載しており、アルバムアートや曲情報を美しく表示できる。
再生音で最も印象的だったのはずばり低域の充実。比較的薄型のサイズながら、トロイダルトランスによる強力な電源が奏功しているのか、繰り出される低域は沈み込み・量感・強靭な輪郭どれを取っても申し分なく、しっかりと解像された結果むしろ軽快ですらある。そこに乗る中高域は派手さがなく時として「渋い」とさえ感じるほど落ち着いて滑らかなものだが、低域の充実が下支えするため音楽の熱は確かに伝わる。メーカーの美学を体現する、高度な音作りといえよう。
HEGEL「H150」 -精緻でひんやりとした温度感
最後に紹介するのはHEGEL「H150」。同社のアンプ全体から見てもちょうどミドルクラスに当たるモデルで、価格は税込627,000円。ここまでくるとミドル・ハイエンドと呼べる価格帯となり、Persona Bとの組み合わせにも説得力が出てくる。
純正アプリ「Hegel Controller」が用意されているが、アプリからQobuzの再生はできないため、SA35と同様にQobuz Connectを使用した。少なくともメインの音楽ソースとしてQobuzを使う限り、実使用においてQobuz Connectに対応していれば困ることはない。
再生音もここまでくると「クラスの違い」が明確だ。全体的に少々ひんやりとした温度感があり、それが特にボーカル帯域の繊細さや浸透力に繋がっている。奥行表現も単に空間が展開するだけでなく、段階的な音の配置を精緻に描き分けられる能力がある。低域表現はSA35の駆動力にさらに制動力を加えた印象で、輪郭のゴリゴリとした質感まで克明に描写したのには素直に感心した。
◇
今回テストした5モデルは総じて期待に違わず、「フルサイズアンプとしての高度なオーディオ性能」と「ネットワークオーディオならではの快適な音楽再生」を両立した。海外3モデルの個性豊かな再生音はもちろん、デノンとマランツのアンプとしての絶対値の高さにも感心させられた。
ネットワークオーディオを始めるために、必ずしもアレコレと複数の機材を導入する必要はない。ネットワーク対応アンプを一台導入すれば、「あとはスピーカーを繋ぐだけ」で素晴らしいシステムが完成するのだということも、どうか覚えておいてほしい。



























